鯨の入り江(41)
あの時はさすがにこたえて、首をくくろうかと思ったよ」
悠平は昼食のあと、ずっとすきっ腹だったので、
食べるのに余念がない。
その悠平にジュースのお代わりを運んできた久子が、
「内輪の暗い話なんかやめなさいよ」
小声で言い、鉄男をにらみつけた。
卓には、タイの造りが食べきれないほど盛られてあった。
ほかにもタイの酢味噌和え、サザエの焼いたの、豚
肉を分厚く切った甘辛煮など
卓狭しと並べてある。
久子が、屋敷内の畑で育てたというキュウリや、ト
マト。セロリなどの野菜をたっぷり盛り合わせた
トマトは綾の好きな野菜だ。
「ずっと前には真珠の養殖もしてたでしょ」