鯨の入り江(28)
耕地面積が島の北部地方にくらべて狭く、山が多いこと。
したがって交通の便が極端に悪いなど、理由はいろいろあった。
ひとつだけ解消しても、全部の悩みが消えるにはほど遠かった。
親方倒れりゃ、子分も倒れる道理の通り、
太陽の祝福をいっぱい詰め込んだ黄金のパイナップルが、
つるぎが勢ぞろいして風に波打っていたサトウキビ畑は、
もう村人の記憶の中でしか息づいていない。
荒れ地の先には椎や松、樫の木などの昼なお暗い山々が重なり合っていた。
それは太古の恐竜が寝そべっているような島の険しい背骨へと、
連なってゆく。
すべての物音を呑み込む風にして、
山々は太古からの沈黙を引きずっていた。