反逆のレシピ | BOOGIEなイーブニング!

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川賞と直木賞の発表があった。

昭島さんというコンサルタントがいた。神戸出身でヒゲを蓄えガッシリ体型の、かなり厳ついオジサンだ。有名人で例えると、今は亡きプロレスラーの三沢光晴だと思っていただいていい。

▼故三沢光晴さん
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ボランティアのミニコミ紙の仕事で出会ったこのオジサンは何でもコンサルタントするのだ。例えばカレー屋さんのチェーン展開をコンサルタントしたり、盗撮・盗聴対策をコンサルタントしたり。要するに何を生業にしているのか全く分からないオジサンだった。カレー屋さんのチェーン展開は「3000店はいきますよ!」と大見得を切ってスタートしたのだが、4店舗で終わった。早稲田と高円寺と吉祥寺と中野までは出したが潰れてしまった。味はゴーゴーカレーのパクリだった。

ふかしグセがあるようだ。

カレーチェーンの失敗とともに昭島さんは、突然姿を消した。

僕は昭島さんを忘れていた。

2年振りに昭島さんは突然姿を表した。見た目は以前と変わらないのだが、目つきだけはキツくなっていた。

昭島さんは珈琲を一口飲んで、関西弁でこう切り出した。

実は一年間山籠りして、小説を書き上げたんですわ。渾身の推理小説を。毎日毎日、魂を削って書き上げました。

料理人が料理の知識を活かして難事件を次々と解決してゆく、推理小説です。

山から降りて小説を出版社のコンテストに出したんです。そうしたら、出版社の編集長から直接電話がかかってきましてね。惜しくも大賞は逃したんですが、審査員からは大好評だったと。是非とも出版したい、全力でプッシュしますと申し出てくれたんですわ。

書店でもいい場所に置けば、絶対話題になると。

ただし、申し訳ないが、最初だけ自費出版になるのだという。

その費用は100万円必要だというのだ。

僕は薄々感じていたが、出版社の名前を聞いてみた。

G舎です。

出た!

インチキな自費出版で悪評高い会社だ。昭島さんはまんまと騙されている。しかし、売れると思い、大きなゆめを語る昭島さんに本当のことを伝えることができなかった。

売れるかもしれないし、
やって見なけりゃわからない。

本人がお金を出して、満足したのならそれはそれでいいと思った。

昭島さんに帰り際、こう質問してみた。

僕「昭島さん、売れたらみんなに自慢したいんで、作品のタイトルだけ教えてください!」

昭島さん「出版社が独占したいらしく、口止めされてるんですけど、本当に内緒にしてくださいよ。」

僕「約束します!約束しますとも!」

彼は声を潜めて、ちょっと顔を赤らめながら真顔でこう答えた。




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