前回の続き、第3話 「受け継がれし逆転」のネタバレあり感想です。
【時効、法の矛盾】
本話は最終的に「時効」を巡る話となります。
既に殺人罪についての公訴時効は日本では存在しませんが、『逆転』世界ではまだ存在しているということになっています(期間は15年)。
この時効の壁を破るために出てくるのが以下の2つのポイント、
(1)犯人が海外に逃亡していた期間は公訴時効は停止する
(2)共犯者が起訴された場合、共犯者の裁判が確定するまで公訴時効は停止する
(1)はフィクションでよく出てくるおなじみのポイントですが、自分は(2)を知りませんでした。法律に関しては素人な真犯人が気付かなかったのも無理はないと思いました。
天海は一切罪を犯していない
しかし、真犯人を捕まえるためには天海を“共犯者”としなければならない
だが、それだと天海は犯罪者であることに変わりはなく天海は救えない
この「法の矛盾」を突き付けてきたときは凄いストーリーだ!と感嘆したものでした。
信楽さんは~何とかする~みたいなことを言っていましたが、どうするのでしょう?エンディングでは牢屋から出ている姿を確認できましたから「どうにかなった」のでしょうけど。天海は超法規的措置とか恩赦で解放されたのでしょうか?
【時の重み】
IS-7号事件の発生から18年。
ゲームでは一瞬ですが、現実世界での18年は長いです。しかも「苦しみとともに過ごす18年」なら尚更です。
シリーズも『逆転検事2』発売時は『逆転裁判(1)』から約10年は経過していましたから、プレイヤーには「時の重み」が重なるところもあったかもしれません。
18年のうちに亡くなった人、老いた人もたくさんおりビジュアル面でも時の流れを感じさせました。まあ、デリシーさんは変わらなかったのですけど(笑)
だからこそ、3話の締めで大感動したわけです。
【キャラクター雑感】
御剣信(みつるぎ しん)
第一作に登場したモブキャラな被害者・・・が、一話のみの主人公格として復活すると誰が予測できたでしょうか!
シリーズ登場キャラクターは基本的に奇抜な外見をしていますが、彼はいたって「普通」です。
そこでトレンチコートにハット帽という『アンタッチャブル』に出て来そうな衣装で登場します。
「確かに現実の日本では中々ないコーディネート。しかし、あくまでも現実にある服装で整えられている」というシリーズ特有の奇抜さと元々の彼の普通さを両立させたラインに落としているのは絶妙だと思いました。
かつての実写版映画で、当時最近作であったこの時の衣装で彼が登場した時は興奮しました(演じられたのは平岳大さん)。
誠実で物腰柔らかな落ち付いた紳士、それでいて譲れない信念もある、という理想的な人物であったと感じます。信楽さんが尊敬するのも頷けます。
基本マジメですが、所々でお茶目な部分をのぞかせるのも心憎いです。
それにしても34歳でこの貫禄とは…(^^;)
信楽盾之(18年前)
今回18年前の姿が登場します。
当時18歳、初々しいです。当時からかなりの天パでした。
メモを食べるという癖を持っていますがお腹を壊さないのでしょうか?
御剣信の助手として彼に同行しますが、実は調査パートで彼を後ろに付けて調査するシーンは一つもないという驚きのキャラでもあります。
18年の間に揉まれてあんなおじさんになったのですね。
現代の彼は本話で様々な明言を述べていました。本話はある意味、彼の「メイン回」であったのかもしれません。
天海一誠(てんかい いっせい)
本話、いや、本作、いや、本シリーズでも最大クラスの被害者というべき人物。
何も悪いことはしていないのに冤罪で18年間刑務所で生活する羽目に。たった一日の取り調べで白髪になるほどの過酷さまで経験してますし。
世界的に著名なパティシエ、「ダンスイーツ」という人気番組の歌って踊れる主役というだけでなく実は天下一グループという巨大製薬企業の御曹司でもあります。
…色々盛りすぎですね(笑)
その外見は明らかに故・松田優作氏です。その外見でパティシエというギャップが凄い!
ただ、グループの研究成果である「究極のレシピ(新薬の調合書)」をお菓子コンテストの賞品にしようというのは、そりゃグループと揉めるでしょう。
親族である経営者グループともう少し折り合いを付けられれば良かったのかもしれません。
現代の彼と出会うエンディングは涙ぐみました。
緒屋敷司(おやしき つかさ)
本話のゲストヒロインにしてミスリード要員。
話の流れは彼女に疑いがかかるように色々仕向けて来ます。
「天海一誠を罠にはめようとしたのだろうか?」と思わせておいて、本当は違う。全ては純粋に天海のことを思っての行動。ただ、16歳の彼女はことの重要さの判断を誤ったのが悲劇だったのです。
18年後、警察を信用できなくなった彼女は真犯人をあぶりだすため今回の事件を引き起こします。
それ自体は決して許されることではありませんが、「警察を信用できなくなってしまった人間」の悲劇を背負っているように思えます。本来信頼すべきものを信じられなくなる者の苦しみを感じました。
「重要な物証(氷堂の遺体)の安全を確保しつつ、当該物証を隠滅しようとする真犯人をおびき寄せる」このために彼女が取った策略については、私は「うまく考えたな」と感心しました。
ちなみに、16歳と34歳の彼女が出てくるのですが、16歳はかわいい・34歳は美しい、という感じです。
34歳ということは水鏡秤(26歳)よりも年上なわけですが…『逆転』シリーズは年齢設定がバグってませんか?(笑)
ちなみに、神宮寺三郎(32歳)よりも年上です。
デリシー・スコーン(でりしー・すこーん)
~勝つためには手段を択ばない女~等と言われた(今思えば彼女に罪を着せようとする風見の吹込みだっただけ)ので警戒したら、ペコちゃん・キューピー人形のような外見・・・騙されました(笑)
彼女も怪しい高糖度を色々とるのでミスリード要員の一人だったのですが、終わってみればただのマスコットで癒し枠でした(年齢も不祥ですし)。
同時にかなりのお騒がせキャラでもありました。
料理が全然できないパティシエ・・・実は天下一グループ勤務の薬剤師でした。彼女がすりこぎ棒で生クリームをかき混ぜる仕草はすり鉢とすりこぎ棒で薬を調合する動作と同じだというのは考えられているなぁと思いました。
あと、~みんな、私のことをデリシャスと呼んでいるわ~と言ってましたが、みんなデリシャスとは呼びませんでしたね(笑)
(テキスト欄の表記だけは確かに“デリシャス”でしたけど)
馬堂一徹(ばどう いってつ)
『検事1』より再登場。18年前の姿が拝めます。
イトノコが彼を理想の刑事に思っていた節がありましたが、本話でそれを活かしてきたのはよかったです。最後の天海の言葉にイトノコの成長を感じ取ることができました。
額のしわが一本少なかったり、髪の色が黒々しかったり、コートがボロボロでなかったりと若々しかったのが印象的でした。
そして、前回以上にお茶目でした。
彼とコンビを組んでの調査はよかったです。
IS-7号事件の後の彼と狩魔は険悪だったと思うのですが、よく第2のKG-8号事件のときに会話できましたね。
狩魔豪(かるま ごう)
数々の偽証や捏造をしていたと言われる検事。今回その一つが具体的に描かれます。
具体的に語られたため、本作で彼が嫌いになった人もいたようです。
彼は完璧主義というより「完璧ということにしておこう主義」だと思っているのですが、今回はその弊害が最悪な形で訪れました。
彼の罪は重いでしょう。
しかし、同時に面白い面も描かれていました。
~わしの妻は素人だが料理の腕は一流コックにも勝っておる~
ノロケか!!(笑)
矢張正志(やはり まさし)
今回は芸術家:天流斎マシス・バージョンで登場。
あいかわらずのトラブルメーカーですが、彼の証言があるおかげで事件が解決できるというジレンマもあるのは相変わらずでした。
彼とのロジックチェスは、何も言わずに聞いていたらそのうちボロを出して終わるというのが笑えました。
風見豊(かざみ ゆたか)
本話の犯人。
彼と氷堂のトラブルがシリーズの全ての発端でした。(どちらかというと氷堂の方がひどいかもしれません)
彼の専用BGMは風流で渋い感じなのですが、本性がわかってからは非常に禍々しい感じがして印象が大きく変わりますから凄いです。
最終的にかなりの極悪人な印象を受けプレイヤーの嫌悪感も非常に高いです。
彼の「自分のためには他の人間を犠牲にすることも躊躇わない」姿勢は当然嫌悪しますし、子供を捨てたという行為にも問題があります。
私としては、彼は「大切なものに裏切られた結果、何かが壊れた人」という印象です。とはいえ、擁護はしませんが。
彼のブレイクモーションは ~自分の菓子道を自分で終わらせる~ という意味があるそうです。いわば「切腹」のようなものです(「自業自得」の意もあるかもしれませんが)
また、美術センスを修行した結果の彼の「素晴らしい外見をしたお菓子(中身は空洞)」と緒屋敷の「形は悪いが甘さと美味しさが詰まっているチョコレート」の対比が上手いなあと感じました。
他レギュラーキャラ
以下、何人かの簡単な感想を
・一柳弓彦・
矢張からバカにされるなんて(笑)
・水鏡秤・
本話も何を狙っているのか分からないという不気味さが漂います。
その「何かを狙っているらしい」という空気が話の奥行を広げたようにも思えます。
また、御剣と敵対していますが、よく見るとヒントを与えているようでもあるのです(あと1年時効が長ければ~、等)。そもそも、風見にとどめを刺したら、特に反論することなく議論を締めてましたし。
・糸鋸圭介・
ガスマスクしたりして本話でも大活躍だった刑事。
馬堂刑事と重ね合わせられるなど着実に成長してもいます。
実は『検事2』はイトノコこそ陰の主役であった気がします。
・一条美雲・
今回はぬすみちゃんで再現することはありましたが、ぬすみちゃんで調査することはありませんでした。
たまにはこういうのもいいかと思いました。