Selmer 1964年製 Zodiac Twin Fifty 50 Crocodile | HOWL GUITARS

Selmer 1964年製 Zodiac Twin Fifty 50 Crocodile

ナマステー

HOWL GUITARSのhiroggyです。

前ブログに続きイントロ文で、インド一人旅の中で起きた事などを面白おかしく文章に表してみようと思います。旅の供に持って行った小説が村上春樹氏の小説だったので、ちょっとハルキノベル風旅行記にトライしています(笑)

やれやれ、いつになったらインド本編が始まるのやら。

楽器説明文と写真だけ見たい人はサーとスクロールダウンしちゃって下さいヾ( ´ー`)


インド旅行記 (3)「アブダビ・エアポーテーションスピリッツ」

ジョニーウォーカーをひと瓶機内で購入して心にすこしゆとりが持てた。その後は機内で映画を見るのも疲れたのでウォッカをプラスチックコップ一杯飲んで眠り込んだ。
目をさますともうアブダビ空港まであと30分で到着するところまできていた。午前四時。難なくランディングも終わり、トランジットのためアブダビ空港内で約4時間時間を潰すことになる。
デパーチャーエリアに行くと、なんと、免税店もカフェもオープンしている。午前四時にもかかわらず、みんなキビキビ働いている。アラブ人の商売根性、すごい。後になって考えると(ほんとについ今さっき)、たぶんトランジットの為に早朝に到着する便数が多いからなんだろうな、きっとそうなんだ、と頭の中で整理できた。やれやれ、焦って機内でウィスキー買わなくても良かったな。ジョニーウォーカーが特別大好物さってわけでもない。
免税店のリキュールコーナーを鹿爪顏でぶらぶら歩いていると、お目当てのタバコが売っていた。ラッキーストライク。ソフトパックは無いものの日本には売ってないアディティブフリーシリーズをワンカートン買うことができた。アディティブフリー(Additive-Free)というのは無添加の意味で、世界的ブームになってるオーガニックだの無添加だのの健康志向の余波がタバコ業界にまで及んだわけだ。僕が初めてこのアディティブフリーをタバコで見たのはイギリスに住んでいた頃でもう何年も前になるが、最初はアディクティブフリーAddictive-Free (依存性無し) とすっかり勘違いしてしまった。なにせAdditiveに"c"を一文字加えただけでAddictiveになる。パッケージに大きく「健康志向、依存性無しのタバコです」と大々的に書いたりして、なんて不釣り合いなネーミングをつけるんだろう、マクラーレンF1に「法定速度厳守車」と大きくステッカーが貼られているのと同じくらいおかしいね。と当時の僕は思っていた。とんだ勘違いをしていたもんである。
なににせよ、これで旅の飛車角は揃った。やっほー。

例によって朝からビールをワンパイント分ゆっくり飲みながら時間を潰す。さすがアラブの空港、そこらじゅうに黒づくめの女性集団が歩いている。あまりに多いのでデヴィッド・ボウイの『ラヴィング・ジ・エイリアン』を回想することもやめた。

ムンバイ行きの飛行機にボーディングして、いざインドを目指す。アブダビからムンバイの飛行時間はざっと3時間くらいで、小さな飛行機だったのでさっさと窓を下ろして寝ようと思ったのだが、太陽の強い光が差し込む窓の外を見ると地平線まで続く砂漠に心を奪われた。ハッキリいって感動した。黄金色に灰塵を吹きかけ淡くぼかしたような砂漠には砂の山が作り出す統一的なパターンが浮かんでいて、波というよりはまるで無数の蛇がみんな仲良く並びあって這っているようだった。その砂漠の上にただまっすぐの一本の道がはしっている。本当に、ただまっすぐに。それを見ているだけで喉が渇いてくるほどに砂しかない景色だった。しばらくそんな景色を眺めていたが、海に出た。アラビア海。僕は眠った。

次項に続く→

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では本題の楽器紹介へうつります。

今回ご紹介するアンプくんは

Selmer 1964年製 Truvoice Zodiac Twin Fifty Crocodile [Full Original]



前回のSelmer Bassmaster、Treble n Bassに引き続き、セルマーアンプの入荷です。

セルマーの歴史などは過去ブログSelmer 1962年製 Truvoice Bassmaster Blue/Grey Headを参照していただいて・・・・

今回入荷したSelmer Zodiac Twin 50は、セルマーアンプの中で最も人気のコンボアンプモデルです。

VOX AC-30の対抗機種として60年代初期に発表されたトレモロ搭載コンボアンプThe Twin Selectortoneの後継機種がZodiac Twinになります。

外観の特徴としては63年~65年までのCROCODILE SKIN期と呼ばれるワニ柄とブラックのツートーンカヴァリングに特大のSelmerロゴ。この時代の流行していたファッション性を取り入れたエキゾチック&ゴージャスなルックスで、数あるセルマーアンプカヴァリングの中でも一番人気の時期です。

Zodiac Twinの兄弟機種のThirty 30Wモデルとの違いはバイアスの取り方のみで、30Wのカソード方式に対しより多くの出力を稼ぐため50Wモデルはグリッド方式になっています。スピーカーにはGoodman's ceramic magnet speaker 12インチを2発搭載。EL34パワー管を2本、GZ34整流管を1本、ECC83プリ管を3本、EF86プリ管を2本使用しています。トランスには最高品質のPartridge製トランスが使用されています。

機能の特徴として挙げられるのがコントロールパネル中央にある "Built In Tone Colours" プリセットトーン。プッシュボタン式でHIGH TREBLEからCONTRA BASSまで5つのプリセットトーンが選択可能になっています。一番左のRotaly Controlボタンでトーンノブが機能するようになっています。

またこのプリセットトーンが効くのがEF86プリ管によるチャンネル2のみで、まさにこの機能がのちのMatchless DC30に見られるロータリープリセットトーンの原型と言われています。マークサンプソンもどえらいところに目をつけましたね。素晴らしいです。はい。

Zodiac Twinはパワー管やトランスなどのメインアンプ部分をアンプ下部に設置しプリアンプ部分を上部に設置した他ではなかなか類を見ない独特な構造をしています。

アンプ前面には"Blinking Eye"と呼ばれるウルトラマンのカラータイマーみたいなパーツがあり、トレモロのスピードや深さにEM84真空管が反応し、緑色の光を発光します。同時代のエコーユニットの名機Binson EchorecのMagic Eyeと同じ仕様ですね。

この個体は消耗品の真空管を除き、1964年にファクトリーで製造されたままのFULL ORIGINALの状態で残っているかなり希少な一台です。

それではお写真を公開です。



アンプ前面のSelmerブランドロゴです。ブラックのカヴァリングの上に古めかしい書体のSelmerゴールドロゴ。とてもヨーロピアンですね。大胆でかっこいいです。



トレモロのスピードと深さに真空管が反応し、緑色の光を発光するBlinking Eye。



オリジナルのレザーハンドルです。



側面の画像です。ブラックにクロックスキンのツートーンカラーのカヴァリング。最高にクールです。



アンプ上面のプリアンプ・コントロールプレートです。



コントロールパネル左側。Ch.1はVolumeとToneのみ、Ch.2はVolumeとTone&Selector Tone+Tremoloとなっております。



コントロールパネル中央。チャンネル2用のプリセットトーン "Built In Tone Colours" 。プッシュボタン式でHIGH TREBLE・TREBLE・MEDIUM・BASS・CONTRA BASSまで5つのプリセットトーンが選択可能になっています。一番左のRotaly Controlボタンで左側のトーンノブが機能するようになっています。



コントロールパネル右側。チャンネル2用のトレモロのSPEEDとDEPTHのコントロール。緑色に発光するパイロットランプ。



back viewです。無改造で1964年当時の出荷状態をキープしています。



バックパネル下部のパワーアンプ部分です。



バックプレートにシリアルナンバーが確認できます。



バックパネル内側についているメッシュです。構造上パワーアンプ部分がスピーカーに非常に近い位置にあるので、パワーアンプ部分をガードする役割のために付けられたのだと思われます。



バックパネルを外した状態。写真でわかるように、パワー管やトランスなどのパワーアンプ部分をアンプ下部に設置しプリアンプ部分を上部に設置しており、アンプ内部でセパレート構造を持っています。



パワーアンプのシャーシです。EL34パワー管、GZ34整流管、フェイズインバーダー用のECC83管。



取り出したシャーシの反対側からの画像です。オールオリジナルのトランス。最高品質のPartridge製トランスが使用されています。



Partridge製の電源トランスです。薄くなっていますが型番が確認できます。



Partridge製のチョークトランスです。



チョークトランスの側面。型番が確認できます



Partridge製のOutputトランス。型番が確認できます。



パワーアンプのシャーシ内部です。電解コンデンサーに至るまでオリジナルをキープしております。



メインアンプ内の画像の左側です。Wimaなど当時の最高品質のパーツを使用しています。



メインアンプ内の画像の右側です。電解コンデンサーもオリジナルをキープしています。



取り出した上部のプリアンプ部の全体です。全てオリジナルをキープしています。



プリアンプシャーシに繋がったBlinking Eye用のフィリップス・ミニワットのEM84です。



パワーアンプとプリアンプを繋ぐケーブルソケットです。



カバーを外したプリアンプ部の内部の画像です。WimaやMullard Mustardなどサウンドに重要なコンデンサーが確認できます。



プリアンプ内部の右側の画像です。インプットジャックとポットが確認できます。



プリアンプ内部の真ん中の画像です。切り替えスイッチの裏側です。各ボタンごとに数値の異なるコンデンサーを使用しサウンドを変化させています。Matchlessに多大な影響を与えた部分です。



プリアンプ内部の左側の画像です。トレモロ回路とパイロットランプの裏側になります。



プリ管と電解コンデンサーが搭載されている面の画像です。EF86管が2本とECC83管2本が使用されています。



製造日が分かる電解コンデンサーです。JAN 64=1964年1月です。



シャーシ類を全て取り外したキャビネット内の画像です。Selmer特注のGoodman's Speakerが確認できます。



スピーカーにはGoodman's ceramic magnet speaker 12インチを2基搭載。爆音に耐える素晴らしいスピーカーです。16オームのスピーカーで、並列に繋げているので8オームとなります。アンプ側の出力インピーダンスも8オームのみです。



貴重なオリジナルのトレモロON/OFFフットスイッチです。




さすがセルマー、非常に個性的でユニークなアンプです。

素晴らしいブリティッシュトーンが堪能できる50Wのコンボアンプです。

一番人気のクロックスキンのカヴァリングが最高にクールな一台。

FULL ORIGINALの個体はなかなか出会えません。

探されているマニアックな方、この機会に是非!!

お問い合せお待ちしております

hiroggy
HOWL GUITARS