鯨の入り江30)
「どれどれ、博士がキョウリュウの骨でも発見したのかな」
突然のさわぎに綾が息を弾ませ、浜へ下りてみると、
二人は砂の上に戻って、何やら頬を寄せ合っている。
大きな枯れ枝かと思ったものは、よく見ると動物の骨らしい。
直径が20センチ近い大型の動物の骨だ。
その丸みを帯びた骨格の両側に、二本と一本、薄いへら状の骨が突き出ている。
突き出た先がすぐ、ぼろぼろに砕けて腐食している。
中心をなす骨の内部は空洞だった緑色の藻や海草
が生え、艶のない石灰色の表面にはしわしわにつぼ
みを閉じたイソギンチャクが付着していた。
長い間、海底の砂に眠っていたらしいことをうかが
わせる。
どの部分の骨かはしらないが、人間のそれと比べ