前回記事「仏典を読む(その5)無量寿経(上巻)1」の続きです。

 前回では、阿弥陀仏となる法蔵(ほうぞう)が登場しました。今回は、修行時代の法蔵とその師匠である世自在王仏との会話が行われます。

 

【無量寿経(上巻)】2

 

⑤ 法蔵は、才能にあふれ、強い志を持った優れた人物であった。法蔵は、ひざまずいて合掌し、「世自在王仏のお顔は気高く輝いておられ、何よりも尊い。その光明に比べると太陽や月の輝きはまるで炭のようです。持戒・多聞・精進・禅定・智慧の徳は並ぶものはなく、愚かさやむさぼりや怒りなどは全くなく、図り知れない功徳を備えておられます」と、世自在王仏の徳を称賛した。

 

⑥ 続けて、法蔵は、「私も仏になり、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧を修めてこの上なく優れた存在になりたい。仏になる時は、生死に苦悩する全ての人々に大きなや安らぎを与えることを誓います。ガンジス河の砂の数ほどの仏の方々の国土(以下・浄土)があるとしても、私の光明はその全てを照らします」と、自身の志を表明した。そして、法蔵は、「私はこの上ない悟りを求める心を起こしました。私のために教えをお説き下さい。私はその教えに従い、この上なく麗しい浄土を整えたい。速やかに私に悟りを開かせてください」と世自在王仏に懇願した。

 

⑦ これに対して世自在王仏は、「どのような修行をして浄土を整えるかは、そなた自身で知るべきであろう」と答えるが、法蔵は「いいえ、それは私ごときが知るところではありません。どうぞ、他の仏の方々がそれぞれの浄土をどのように築き上げたかについて教えてください」と言って再度懇願した。

 世自在王仏は、法蔵の志が尊く深く広いことを知り、法蔵に対し、210億の浄土について説き、それら全てを見せた

 

⑧ 法蔵は、世自在王仏の教えを受けて、この上なく優れた願を起こした。そして五劫という長い間、思いを巡らせて自身の国土を整えるための修行を定めた。修行を定めた法蔵は、世尊は世自在王仏の傍へ行き、合掌してひざまずいて報告すると、世自在王仏は「そなたが起こした願をここで述べるがよい。それを聞いた人々に悟りを求める心を起こさせ、また、菩薩たちに修行をさせることになり、大いなる願を満たすことができるだろう」と言った。これに対して法蔵は、「それでは私の願について詳しくお話しします」と答えた。

 

【メモ】

 第2回目はここまでです。面白い内容が盛りだくさんです。

 まず、⑤については、仏典あるあるです。師匠である仏を弟子たちがアゲまくって、これに対して仏が「うむ。苦しゅうない」と言わんばかりに教えを説くというパターンです。「仏弟子たちって営業上手そうだな」とか思いますが、ウソをついても仏には通用しないでしょうから完全に本心なのでしょう。

 次に、⑥では、法蔵が阿弥陀仏になるために、大乗仏教の修行徳目「六波羅蜜」(ろくはらみつ)を行う旨が述べられています。阿弥陀仏も修行時代に六波羅蜜を行じて仏になったということでしょう。

 ⑦では、懇願された世自在王仏が210億か所の浄土に関する情報を法蔵に提供します。これは面白いです。つまり、我々が知る極楽浄土とは、他の仏が築いた様々な浄土を参考にして築かれたということになります。マイホームを建てる時、いろんな家を見て参考にすると思いますが、極楽浄土が他の浄土よりも有名なのは、法蔵によって綿密な計画が立てられた結果ということになります

 最後に⑧ですが、世自在王仏に教えを説かれた法蔵は「極楽浄土建設の計画」に五劫という時間をかけたとあります。なんと200億年です。建設じゃなく計画だけに200億年かけたというのがポイントです(笑)

 

©金戒光明寺HP

 こちら、五劫思惟阿弥陀如来といいますが、「極楽浄土建設計画」に五劫という長い時間をかけた法蔵の姿を現しています。散髪に行けなくて髪が伸びています(爆)

 

 次回は、浄土教の核心部分「四十八願」となります。

 

 次回に続きます。