満願寺駐車場に車を停めて、温泉街をゆっくり歩いてみました。
歩き始めて、まず目に入ったのが、温泉街を流れる清流です。
水は驚くほど澄んでいて、川底の石までくっきりと見えます。
「ここまで透明だと、魚もかくれんぼできないんじゃ……」
そんなことを、思わず心の中でつぶやいてしまうほどの美しさでした。
このあたりを流れる川は、満願寺川。
そして、この清らかな流れには、ちょっと珍しい生き物も暮らしています。
それが「オキチモズク」です。
オキチモズクは淡水に生育する紅藻類の一種で、国内でも生育地が限られている珍しい植物。
満願寺温泉の下流一帯は、「オキチモズク発生地」として国の天然記念物に指定されています。
川底の石に付着して生育しているそうです。
温泉街を流れる何気ない清流が、実は貴重な自然を育んでいる。
そう思って眺めると、先ほどまでとは少し違った川に見えてきます。
清流沿いを歩いていると、やがて共同湯の「温泉館」が見えてきました。
入浴料は300円。お湯は約42度で、泉質は単純温泉です。
素朴な建物ですが、どこか温かみがあり、観光客のためだけにつくられた温泉というより、昔から地元の人たちに利用されてきた「暮らしの中の温泉」といった雰囲気があります。
300円という料金も、旅人にはうれしいところです。
さらに川沿いを進むと、今度は露天風呂が二つ並んでいます。
ここで目を引くのが、その開放的な造り。
なんと道路沿いにあり、外からも見えてしまうような場所にあります。
テレビなどで「日本一恥ずかしい露天風呂」と紹介されることもあり、初めて見ると、思わず「これは……すごい」と立ち止まってしまいます。
それでも、川のせせらぎを聞きながら湯に浸かるという体験は、なかなか他では味わえません。
実際、この川湯は単なる観光名物ではなく、地元の人たちが米を研いだり、野菜を洗ったりするなど、昔から暮らしの中で利用されてきた温泉でもあります。
山里の静けさの中に、清らかな川が流れ、そのすぐそばから温泉が湧いている。
満願寺温泉を歩いていると、温泉が観光のために存在しているのではなく、人々の暮らしのすぐ隣にあるものだということが伝わってきます。
そして、川の流れを眺め、共同湯を見て、川湯の姿を目にすると、ここには長い時間をかけて育まれてきた「温泉のある暮らし」があることに気づかされます。
短い散策でしたが、満願寺温泉は、温泉と自然と人の暮らしが近い距離でつながっていることを感じさせてくれる、印象深い温泉地でした。






