いざ遭難→救助要請 そのプロセスと時間 | 情熱山脈(passion mountains)のブログ

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ともかく山が好き...春~秋はトレッキングを...冬~春はバックカントリースキーを通して雪山の魅力を...

GPS衛星の位置。〇や✖で示されるこれだけ多くの衛星の電波を受信して現在地情報を得ている。

 

前回は遭難対策グッズやシステムの紹介をしましたが、最後に述べたように...

遭難してからいかに速やかに通報するか...

これが遭難その後の出発点になります。

さて、遭難も道迷い、疲労、滑落、転倒、病気などといろいろなシチュエーションがありますが

  1. 自ら遭難を通報できる場合(意識があって身体が動く場合)
  2. 自ら遭難を通報できない場合(意識がない、骨折などで身体が動かせない)

この2パターンによって対策が異なります。
1の場合は

  1. 携帯で110番・・・これが一番早いです。
    但し、5W1H(ブログ後半で解説)を的確に伝えなければなりません。
  2. 携帯が繋がらない場合・・・拍手で大きな音を出す。拍手の音は結構山の中では響きます。それが、自然では起こり得ない人為的なリズムなどで発せられたときは気づいてもらえる可能性があります。
     また、大きな声で
    ”助けて~”と叫ぶのも良いのですが、結構山の中では自然の中の音に同化して気づきにくいこともあります。
     リュックの
    チェストベルトについている笛を鳴らすそのほか熊鈴などを激しく騒々しく鳴らすなど。
    ※これらについては以前、登山道から逸脱した岩場で骨折で動けなくなっていた登山者を発見救出した記録もご参考に。

     

     


     
     これらは近くを別の登山者が通りかかった時に気付いてもらう方法ですが、
    携帯の電波も全く繋がらないままではなく1時間に数回アンテナマークが立つこともあるので、メール等を送信状態にしておくのも良いでしょう。通信可能になった時に送信できる可能性もあります。

さて...
2の自ら通報困難な場合ですが...滑落して意識不明などの状態が想像できます。これからの雪山では特にルートを誤まって滑落するとそれが引き金になって雪が崩れてきて生き埋めになってしまう事もあります。
 雪山ではビーコンを持って行くのも必須ですが...やはりそれ以前に他人に遭難したことを認知してもらうことを考えなくてはなりません。これは、事前にそのようになった場合の準備をしておくことが必要です。
 前ブログでは、
ココヘリ、YAMAP、コンパスについて解説しましたが、ココヘリはこの通報についてはシステムはありません。あくまで通報がありきのシステムです。

  1. YAMAPの見守り機能を使う
    これは、YAMAPにより留守番家族などのスマホやタブレットに表示される現在位置が正規の登山ルートから逸脱してそこから動かなくなったような場合に気付いてもらえる可能性があります。ただし、1昨年の谷川岳残雪期登山での滑落事故ではYAMAPで位置も特定できたし、軌跡のスピードが異常に速かったことから滑落したという推測も出来たにも拘わらず、冬~春の事故だったにも拘わらずご遺体が見つかったのが秋に入ってからということもありました。
     
  2. コンパスの下山通知機能を使う
    コンパスでは下山後一定時間を過ぎると自動的に本人と連絡先に”下山通知がありません”とメールが入ります。
     このタイミングですが、登山届による下山予定時刻より3時間以降10時間まで1時間ごとに設定ができます。ある程度自己タイムが安定している人ならば3時間後でOKだと思います。もし、大幅な遅延などが起きた場合は再度登山届を出し直せばよいので。

ここまで書くと気づかれた方もいらっしゃると思いますが、
2の登山届は1日ごとなど短いスパンで出しておいた方が良い...ということです。
3泊4日の縦走登山で1日目の昼に遭難した場合、”下山通知なし”のメールまで3日半もかかります。いわゆる72時間の壁ぎりぎりです。
 それであれば、登山届は1日ごとに提出が良いですね。

1日めは登山口からベースの山小屋までで一つの登山届、山小屋についたら下山通知を出す。
2日目はベースの山小屋から稜線の山小屋まで、稜線の山小屋についたら下山通知を出す。

3日目は稜線の山小屋から稜線を歩き、別の山小屋へ。こちらも着いたら下山通知を出す。

4日目は山小屋から登山口まで下る。これも終わったら下山通知を出す。

 

という具合です。こうすることで、連絡先の人に異常を知らせるまでの時間が半日くらいに短縮します。一般的な登山では15時か遅くても16時には山小屋やテン場に到着するので、そこから3時間...18時~20時くらいには異常に気付き、連絡先に指定した人が110番することになります。

 そこからは、コンパスであればココヘリのID JROなどの保険番号などがわかりますし、YAMAPであればGPSログを警察に提出してもらってそれに基づき遭難地点の特定ができます。

ここで、閑話休題...ココヘリは徘徊老人の捜索を目的として開発が始まったものらしいという話を聞いたことがあります。発信機の他費用をだせば、捜索機も貸してもらえます。

 

さて、遭難を認識したら何を通報すればよいか...
これが、前述の5W1Hです。
When いつ遭難事故がおきたのか。
Who だれが遭難したのか。

Where どこで遭難したのか。
What なにをしたのか。
Why なぜ遭難に至ったか。(気候が急変など)
How どのように・・・足を踏み外して 薄着で歩いて 食事と水分不足


これはYAMAPのログであれば上3つは明確にわかります。
それ以外の場合で現地から本人か発見者が通報する場合、位置の伝え方がむずかしいですが、〇〇登山道の〇〇mの位置から左に滑落30mというような伝え方の他に、OKグーグルで”現在地の緯度と経度”と入力すれば数値がでます、もしくは電波がないとGoogleは使えないのでYAMAPなどGPSアプリで現在地の緯度と経度を表示させることが出来ます。のでそれで警察に伝えるのが確実でしょうか。いずれも、普段実際操作をしてみて習得しておきましょう。

 

次に、下の3点ですが、これは救助の方法に大きく関係することになります。

ヘリでホイストしなくてはならないのか、隊員が徒歩で現地に赴き、近隣の登山口もしくは山小屋までサポートするなどの具体的な救出方法の選択につながります。

 以上が今回の内容ですが...お気づきになられていると存じますが、

登山届の重要性です。

届けそのものもそうですが、如何に連絡先(家族など)としっかり打ち合わせしておくか...ということでしょう。
 これまでの遭難例を見ても、”ちょっと山行ってくる”の一言で携帯も持たず(どうせ山では繋がらないから要らない!)地図、コンパスも持たず、結果的に道迷い時間切れ、沢の方に下りて行って足を滑らせて滑落...ずっと発見されず年を跨いで骨だけになって発見される

 というような悲惨な事例も多いです。

 

低山だから、日帰り可能だから、ハイキングコースレベルだからといっても低山には高山と違って作業用道や獣道、間違い道(登山者が間違えて踏み入った跡がまるで登山道のように見える道)が多いのです。分岐点で微妙な角度の2つの道、どちらが正しいか?これは地図とコンパスもしくはGPSアプリがないとどうしようもないでしょう。

 

 最後に、あなたのGPSは健康ですか?

診断するアプリをご紹介します。登山前にはスマホの健康診断も。時にGPSチップが音もなく壊れていることもありますよ。

のブログの最初の図を見られるアプリ。GPSアプリ不調の場合などにこのアプリでスマホのGPSチップが正常か確認できる。私も蝶ヶ岳登山の際チップが壊れて間違い道が結構多い長塀尾根で苦労した経験がある。

 

 それから、登山の際は食事の計画も立てますね、途中の山小屋で食べる。休憩地点で食べる、非常食...そして水分。登山口で○○L(ml)途中の山小屋で補給、〇〇沢で天然水を補給など...それに加えて欲しいのは、スマホの電源補給の計画です。
 予備電源(充電用電池)交換電池(一部スマホはオプションで交換用の電池も販売しています)山小屋での充電、ソーラーパネルでの充電など。結構スマホの電池切れで遭難後の手配が遅れたという事例は多いのです。

TORQUE(京セラ)の交換用電池(充電器は市販のものだが、これについていたバルク品の電池は半年くらい使っていたらふくらんできた。電池本体はやはり純正品を使いたい)