【サザンの楽曲「勝手に小説化」㉑】『お願いD.J.』(原案:桑田佳祐) | 頑張れ!法政野球部 ~法政大学野球部と東京六大学野球について語るブログ~

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法政大学野球部を中心として、東京六大学野球についての様々な事柄について、思いつくままに書いて行くブログです。
少々マニアックな事なども書くと思いますが、お暇な方は読んでやって下さい。

大学受験の季節である。

間もなく、今年(2024年)の「大学入学共通テスト」を迎えるが、受験生の皆さんは、間近に迫った試験に向けて、皆それぞれ頑張っている事と思う。

そこで、今回は、そんな受験生の皆さんにエールを込めて、大学受験をテーマにした記事を書かせて頂きたい。

…と言っても、受験生の皆さんは、こんなブログなど読んでいる暇は無いと思うので、どうか首尾よく志望校に受かった暁には、ゆっくりと読んで頂ければ幸い(?)である。

 

 

さて、私はこのブログで、私が大好きなサザンオールスターズの楽曲の歌詞を元にした「短編小説」を書くという、

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」を、今まで「20本」書いて来た。

という事で、その「20本」は下記の通りである。

 

①『死体置場でロマンスを』(1985)

②『メリケン情緒は涙のカラー』(1984)

③『マチルダBABY』(1983)

④『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)』(1982)

⑤『私はピアノ』(1980)

⑥『夢に消えたジュリア』(2004)

⑦『栞(しおり)のテーマ』(1981)

⑧『そんなヒロシに騙されて』(1983)

⑨『真夜中のダンディー』(1993)

⑩『彩 ~Aja~』(2004)

⑪『PLASTIC SUPER STAR』(1982)

⑫『流れる雲を追いかけて』(1982)(※【4部作ー①】)

⑬『かしの樹の下で』(1983)(※【4部作ー②】)

⑭『孤独の太陽』(1994)(※【4部作ー③】)

⑮『JOURNEY』(1994)(※【4部作ー④】)

⑯『通りゃんせ』(2000)(※【3部作ー①】)

⑰『愛の言霊 ~Spiritual Message』(1996)(※【3部作ー②】)

⑱『鎌倉物語』(1985)(※【3部作ー③】)

⑲『夕陽に別れを告げて』(1985)

⑳『OH!!SUMMER QUEEN ~夏の女王様~』(2008)

 

 

 

…という事であるが、今回は、

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」

「新作」として、ある受験生を主人公とした物語を書かせて頂きたい。

そして、その物語の題材として選んだのが、

1979(昭和54)年4月5日にリリースされた、サザンオールスターズの2枚目のアルバム、

『TENナンバーズ・からっと』

に収録されていた、

『お願いD.J.』

という曲である。

この曲は、『TENナンバーズ・からっと』の1曲目であり、アルバムの冒頭を飾っている曲であるが、私もとても大好きな曲である。

という事で、前置きはそれぐらいにして、「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」の「第21弾」、『お願いD.J.』(原案:桑田佳祐)を、ご覧頂こう。

 

<第1章・『ブルースへようこそ』>

 

 

「学校って、何でこんなにつまらないんだろう…」

私は、いつもそんな事ばかり思っていた。

私は今、ある女子高に通っている。

でも、ハッキリ言って学校生活は全然面白いとは思えなかった。

一応、この学校に入ったばかりの頃は、私なりに色々と希望に胸を膨らませてはいたのだけれど、すぐにそれは幻滅に変わった。

「この学校の雰囲気、全然、私に合ってない…」

私はすぐに、その事に気付いてしまった。

私が通っている学校は、所謂「ミッション系」の学校だけど、学校のレベルとしては、

「まあ、そこそこのレベル」

といった所だった。

だから、この学校に入った子達も、

「まあ、それなり」

といったレベル…と、私は思っていた。

で、私のクラスといえば、とてもお洒落で華やかで、私が勝手に「お姫様グループ」と名付けていた、「カースト上位」(※とてもキライな言葉だけど、敢えて使わせてもらう)の子達も居れば、不良っぽい子達のグループも居たし、平凡で地味な子達のグループも有った。

要するに、女子高では「ありがち」だと思うけど、クラスの子達は、みんな何処かのグループに属して、自分の「居場所」を確保していた。

え?そういう私はどうなのかって?

私は、ハッキリ言って、どのグループも肌が合わないというか、

「グループなんて、バカみたいでくだらない!!」

って思ってたから、何処のグループにも入ってなかった。

だから、私ってクラスでも浮いてたんじゃないかな…と思う。

とにかく、私は学校に行くのが憂鬱で憂鬱でたまらなかった。

だって、全然面白くないんだもんね…。

 

<第2章・『ラチエン通りのシスター』>

 

 

さて、こんな私にも、1人、とても仲が良い子が居た。

私の地元は、神奈川県の茅ヶ崎だけど、その茅ヶ崎に、

「ラチエン通り」

と、地元では呼ばれている通りが有る。

その「ラチエン通り」に住んでて、私の小さい頃から、まるで姉妹みたいに仲が良かった子と、同じ女子高に通う事が出来た。

「祐子と、また同じ学校に通えるなんて、嬉しいよ!!」

って、その子は言ってくれた。

私の数少ない…いや、たった1人の大親友って言って良いと思うけど、その子…佳子は、本当に性格が良い子だった。

佳子は、私と同じく、クラスでは何処の「グループ」にも入ってなかったけど、孤立気味の私と違って、いつもニコニコして、とても穏やかな性格の佳子は、誰とでも分け隔てなく、仲良く出来る子だった。

「私も、佳子みたいになれたら良いのに…」

実は私も、心の中ではそんな風に思っていたけれど、どうしてもそれが出来なかった。

私、本当はみんなと仲良くしたいと思ってるのに、人と接する時って、無意識に壁を作ってしまう。

だから、変に構えちゃって、結局は1人で過ごしてしまう…。

私は、そんな自分が本当にキライだった。

でも、佳子はいつも、そんな私に寄り添ってくれていた。

「私なんかと一緒に居ても、つまらないでしょ?他の子と一緒に居た方が楽しいんじゃない?」

ある日、私はつい、そんな事を佳子に言ってしまったが、その時、佳子はとても悲しい顔をしていた。

「祐子、二度とそんな事は言わないで…」

佳子はそう言っていた。

佳子の、あんなに悲しそうな顔は、見た事が無かった。

だから、私はもう二度と、そういう事は言わないようにしようと心に誓った。

私は、一人っ子だったけれど、佳子は私にとってお姉さんのようでもあり、本当の姉妹みたいな存在だった。

 

<第3章・『気分しだいで責めないで』>

 

 

私には、佳子という大親友が居たから、佳子のお陰で、何とか学校に通えていたけど、

それでも、段々と本当に学校がキライになってしまった。

そして、朝起きて学校に行こうとしても、急に頭が痛くなったり、お腹が痛くなったりして、身体が拒否反応を起こすようにしまった。

「私、今日は学校休む…」

その度に、私はお母さんにそう伝えて、布団を被って、また寝てしまった。

その度に、お母さんは困った顔をしていた。

そういう事が暫く続いた後、とうとう、お母さんがたまりかねて、私に、

「ねえ、祐子。何か悩みが有るの?悩みが有るなら、言ってちょうだい?」

と、言って来た。

その時、私はベッドの上に寝転がって、漫画を読んでいた。

「別に、悩みなんか無いよ…」

私は、漫画を読みながら、お母さんに生返事をした。

「だったら、何で学校に行きたくないの?お母さん、祐子が心配なのよ…」

お母さんは、本当に心配そうな表情だった。

でも、その時の私は、気分がささくれ立っていた。

「うるさいなあ、行きたくないものは行きたくないんだよ!!」

と、お母さんに怒鳴ってしまった。

そして、私は更に、

「私、全然可愛くないし、性格も悪いし、何の取り柄も無いもん。私なんか、学校に行っても居場所なんか無いんだよ!!お母さんには、私も気持ちなんか、わからないよ!!」

と、溜まりに溜まっていた鬱憤を全て、お母さんにぶつけてしまった。

「そう…。わかったわ…」

お母さんは、泣きそうになっていた。

そして、お母さんは私の部屋から出て行ったけど、その時のお母さんの背中は小刻みに震えていた…。

本当に、私って最悪だ。

お母さんを責めたって、仕方ないのに…。

私は、ますます自己嫌悪に陥っていた。

「誰か、私を助けて…」

その時の私は、そんな、気持ちだった。

 

<第4章・『アブダ・カ・ダブラ(TYPE1)』>

 

 

「祐子、居る??」

私がお母さんと大喧嘩してしまった日から、暫く経った頃、大親友・佳子が、ウチに訪ねて来てくれた。

私は暫く学校を休んでいたし、きっと酷い顔をしてたと思うけど、佳子はそんな私を見ても、以前とちっとも変わらず、ニコニコして、私と普通に接してくれた。

私にとって、それはとても嬉しかった。

私は、佳子を部屋に招き入れ、2人で色々と他愛もない話をしていたが、人との会話に飢えていた私は、それだけで、とても救われる思いだった。

そして、話がちょっと途切れた所で、佳子は、おもむろに1枚のCDを取り出した。

「ねえ、祐子。すっごい良いバンドが出て来たんだ!ちょっと一緒に聴かない?」

佳子が持って来たCDを、私も覗き込んだ。

「へー、最近出て来たバンドなの?」

私が聞くと、佳子は、

「そう。ベターデイズっていうバンドなんだけどね、すっごい良い曲を歌ってるんだよ!それでね、ボーカルは女の子で、他のメンバーは男の子なんだけど、ボーカルは、貴方と同じで、ユウコって名前なんだよ」

と言って、悪戯っぽく笑っていた。

「へー、そうなんだ!!」

自分と同じ名前の女の子がボーカルと聞いて、私はその「ベターデイズ」とかいうバンドに、興味を持った。

「それじゃあ、早速、聴いてみようか?」

こうして、私の部屋のCDプレーヤーで、私と佳子は、一緒に「ベターデイズ」の曲のCDを聴いた。

そして、その時の衝撃と言ったら…。

「まるで、雷に打たれたような衝撃を受けた」

っていう表現が有るけど、その時の私の気持ちも、まさにそんな感じだった。

「凄い…」

私は、本当にビックリしていた。

それは、私の想像の遥か上を行く素晴らしさであり、私はまるで「魔法」にかけられたようになっていた。

「佳子、凄いよ、このバンド!!」

私は、それまで、音楽にはあまり興味は無かったが、「ベターデイズ」の音楽には、一遍でノックアウトされてしまった。

「ね!!凄いでしょ!?」

佳子も、とても得意気だった。

「祐子、このCD貸してあげるから、よく聴き込んでおいてね!!」

佳子はそう言って、私に「ベターデイズ」のCDを貸してくれた後、帰って行ったけど、それから私は、それこそ何百回、何千回(※ちょっと大袈裟かな!?)と、「ベターデイズ」のCDを聴き込んだ。

そして…すっかり「ベターデイズ」に惚れ込んでしまった。

 

<第5章・『お願いD.J.』>

 

 

それからの私は、物凄い勢いで、「ベターデイズ」にハマって行った。

そして、自分なりに色々と「ベターデイズ」について調べて行く内に、

「ベターデイズ」は、元々、青山学院大学の学生バンドとして結成され、その後、ユウコという女性ボーカルが入った事をキッカケに人気が急上昇し、やがてデビューするに至った…という経緯も知った。

「ユウコのボーカルも素敵だけど…。やっぱり、バンドリーダーの『彼』が作る音楽が素敵だよね…」

私はそう思っていたけど、この「ベターデイズ」というバンドは、歌っているのはボーカルのユウコだけど、曲を作っているのは、バンドリーダーで、ピアノやギターなどを弾いている「彼」であるという事を知った。

「ベターデイズ」の中で、「彼」は常に全体を俯瞰している位置にいるようだが、「彼」がこのバンドの核なんじゃないかな…と私は思っていた。

そして、私が「ベターデイズ」にハマって少し経った頃、耳寄りな情報が有った。

何と、「ベターデイズ」のバンドリーダーである「彼」が、ラジオの「DJ」を務めるという。

その情報を教えてくれたのは、佳子だった。

「ねえねえ、ベターデイズの『彼』が、深夜ラジオのDJをやるんだって!!時間は土曜日の夜だから、祐子も聴いてみて!!」

佳子から電話でそう教えてもらった時は、ビックリしたのと同時に、とても嬉しかった。

そして、待ちに待った第1回の放送の日…。

「皆さん、こんばんは!!こんな遅くに聴いてくれて有り難う…」

という、「彼」の声がラジオから聴こえて来た時は、心臓がバクバクしてしまった。

「『彼』の声って、こんなに素敵なのね…」

普段、「ベターデイズ」では、ボーカルはユウコだから、「彼」は歌わない。

でも、こうしてラジオで「彼」の声を聞いてみると、色っぽいというか、セクシーというか…とにかく、とても素敵な声だなと思った。

そして、私がもっと素敵だなと思ったのは、彼の「人柄」だった。

「彼」は、全然飾らないというか、とても気さくな感じで、等身大のトークをしていた。

「何だか、友達が側に居るみたい…」

私は、そんな気がしていた。

「それじゃあ、今夜も朝5時まで、ヨロシク!!」

「彼」はそう言っていたが、このラジオは、朝5時まで続くとの事だった。

でも、流石に一晩中は聞いていられないので、私は途中で「寝落ち」してしまった。

だが、私は夢の中でも「彼」の声を聞くほどに、「彼」の声がすっかり好きになっていた。

 

<第6章・『いとしのエリー』>

 

 

それから、毎週土曜日の深夜、私は「彼」のラジオを聴くようになっていた。

そのラジオ番組は、「彼」がリスナーからのハガキを読んだり、時にはリスナーの「恋愛相談」に乗ったりしながら、進行して行ったが、そんなトークの合間にも、

「それじゃあ、ここで1曲聴いて下さい…」

と、「彼」は絶妙なタイミングで、音楽をかけてくれる。

「彼」の音楽の知識は本当に凄く、古今東西、あらゆるジャンルの曲に詳しかったが、

「世の中には、こんなに沢山の素晴らしい音楽が有るのね…」

という事を、私は「彼」から教えてもらっていた。

そして、ある回の放送で、「彼」はこんな話をしていた。

「僕には、凄いコンプレックスが有って…」

「彼」がそう言った時、

「こんな音楽の天才にも、コンプレックスって有るんだ!?」

と、私はちょっと驚いてしまった。

「彼」は、こんな話をしていた。

「実は、僕は歌うのが苦手で…。最初は、『ベターデイズ』で僕はボーカルをやってたけど、僕の歌はどうにもダメでね。どうしようかと思ってた時、タカシが、友達のユウコという子を連れて来たんだ…」

「彼」によると、元々は、「ベターデイズ」のギタリスト・タカシのバイト先の同僚でもあり、タカシの友達だったユウコを、タカシが連れて来て、そのユウコが、「ベターデイズ」のボーカルになってくれた…との事だった。

「それからなんだよね、『ベターデイズ』が軌道に乗ったのは…」

「彼」は、このバンドにとって、ユウコの存在が如何に大きかったのかを、率直に語っていた。

「そうだったんだ…。何か、凄い出逢いだね…」

私は、「彼」の話に、すっかり惹き込まれていた。

「そして、『ベターデイズ』がデビューするキッカケになったのは、タカシだった。タカシが、プロを目指そうって言い出したんだ。最初、僕はその気は無かったけどね…」

この話も、私には初耳だ。

更に、私は「彼」の話に聞き入った。

「それで、プロを目指すかどうかで喧嘩してしまい、一時、バンドは険悪な雰囲気になった。でも、僕にとって、やっぱり『ベターデイズ』は大切な仲間だったから、僕からメンバー達に謝ったんだよ…。またバンドを一緒にやろうってね」

「彼」は、そういう話をしていた。

「だから、これを聴いてくれてるみんなも、それぞれ大切な人が居ると思うけど、そういう人と、もし、何かのキッカケで喧嘩しちゃったりした時は…。仲直りしたいって、自分から歩み寄ってみたらどうかな?」

「彼」の、その言葉を聞いて、私はハッとした。

「そうか、そうだよね…」

あの日、お母さんと喧嘩してしまって以来、私は、お母さんとは殆んど口も利かなくなってしまっていた。

私は、「彼」の話を聞いて、すぐにお母さんの事が頭に思い浮かんでいた。

その次の日の事。

私は、勇気を振り絞って、お母さんが居る台所に行って、

「お母さん、この間は、ごめんね…」

と、やっと一言、お母さんに伝えた。

「いいのよ」

お母さんはニッコリ笑って、私を許してくれた。

私は、胸のつかえが取れた気がして、本当にホッとしていた。

「有り難う…」

私は、お母さんにそう言ったけど、大切な事を教えてくれた「彼」にも、そう伝えたい気持ちだった。

余談だけど、私のお母さんの名前は「恵理」っていうんだけど、私は本当はお母さんが大好きだから、心の中で、

「いとしのエリー」

って、お母さんの事を呼んでる。

…これは、誰にも内緒の話だけどね。

 

<第7章・『思い過ごしも恋のうち』>

 

 

私は、「彼」には本当に感謝している。

何故かといえば、私は「ベターデイズ」の音楽を聴いたり、「彼」がDJを務めるラジオ番組を聴いたりしている内に、少しずつ「前向き」になっていたから。

だから、私は「彼」のお陰で、闇の世界から抜け出す事が出来たって、心から「彼」には感謝の気持ちで一杯だった。

勿論、「ベターデイズ」の素晴らしさを教えてくれた、佳子にもね。

そして、私は、暫く休んでいた学校にも、また行けるようになった。

「祐子、元気そうだね!!」

「お帰り!!」

私が久し振りに学校に行った時、クラスメイト達が、私に駆け寄って来て、次々に私に声を掛けてくれた。

みんな、私の事を心配してくれていたようだ。

私の方が、勝手にみんなに対して壁を作っていたのに…。

「うん、大丈夫。心配かけてごめんね…」

私は、照れ笑いを浮かべていたけど、本当は嬉しくて、泣きそうになっていた。

こんな私の事を受け入れてくれるなんて…。

そして、そんな私の様子を、ちょっと離れた所から見ていた佳子は、とても嬉しそうな様子だった。

こうして、学校に復帰した私は、少しずつだけど、クラスメイト達とも話せるようになって行った。

私はようやく、自分なりに学校生活を楽しめるようになっていた。

だが、その頃、私はちょっと困った事になってしまっていた。

あの「ベターデイズ」「彼」に、私はすっかり、のぼせ上がってしまい、

「骨の髄までメロメロ」

って感じになってしまったのである。

それまで、男の子の事を、そんなに好きになった事も無かったのに、遠い世界の「彼」に、私は「恋」をしてしまっていた。

私は、それ以前よりは、ちょっとは前向きになって、学校生活も送る事が出来るようになっていたが、

「私、将来、どうなっちゃんだろう…」

とか、自分の将来の事に悩んだりして、落ち込んだりする事も、よく有った。

でも、そんな時に、「ベターデイズ」の音楽を聴いたり、ラジオで「彼」のトークを聴いたりするだけで、とても元気を貰えるようになっていた。

そして、いつしか、私は本当に「彼」に夢中になってしまったのだった。

「会えるわけでもないのにね…」

私は、自分でもそれがわかっていたけど、自分でもどうしようもないぐらい、「彼」に狂ってしまったのだった。

そうこうしている内に、私は高校3年生になった。

 

<第8章・『アブダ・カ・ダブラ(TYPE2)』>

 

 

「何事も、目標を持って取り組むっていうのは、とても大切だと思うんだよね…」

私が高校3年生になって、間もなくした頃、「彼」がラジオで、そんな話をしていた。

「最初、僕はただの音楽好きだったけど、大学に入ってバンド仲間と出逢い、そして、デビューする事になったわけだけど…。目の前に、何か目標が有った方が、人は頑張れると思うんだよ」

「彼」は、自分の体験に基づいて、リスナーに語り掛けていた。

「バンドのためにって思うと、どんどん曲が作れるようになって行ったり、次のライブは、もっと良いライブにしようとか、そういう目標を設定して、それを一つ一つクリアする事によって、『ベターデイズ』は成長出来たって気がするんだよね」

私は、「彼」の言葉を聞いて、ハッとしていた。

「みんなも、何か目標を持って過ごすと、良いと思うよ!!目標は何でも良いと思うけどね」

私は、「彼」の言葉を聞き、

「そうか、目標を立てる事が大切なのか…」

と、その言葉を噛み締めていた。

そして、物の見事に「彼」に影響された私は、その勢い(?)で、お母さんに、こう宣言していた。

「お母さん、私、頑張って受験勉強して、青山学院大学に行きたい!!」

いきなり、私にそう言われたお母さんは、目を丸くしてビックリしていた。

だが、お母さんは、

「そう。貴方が決めた事なら、お母さんも応援するわ」

と、言ってくれた。

ちなみに、何故、青山学院大学に行きたいと、私が思ったのかと言えば、勿論、「ベターデイズ」の後輩になりたいと思ったからである。

本当に、単純な私…。

でも、キッカケなんて、何でも良いと思う!!

とにかく、私はまたしても「彼」「魔法」にかけられてしまった。

 

<第9章・『奥歯を食いしばれ』>

 

 

「青山学院大学か…。今の君の学力だと、厳しいんじゃないかなあ…」

進路相談の時、私は、クラスの担任の先生に、ハッキリとそう言われてしまった。

それは無理もない。

私は、それまでの高校生活を、本当に無為に過ごしてしまっていたし、ロクに勉強もしていなかったのだから…。

だから、私が、

「青山学院大学に行きたい」

と言ったのは、先生にしてみたら、とても無謀に思えただろう。

「でも、どうしても行きたいんです!!」

私は、先生にもキッパリと宣言してしまった。

「そうか…。でも、そのためには、相当勉強しないと厳しいぞ。わかってるな?」

先生に釘を刺されてしまったが、私は頷いた。

それからというもの、私は、それまでの遅れを取り戻すために、必死に勉強した。

親友の佳子は、優等生だったが、私の勉強を見てくれたりして、私をサポートしてくれた。

「私、祐子を『ベターデイズ』の世界に引き込んだ責任が有るからね…」

佳子は、そう言って、ちょっと苦笑いしていたが、私の勉強に付き合ってくれたのは、とても有り難かった。

私は、好きな漫画も読まず、テレビも一切見ず、

「奥歯を食いしばって」

ひたすら、受験勉強をしていた。

そんな私の唯一の息抜きは、勿論、「ベターデイズ」の音楽と、「彼」がDJを務める深夜ラジオだった。

受験勉強は、孤独に耐えなければならなかったが、「ベターデイズ」「彼」は、いつも私に寄り添ってくれている…と、私は思っていた。

そして、そんな勉強の甲斐が有ったのか、私の成績はグングンと伸びて行った。

「これなら、青山学院も狙えるぞ!!」

担任の先生も、私を応援してくれるようになっていた。

そして、いよいよ、決戦の時がやって来た…。

 

<終章・『Let It Boogie』>

 

 

「そろそろ、大学受験の季節になって来たね…」

遂に、青山学院大学の入学試験の日を翌日に控えていた、土曜日の深夜。

私は、私にとって、ずっと心の支えだった「彼」の深夜ラジオを聴いていた。

「受験生の人も、聴いてくれてるのかな?僕も大学受験は経験して来たから、受験生の不安な気持ちはわかるよ…」

私は、そんな「彼」の言葉に、耳を傾けていた。

「ところで、『ベターデイズ』のライブの前って、いつも、とても緊張するんだけど、緊張するのって、当たり前なんだよね。それだけ、本気でステージに懸けてるわけだし…。でも、本番で、少しでも緊張を和らげるためには、とにかく、これ以上はやりようが無いっていうぐらい、沢山練習する事!!それに尽きると思うんだよね…」

私は、「ふむふむ」といった調子で、「彼」の言葉に聴き入っていた。

「受験も、それと同じでね。これ以上、やりようが無いっていうぐらい勉強すれば、後はもう、本番は自分の実力を出すだけだからさ。そう考えると、受験もライブも、同じだよね!!」

やっぱり、「彼」はとても良い事を言う…。

私は、すっかり感心していた。

「だから、これまで勉強して来たみんな、本番は精一杯、自分の実力を出せるよう、頑張って下さい!!」

そう言って、「彼」は私達、受験生を励ましてくれた。

「よーし、やってやるぞ!!」

私の中で、改めて闘志が燃え上がっていた。

思えば、「ベターデイズ」「彼」のお陰で、私はここまでやって来れたのだ。

「そんな私が、青山学院に入れない筈が無い!!」

私は気合いを入れていた。

きっと、「ベターデイズ」のメンバー達も、ライブ前はこんな気持ちなのだろう…。

「お母さん、佳子、有り難うね…」

私は、大好きなお母さんと佳子にも、心の中でお礼を述べた。

こうして私は、明日の「決戦」に備えていた…。

 

 

 

『お願いD.J.』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

①たまんないね 真夜中のしじまのところ

色っぺえね その声に身を寄せそうろう

やみによりそう心 D.J. Oh! Yeah

You Got it? あたしゃ Groovy

あなたも冗談 よろしゅうね

 

Oh! Mr. D.J. 今宵5時まで離しませんわ

Oh! Mr. D.J. ほれたはれたの話の合間に

Music Music Music all night!!

 

いっさいがっさい あなたに見とれて

骨の髄までメロメロよ

だけど分かってまっせ D.J.

祈ってまっせ D.J.

狂ってまっせ あんたのすべてが

Music Music Music

(愛して恋して骨までサイサイ)

 

②気持ちがさめざめとしたなら Radio ON

言葉が尽きた夜は いつしか Turn ON

夢を見たけりゃ いつも D.J. Oh, Yeah!

You Got it? 好きよdarlin'

忘れやらぬ人よ

 

③つまんないわ 願わくば夢のせ

Don't let Me Down

あなたに思いはせ 恋に tallin'

しゃべることしかできぬ D.J. Oh yeah

You Got it? それでよいよい

胸ときめかせましょう