シュムペーターを読め | ほうしの部屋

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 秋元康流悪徳商法によりドラッカー旋風が吹き荒れてしまっていますが、再三申し上げますように、ドラッカーなどは三流四流の経営評論家にすぎません。ということは、「ドラッカーを何度も読んで参考にした」などとうそぶく、日本の自称・他称を問わぬ一流経営者と呼ばれる者たちは、実は、経営者としても人間としても、五流六流ということになります。そんな奴の下では働きたくないものです。
「もしドラ」などを安易に読んで変な洗脳をされるよりも、じっくり時間をかけて、シュムペーターの『経済発展の理論』を読むことをおすすめします。
 ドラッカーがいかにシュムペーターをごく表面的にパクっているかがわかるでしょう。シュムペーターは独自の理論を生み出しましたが、ドラッカーは何も生み出していません。それどころか、シュムペーターの多義的で奥深い経済理論(経済の捉え方)を100分の1に薄めてしかも悪意ある曲解・誤解を重ねて、イカサマ経営術に仕立て上げて説いているのです。
 ドラッカーは詐欺師としては一流ですが、それを自分の弟子を使って金もうけに二次転用する秋元康も、やはり、詐欺師としては超一流といえます。
 シュムペーターは、私が敬愛する哲学者ウィトゲンシュタインと同じ世代で、やはりオーストリア=ハンガリー帝国の出身です。ただし、ウィトゲンシュタインはウイーン出身ですが、シュムペーターはモラビア(現在のチェコ)出身です。
 シュムペーターはウイーンで活躍した後、アメリカに渡り、米国の経済学の進展を牽引しました。
 シュムペーターが生み出した独特の言葉は、一人歩きしていますから、日本の低能な経営者・新興起業家・学生なども安易に真似するから困ります。例えば「創造的破壊」とか「イノベーション(革新)」といった用語です。
 実は、このような用語がまだ明確に出てこない、初期の名著『経済発展の理論』こそが、シュムペーターの経済学の核心であり、その中に、本当にシュムペーターが言いたいことは言い尽くされています。
 シュムペーターは、現代経済学というか現代経営学というか、いわば新自由主義的市場原理主義の元祖であるかのように見なされることもありますが、それはアホな追随者やドラッカーのような詐欺師の布教のせいです。
 シュムペーター自身は実際のところ、自分のことを「マルクスの弟子(後継者)」と称しているのです。中小新旧の多様な企業がひしめきあっっている状態でなく、大企業が寡占状態になり資本の集中が生じる、資本主義にありがちな状況を、シュムペーターは否定的に見ており、そんな資本主義ならば自然に内部硬直と崩壊を起こして、自然に社会主義に移行するし、そのほうがはるかにマシだと言っているのです。
 シュムペーターは、いくぶん自虐的な言い方とも言えますが、自分自身をマルクスの弟子(後継者)と言ってはばからず、現在、日本のバカな政財界人が叫ぶような「選択と集中」などをした結果として、大資本の寡占状態が生じるよりは、社会主義のほうを肯定的に見ているのです。
 だからこそ、ソ連や東欧の社会主義の崩壊などという表面的な事象から腰砕けになって「マルクス主義に幻滅した」ような、ヘタレというか(本当のマルクス主義を知らない)多くの日本のアホどもでも、シュムペーターなら、抵抗なく読めるでしょう。逆に、私のような、いまだにマルクス主義にしがみついている貧乏人も、シュムペーターなら、(現代経済学者とはいえ)敵視せずに受け入れられるのです。ロールズのようなリベラリズム(理性的再分配思想)などとも親和性があります。
 何しろ、共産党員で殺人者だった全学連時代の過去を清算して自害することなく、のうのうと転向して、今では、石原慎太郎と並ぶ、ボケた保守(右翼)説教ジジイとしてまだ生き恥をさらしている、西部邁のような人間でさえ、シュムペーターを評価しているのです(笑)。