鯨の入り江(42) | 星ねこブログ

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鯨の入り江(42)


 あのころ、綾はまだ会社勤めで、映二とも知り合っていなかった。


大阪から盆休みに帰ってみると、鉄男が海に浮かんだいかだの上で作業をしていた。
yoru


 何をしているの、とたずねると、真珠をくわえたマベ貝を引き揚げているのだという。


 建物の中では、おばさんたちが貝を割り、中から真珠玉を取り出していた。


おばさんたちのごつごつと節くれ立った手が、小気味よく動いて、つやつやした美しい


真珠を生む光景には眼を見張った。


魔法でも見ているように面白くて、
クール


見とれたのを覚えている。


「ハマチの前はそう、真珠だった。あれも好きでね、熱中したけど、何せ、


相場が難しかった、こっちは素人だし、熊本や四国の養殖真珠が勢いづいて、


競争に勝てんかった」
ぼら