母に電話した。甲状腺癌で転院し、今度の検査で今後の診療方針を決めるらしい。
1500km離れた土地に住む母。
手術の日には帰ろうと思っていた。夫からの援助は皆無なので、結婚前のなけなしの貯金を下ろして帰ろうと思っていた。8時間掛けて帰るつもりだった。
その矢先、母の口から次々出てくる言葉。
「お兄ちゃんは心配して何度も電話してくれた。お兄ちゃんは初診についてきてくれた。お兄ちゃんはこういってくれた。お兄ちゃんのお嫁さんはこういってくれた」
子供なしで夫婦仲の良い兄夫婦。近くに住む兄夫婦。
それと私を比べるのか?
それと同時に10代で家を出た理由と、子供の頃の記憶が蘇る。
そうだった・・・・。いつもそうだった。いつも比べられてた。兄とも周りの子とも。
大人になって出産時に帰省した時もそれは続いた。
近所の知り合いの娘さんは~毎日言われ続けた。
子供が生まれても。
当時マンション暮らしだった私に向かっていつも○○(私の子)は可哀想。狭い場所で育てられて。
隣の子なんて庭でブランコしたり砂場作ってもらったりで幸せそう。
よく喋ってかわいいねぇ、まぁあそこはお母さんがあんなにしっかりして何でもしきれるような感じの子だもんねぇ。
○○はねぇ、ママもねぇ
兄と比べる所がないときは兄嫁と比べる。
あの子は仕事バリバリしてキャリアアップして頑張りやさんで。
思い出したくない言葉達が洪水のように溢れ出す。
何も出来ないのはお互いさまなんじゃない。
私も誰の手も借りずに一人でやってきた。体調が悪い時も、どんなに辛い時も一人でやってきた。
そんな小さい事ばかり思ってしまう自分が情けない。自分は小さくて醜い人間だ。
こんなに空は綺麗なのに私の心はどんよりと雨雲が垂れ下がった真っ暗な空のよう。