27歳独身の弟に待望の彼女ができた。
弟が照れくさそうに紹介してくれたのは、
車イスに乗った内気な黒髪美女ビアンカ。
まばたきをしない彼女はラブドール(空気人形)だった。
「大変だ!
弟を病院に連れていかなくちゃ」
「ラースと、その彼女」
クレイグ・ギレスピー監督
2007年
ライアン・ゴズリング、ポール・シュナイダー、
エミリー・モーティマー、ケリ・ガーナー
パトリシア・クラークソン
(画像お借りしました)
少し変わったアプローチの恋愛映画といえば、
人工知能との恋愛
「her/世界でひとつの彼女」レビュー⇒こちら
SNS越しの恋愛「(ハル)」レビュー⇒こちら
今作はラブドールを通して世界が広がっていく物語です。
ピンク色のモノがたくさん出てきます。
その色が持つ意味に、なんだか心が和みました。【感想】
「この病を手放す決断ができるのは
本人だけ。
周囲の人間にできることは
否定しないで調子を合わせること。」
精神科医に指示され、兄は拒否。
「冗談じゃない!
人形に挨拶なんてバカバカしい。
町の皆に笑われる」
でも兄嫁はラースの彼女に市民権を!
「あなたたちだって
猫に服を着せるでしょう?
UFOにのめり込んだりするじゃない?
ラブドールを大切にしても
いいじゃない?」
優しさは町全体に拡散し兄自身も救われていく。
医師との会話から
なぜビアンカがなぜやってきたか、
解明されていきます。
「僕のビアンカは妊娠出産できない人なんだ。
出産は命の危険がともなうんだ。」
もしも、僕のパートナーが妊娠したら?
出産することになったとしたら?
想像するだけで怖い!!
パニックに襲われ、息が苦しい。
不快な手足の触感を消したくて、
腕を振りながら
なんとか堪えようとするラース。
ライアン・ゴズリングの演技が繊細ですねぇ。
驚くほど自然で。
母さんはボクの誕生と引きかえに命を。
そのことによって、父さんの人生は・・・
ラースにとって
人間の女性と関われば現実の問題がついてくる。
喜ばしい妊娠や出産も、
ラースには母親を亡くした事実との板挟みになってしまう。
ビアンカなら
その問題は回避できる。
なぜ兄嫁との関りが辛いかよくわかります。
今、兄嫁のお腹には赤ちゃんが。
日々、どんどん大きくなる命の重み、
危険な出産。
ラースにとって兄嫁の存在は、
現実を見せられるよう。
目をそらしたくなっていた。
親子の絆が感じられる宝物。
心細いとき肩にかけ
やがて自分の心の傷に向き合い、
人々と関わるうちに、
彼の視線はビアンカから
人間の女性へ動いていく。
ティディベアの場面がとても愛らしいんですよ(*^^*)
男性社員の悪ふざけで首吊りになったティディベア。
彼女がストライクをだしても
ハイタッチできない。
他の青年たちと盛り上がるマーゴの姿を眺めるだけ。
触れることができない。ボーリング場をでると、雪がちらついていた。
手袋をぬいで
初めて自分から手を差し出す。
恐る恐る握手をしてみる。
痛みは感じない。
マーゴの手のぬくもり。
ビアンカの肌と違う。
ラースが変わるにつれ、
ビアンカ(人形)は無口になっていく。
「ノー」 「わからないわ」 という返事が
増えていくのです。
ある日、ビアンカが意識不明になり
救急車で運ばれてしまう。
そう、ラースの決断の時は
すぐそこまで迫っていた。
ピンクのカーネーションを胸に、
勇気を出した言葉とは・・・。
真理がこめられた脚本。
セラピーをうけたような気分になりました(*^^*)