流行歌ももちろん聞いていて楽しいのですが、たまには昔から歌われ続ける文部省唱歌を思い出してみるのも、季節の移り変わりが表現されていて良いものです。
春の歌の一つ『おぼろ月夜』も、歌われている静かな情景が心に染み入るいい唱歌(うた)だと思っています。
夕闇に落ちる風景。春霞の空に浮かぶ朧月。春の象徴でもある鮮烈な黄色の菜の花、冬が過ぎ鳴き始める蛙の声。歌詞からその田舎の情景が瞼に浮かんでくるような気がします。
古き良き日本の風景はなかなか見ることはできなくなりましたが、夕暮れのひと時、自然を感じながら静かに流れる時間を愉しむのはきっと幸せなことなのかもしれません。私…いや、現代人が忘れてしまった情景が歌に切り取られている、そんな風に思うのです。
春風そよ吹く空を見れば♪ 夕月かかりて匂い淡し♪
冬とは違い、気温が下がる夕方でも、なんとなく暖かみの残る春風に吹かれながら、夕闇にぼんやり浮かぶ月をただボーっと眺めていたいものです。
