大噴を後にし、さらに奥へと足を進めると、景色は一変します。
整備された遊歩道の先に広がっていたのは、青空の下にむき出しになった灰色の大地。
山肌のあちこちから白い噴気が立ち上り、まるで地面そのものが息をしているかのようです。
遊歩道はしっかりと整えられているものの、一歩脇にそれればゴツゴツとした岩。
ところどころに黄色く染まった岩肌が見え、ここが今もなお“生きている火山”であることを強く実感させられます。
近づくにつれて、硫黄特有のツンとした匂いが濃くなってきました。
足元からは熱気が立ち上り、風向きによっては思わず顔を背けたくなるほどの勢いで噴気が吹き出します。
噴気の正体は、地下から噴き出す水蒸気や硫化水素、二酸化硫黄などの火山性ガス。
この一帯だけでも百を超える噴気孔があると案内板に記されていました。
ガスの温度は100℃以上。
もちろん有毒でもあるため、立ち入りが制限され、注意喚起の看板が随所に設置されています。
看板の説明に目を落としながら、改めて周囲を見渡すと、噴気孔のまわりには黄色い結晶が点々と付着しています。
これは噴き出したガスに含まれる硫黄が冷えて固まったもの。
人工的に作られた展示ではなく、今この瞬間も生成され続けている“現象そのもの”が、目の前に広がっているのです。
山肌を背景に、白い噴気が空へと吸い込まれていく光景は、どこか非現実的。
それでいて、不思議と恐怖よりも畏敬の念が先に立ちます。
ここは癒やしを求めて訪れる温泉地であると同時に、地球の内部と直接つながる、極めて特異な場所。
玉川温泉は「入る温泉」だけでは終わらない。
歩き、見て、感じてこそ、この土地の本当の姿が見えてくる——
そんなことを、噴気立ちのぼる山肌の前で、しみじみと思わされました。

