鯨の入り江(40)
以前は手入れの行き届いた風格ある庭だったのに、、、、、、
綾は見てならないものを見た気がして、座敷にそっと視線を戻した。
むかしのこの座敷を知っている綾には、心の痛んでならない光景ばかりだ。
一体、鉄男の代になってから、この家で何が起こったのか
村の音沙汰を聞くこともなかったが、その間に鉄男は何を始めたというのか。
「タイの養殖もやっと軌道に乗り出してね、去年あたりから順調に利益が上がってるよ」
「以前は確か、ハマチの養殖とかしてなかった?」
「うん、あれもよかったんだが、夏場に出荷前の成魚にうじが湧いて失敗した。10万匹が
ごっそり畑の肥料なんだよ。