One who has many drawers is a good drawer. | Startin' over…
教室の出口まで送り出す。閉室までいる約束ではなかったか。
「ちょっと、もう少しわがままになっていいんだからね。
受験生なんだから。」
「はい。」
スルーする際の笑顔だろうか。
「もっと講師を利用してください。」

なんでこんな早い時間に帰りやがるかわからなかった。

いつかの授業中

「先生、今3年だっけ?」
「ううん。」
指で4のサインをする。
「あ、そういうこと言っちゃだめなのね。」
まごつく。
別に言ってはいけない規則は無い。ただ、学生を全面に出して仕事はしたくないだけだ。
誘導尋問に引っかかり、年齢のことを聞かれないかヒヤヒヤしていた。
「就活は?」
裏紙にoverと書く。
その後慌ててcompletedと書く。
be overで終了という意味を知っているか不安だったのと、
例え知っていてもオワタと捉えられかねないのが悔しくて書き直した。
その後もっと悔しくなって、"ここでは無い”と書いた。

「ふーん、そうなんだ。」
授業中である。
相槌はいらない。こっちが黙っていようと会話しているのがバレバレである。
「何になるの?」
紙に書く。文章を武器にするその仕事。
「だから言ってたんだ。ジャーナリストに向いてるって。」
その質問力、私なんかよりずっと素質がある。
こちらが隠そうとしているのに言いたくなってしまうように仕向ける、
その誘導力?と言うべきか、天賦の才能であるように感じる。

文字通り終わってしまわぬよう、
でもどうしたらいいのだろうか。