前回記事「宝山寺・生駒聖天(その1)」の続きです。

 

 宝山寺の売店「和光殿」の入口付近に展示されている宝山寺の全景模型です。生駒山麓の参道入口から奥の院まで歩けば1時間以上必要で、十分なハイキングコースになります。ご覧のとおり、宝山寺は山の中にある寺院です。とにかく静かですし、気軽に立ち寄ることができないのが逆に良いです。参道沿いの宿を電話で予約すると、「コンビニが一切ないので入山前に必ず買い物を済ませてください」と言われます。

 

 本堂付近からの景観です。右側手前に不動明王、右側奥に歓喜天。右側上に十一面観音、如意輪観音、毘沙門天。左側上に文殊菩薩がそれぞれ祀られています。

 

 岩壁正面に弥勒菩薩。岩壁右側の洞窟(般若窟)内に、荒神、岩船明神、弁財天、役行者がそれぞれ祀られています。岩船明神は、宝山寺が建立される前から生駒山に住していたという神です。宝山寺の開山(事実上の)である湛海律師が入山する際に岩船明神に襲撃されたという記録が残っていますが、その後は丁重に祀られたようです。

 高野山の狩場明神や丹生都比売大神などもそうですが、先に住していたという神々を追い出さないで丁重に扱う。こうした寺内の神社設置や、神仏習合については、仏教の純血性を損なうものとして嫌がる人もいるのですが、私としては、日本の精神の素晴らしさとして称えたいと思います。

 

 奥の院に向かう道の脇には無数の地蔵菩薩が並んでいます。初見の方が驚くほど長く続きます。これだけの地蔵菩薩に見られて歩くというのは、私のように後ろめたい人生を送っている人間には緊張感抜群です。

 すべて心のうちが見透かされていると思い、恥ずかしさを感じながら歩きます。

 

 奥の院参道途中には大師堂があります。宝山寺は、真言律宗という一般にはあまり馴染みのない宗派ですが、真言宗十八本山のうちの一であり、高祖として弘法大師空海を信仰します。鎌倉時代に「戒律の復興」を目指して誕生した宗派ではありますが、教え自体は真言宗とそれほど大きな違いはない…と思います。

 宝山寺のある生駒山は、元々、魑魅魍魎が住む山とされ、また、役行者が開いた修行の山だったようで、弘法大師も修行をしたという伝承もあります。ちなみに、生駒山については、一説によると、日本において新興宗教団体が最も密集している地域だという情報もあります。このあたりは非常に面白く、以前色々調べましたので、また別の機会で説明したいと思います。

 

 大師堂の先をさらに進むと、宝山寺の開山である湛海律師の廟である「開山堂」と不動明王を祀る「奥の院本堂」があります。宝山寺開山の湛海律師については、我が国における代表的な歓喜天行者でしょう。湛海律師の行状を記した書物がたくさん残されており、これらをまとめた書籍が宝山寺で購入できます。湛海律師による歓喜天との感応同交(かんのうどうこう・神仏と心を通わせること)の記録は非常に刺激的であり、いずれ歓喜天のことを話す機会で説明したいと思います。

 ※ 開山堂と奥の院本堂の写真は、手持ちの良い物がないため、宝山寺のホームページのものを利用させていただきました。

 

 最後に、奥の院からは奈良を一望できる素晴らしい景色を見ることができます。

 参拝の最後にこの景色が見られるのは心憎い演出です。

 

 次回「生駒聖天・宝山寺(その3)」に続きます。