なぜか沈んだ気分で自宅のドアを開けた。
〈また出かけなきゃいけないのか…〉
昨日の夜から、楽しい時間を過ごしてきたはずなのに。
和馬の家に行ったのだって、奴と一緒の時間を過ごしたかったに過ぎない。
奴の横で眠れた時は、幸せであった。
シャワーを浴びてスキンケア、荷物をまとめて家を出た。
もう日は暮れている。
晩ごはんを一緒に食べる約束だから、奴は待っている。
でも、灰皿の吸い殻の火が消えたか気になって、一度家まで引き返した。
奴には財布を忘れたから遅れると嘘をついた。
バスで行こうか、電車で行こうか、どっちが早いか。急ぐ必要なんか無いのに、いつも急かされているような気分になる。
遅れることに、私が強迫的になっているだけ?
慎吾の時だってそうだった。
いつも私が急かされた。お金もろくに無いのに、タクシーに乗って会いに行った。一度だけではない。
「ガチャ。」
約束より、一時間遅くなった。
ハーフパンツに、タンクトップ姿の奴。
いつものように、冷房は効き過ぎている。
有名店のレトルトのカレーが、沸騰した湯の中に2つ浸かっていた。
"甘えさせてくれ"と言っていた割に、自分のことは自分でやってしまう奴、それ以上に、人をもてなす術も身についている。
そう感じるたびに、自分の立ち位置がわからなくなった。
食事の間、どんな会話をしたかよく覚えていない。大した内容ではないだろう。きっとカレーに関することで間をもたせていたのか。
食べ終わって、誰にも邪魔されず二人きりになれた喜びから、私が奴に抱き着こうとしたら、腰をつかまれベッドに押し倒された。
まだする気にはなれなかったし、お腹もきつかった。だけど私が断るなど、一度たりとあったであろうか?
電気を消す。
窓から漏れる光だけ。
奴が猛獣的なのは、私を裸にするところまで。
仰向けになって、私が尽くすのを待っている。