鯨の入り江(37) | 星ねこブログ

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鯨の入り江(37)


「おばさんもお元気そうで、いつ見てもお若いですね」


 綾はあいさつしながら、鉄男の妻はどうしたのだろう、と考えている。


廊下の先の暗がりを透かし見たりした。


 見上げる天井が暗い。
食事


棟木の太さやまわり廊下のゆったりした造り、杉材を惜しげもなく使った


昔風の家は、半奴隷的なヤンチュと呼ばれる使用人を大勢抱えた豪農の名残りだった。


 村の土地はそっくり、鉄男の家をはじめ、一握りの地主が所有していて、


村人のほとんどが彼らの小作人だった。
観光

 その昔、ヤンチュたちの住む小屋が幾棟も建っていただけあって、


屋敷そのものは300坪を越す広さだ。


ヤンチュたちの小屋跡は今、野菜畑になっていた。


それでも耕しきれない地所は、雑草の繁るに任せて


いるらしい。