切磋琢磨 | BOOGIEなイーブニング!

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昨日ベロベロベローチェの
カウンターで
珈琲をしばいていると
隣りに火野正平を
更に老けさせたような
老人が座った。

$BOOGIEなイーブニング!
↑ はい。火野正平でーす

足下にデカいスポーツバッグを
ドッカリと置き
中からチラシと筆ペンを取り出した。

チラシはテカテカのA4コート紙で
裏面は真っ白だ。

老人はおもむろに
チラシの裏に筆ペンで字を書き始めた。
かなりイラストチックな字である。
よく駅前であんちゃんが
ロウソクに囲まれて
「あなたの好きな字を書きます」
みたいな字体だ。

「龍」の字を書いて
ハネの部分が龍のタテガミのように
勢い良く紙から飛び出しそうだった。
良くあるステレオタイプの創作文字だ。

次は「富士山日本一」と書いている。
「山」の字は富士山に似せてある。

武田双雲ほど独創的でもなければ
相田みつおの文才もない。
榊莫山の味わいすらないのである。

ついでにあろうことか
ズルペッコして
二度書きまでやってやがる。

月曜日の20時に
180円のコーヒーを飲みながら
老人が文字で遊んでいるだけである。

と、その時だった。
「切磋琢磨」という文字を
老人が一枚したためて
つかつかとレジまで行き
照れくさそうに
ベローチェの女子店員に
差し出した。

「あげるよ!大切にしてね」

店員は喜んで
「ありがとうございます。お上手ですね」

随分と優しい女の子である。
さらに老人の横を通る度に
「ありがとうございました」と
お礼を言うのである。

よくよく顔を覗いても
一点の曇りもない
素直な表情だ。

黄色いチラシの裏に
老人が筆ペンで書いた
ダサ気持ち悪い4文字
「切磋琢磨」を
貰ってウレしい訳が無い。
かといって老人は常連らしいから
すぐに捨てられるモノでもない。
このチラウラの4文字は
高レベル放射性廃棄物より
タチが悪いのだ。

そんなモノを貰って
一点の曇りもない笑顔だ。

彼女ならKGBの対外情報アカデミーを
首席で卒業できるだろう。

しかし問題はその後に起こった!

老人はベローチェ店員全員に
向かって大きな声で

「ちゃんと額縁に入れてね!」

と言い放ったのだ
もちろんギャグかと思って
振り返って見てみたが


老人は真顔だった。
大真面目でそんなことを言っていたのだ!


オレは一気に珈琲が不味くなった。