【サザンの楽曲「勝手に小説化」㉒】『恋するレスポール』(原案:桑田佳祐) | 頑張れ!法政野球部 ~法政大学野球部と東京六大学野球について語るブログ~

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法政大学野球部を中心として、東京六大学野球についての様々な事柄について、思いつくままに書いて行くブログです。
少々マニアックな事なども書くと思いますが、お暇な方は読んでやって下さい。

私が大好きな、サザンオールスターズの楽曲の歌詞を題材にして、私が「短編小説」を書くという、

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」

は、これまで「21本」の「短編小説」を書いて来た。

サザンの歌詞を元にして、小説を書くという試みは、やってみると非常に難しいが、それと同時に、私自身が楽しんで取り組んでいる。

 

 

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」

で、私がこれまでに書いて来た「短編小説」は、下記の「21本」である。

 

①『死体置場でロマンスを』(1985)

②『メリケン情緒は涙のカラー』(1984)

③『マチルダBABY』(1983)

④『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)』(1982)

⑤『私はピアノ』(1980)

⑥『夢に消えたジュリア』(2004)

⑦『栞(しおり)のテーマ』(1981)

⑧『そんなヒロシに騙されて』(1983)

⑨『真夜中のダンディー』(1993)

⑩『彩 ~Aja~』(2004)

⑪『PLASTIC SUPER STAR』(1982)

⑫『流れる雲を追いかけて』(1982)(※【4部作ー①】)

⑬『かしの樹の下で』(1983)(※【4部作ー②】)

⑭『孤独の太陽』(1994)(※【4部作ー③】)

⑮『JOURNEY』(1994)(※【4部作ー④】)

⑯『通りゃんせ』(2000)(※【3部作ー①】)

⑰『愛の言霊 ~Spiritual Message』(1996)(※【3部作ー②】)

⑱『鎌倉物語』(1985)(※【3部作ー③】)

⑲『夕陽に別れを告げて』(1985)

⑳『OH!!SUMMER QUEEN ~夏の女王様~』(2008)

㉑『お願いD.J.』(1979)

 

 

…という事で、今回は、

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」

の「新作」を書かせて頂くが、今回、私が題材として選んだのは、

2005(平成17)年にリリースされた、サザンオールスターズのアルバム、

『キラーストリート』

に収録されている、

『恋するレスポール』

という楽曲である。

この曲は、桑田佳祐が、1960~1970年代に活躍した、偉大な洋楽のミュージシャン達へのリスペクトを込めた曲であり、骨太のバンド・サウンドがとてもカッコイイ曲である。

 

 

ところで、

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」

では、サザンオールスターズをモデルにした架空のバンド、

「ベターデイズ」

の物語を、いくつか書いているが、本物のサザンと同様、

「ベターデイズ」

も、青山学院大学で結成された学生バンドである。

そして、天才作曲家であるバンドリーダーの男が中心となって結成された学生バンドに、

ある日、スーパーボーカル・ユウコが加わり、このバンドの快進撃が始まった…というような話を書いて来た。

そして、元々は学生バンドだった筈の「ベターデイズ」が、前回の記事で、私が書いた、

『お願いD.J.』

で、いつの間にか、プロデビューしていた…という事になっており、

「ベターデイズが、いつの間にプロデビューしたのか?」

…と思われた方も居るかもしれない(?)。

という事で、今回は、

「ベターデイズとユウコの物語」

「続編」であり、「ベターデイズ」が、どのようにしてプロデビューして行ったのか…という、その軌跡を書く。

そして、この物語の中心となるのが、「ベターデイズ」のギタリスト、タカシである。

それでは、前置きはそれぐらいにして、「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」の「第22弾」、

『恋するレスポール』(原案:桑田佳祐)

を、ご覧頂こう。

 

<第1章・『真夜中のギター・ボーイ』>

 

 

俺は、自分の事をとても幸運な男だと思っている。

それは何故かと言えば、俺は人生の節目節目で、とても「出逢い」に恵まれて来たからだ。

まず、俺にとって重要な「出逢い」とは何かと言えば、それは何と言っても、

「ギター」

という楽器に出逢った事だろう。

子供の頃は、近所の友達と走り回って遊ぶのが大好きだった「悪ガキ」だった俺だが、ある時、俺は突然、音楽の魅力に取り憑かれてしまった。

俺には、「夏」という名前の、4歳年上の姉が居るが、俺が音楽を好きになったのは、この姉の影響だった。

姉は、自分では楽器は弾けないが、とにかく、やたらと音楽に詳しかった。

しかも、姉は洋楽志向で、姉は思春期を迎えた頃から、洋楽にのめり込んでいた。

姉は、自分の部屋で、大音量で洋楽を聴きまくるような人だったが(※近所迷惑だ!!)、その内、

「タカシ、あんたも聴いてみな」

と言って、自分が気に入った曲を俺にも聴かせるようになった。

最初の内は、

「自分の趣味を、俺に押し付けるなよ…」

と、俺は思っていた。

だが、俺が中学1年の頃、俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。

それは、あの伝説のミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスの、

『Hey Joe』

という曲を聴いた時だった。

その時、俺はこの曲を聴いて、

「何て、カッコいい曲なんだ…」

と思い、一遍にシビレてしまった。

何と言うか、ジミ・ヘンドリックスが弾くギターの音色は、まるで、

「ギターが歌っている」

ように、俺には聴こえた。

「俺も、こんな風にギターが弾けるようになりたい!!」

俺は、思い込んだら一直線(?)の所が有るが、この時、俺はもう既に、そんな気持ちになっていた。

 

 

当時、俺の家には、親父が昔、弾いていたが、今ではすっかり弾かなくなっていた、古いフォーク・ギターが有った。

俺は、そのギターを押し入れから引っ張り出した。

そして、コードの押さえ方もよくわからないまま、とにかくギターを弾いてみた。

勿論、その時はメチャクチャな音色にしかならなかったが、とにかく、

「ギターを弾く」

という事そのものが、俺にとって、楽しくて仕方なかった。

それからというもの、俺は全くの「自己流」で(※簡単な「教則本」は読んだが)、姉が所有していた、沢山の洋楽のCDを聴きながら、見よう見真似で、とにかくギターの練習に明け暮れた。

「明け暮れた」

というのは、比喩でも何でもなく、俺は毎日、夜遅くまでギターの練習をするようになっていた。

何の事はない、「洋楽狂い」だった姉に続いて、俺も立派な「近所迷惑」の元凶になってしまった…。

「あんた、才能有るかもね」

姉は、身内の贔屓目(?)も有ったかもしれないが、俺が弾くギターの事を褒めてくれた。

俺にとって、ギターの先生というのは、姉が持っていた、偉大なミュージシャン達のCDだった。

「とにかく、カッコ良くギターを弾きたい!!」

その時の俺が思っていたのは、その事だけだった。

中学~高校にかけて、俺はとにかくギターばかりを弾いて過ごしていたが、その当時の俺の憧れの楽器だったのが、

「レスポール」

というエレキギターだった。

とにかく、見た目もカッコイイし、

「いつか、俺もレスポールを弾いてみたい」

と、俺は熱望していた。

 

<第2章・『突然炎のように』>

 

 

さて、今までの経緯を見て、俺の事を、

「ギター狂いのアホ学生」

と思った人が居るかもしれないが(?)、そう思ったのであれば、それは早合点だ。

自分で言うのも何だが、俺は結構勉強も頑張っていた。

何故なら、それも姉の影響だった。

俺の姉は、とにかく超優秀で、中でも英語が抜群に出来た。

「私は、英語を身に着けて、外国のミュージシャンにインタビューしたいのよ」

姉は、そういう明確な目標を持っていた事もあって、とにかく英語は沢山勉強していた。

そして、超優秀な姉は、東京外国語大学に進んだが、何と、姉は大学に在学中から、

「NATSU」

というペンネームを名乗り、音楽ライターまがいの事をして、音楽雑誌に記事を書くようになっていた。

「姉ちゃん、すげーな…」

俺は、ひたすら感心するしか無かったが、そんな姉の影響もあり、俺も勉強はしっかりとするようになっていた。

そして、勉強した甲斐もあり、俺は青山学院大学に受かり、晴れて青山学院に入る事になった。

ちなみに、何で俺が青山学院に入ったのかといえば、

「青山学院は、音楽サークルが盛んだから、タカシも目指してみたら良いよ」

という、姉からの情報が有ったからでもある。

こうして、青山学院に入った俺だが、入学して間もなく、とても素晴らしい「出逢い」が待っていた。

 

 

「お前のギター、カッコいいな!!」

そうやって、俺に声を掛けて来たのは、同じ青山学院の新入生だった「あいつ」だった。

青山学院に入ると、姉が言っていた通り、青山学院はとても音楽サークルが盛んで、キャンパスでは、いつも何処かで音楽の音色が響いていたが、俺は、

「このサークル、何か面白そうだな」

と、直感的に思った、あるサークルに入っていた。

そのサークルで、同じ新入生だった「あいつ」が、俺に声を掛けて来たのだった。

「そうだろ?このギター、俺がバイトして、やっと貯めたお金で買ったギターだから…」

その時、俺はアルバイトをして、コツコツと貯めたお金で、遂に、

「レスポール」

のギターを手に入れていた。

俺にとって、大切な「相棒」を手に入れた気分だったが、俺はこの「レスポール」を、いつも肌身離さず持っていた。

「本当に、カッコいいギターだよな…」

俺は、自分の愛用のギターを褒めてくれたのが、素直に嬉しかった。

「いや、そのギターもカッコイイけど、俺が言ってるのは、お前が弾くギターの音色がカッコイイって事だよ…」

「あいつ」に、そう言われて、俺はビックリしてしまった。

「そ、そうか?俺のギターの腕前なんて、まだまだだろ…」

俺は、どきまぎしてしまった。

それまで、確かに俺の姉からは、俺のギターの演奏は褒めてもらっていたが、中学・高校の頃は、人前で演奏する事もなく、俺はひたすら1人でギターを練習していた。

だから、身内以外から、ギターの腕前を褒められた事など、当然無かった。

しかし、入ったばかりの音楽サークルの部室の片隅で、俺が1人で弾いていたギターの演奏を、どうやら「あいつ」は聴いていたらしい。

そして、「あいつ」は、

「いや。お前のギター、凄いよ!!俺、感心しちゃったよ」

と、褒めてくれていた。

「そうか、有り難う…」

何だか照れ臭かったが、ここは一応、素直に礼を言っておいた。

「なあ、タカシ。一緒にセッションしようぜ!!」

「あいつ」は、そう言って来たが、俺にも異存は無かった。

 

 

そして、俺と「あいつ」は、初めて一緒にセッションをしたが、俺は本当にビックリしてしまった。

「あいつ」は、ギターもピアノも弾きこなすのだが、「あいつ」は本当にセンス抜群だった。

「あいつ」は、どんなに難しい曲でも、楽々と弾きこなしてしまうし、何よりも、古今東西、沢山の曲を知っていた。

「す、凄い…」

世の中には、こんなに凄い奴が居るのかと、俺は本当に衝撃を受けた。

それは、中学の時に、あのジミ・ヘンドリックスの音楽と出逢って以来の衝撃だった。

「なあ、一緒にバンドやろうぜ!!」

俺は、思わず、そんな事を言っていたが、

「俺も、そう言いたかったんだよ」

と言って、「あいつ」も笑っていた。

こうして、俺達は忽ち、意気投合したが、それから「あいつ」は、同じ音楽サークルの新入生だった、ベースのカズユキ、ドラムのヒロシにも声を掛け、メンバーを集めた。

カズユキは、とにかく大人しくて無口だが、ベースの腕前はピカイチだった。

ヒロシは、見た目は優男(やさおとこ)風であり、噂によると、とても女にモテるらしいが、一度(ひとたび)ドラムを叩かせると、とても男らしく、迫力が有るリズムを刻んでいた。

こうして、俺は本当に幸運にも、最高のバンド仲間達と出逢う事が出来た。

「まさか、こんな事になるとは思ってなかったな…」

それは、ちょっと前までは思ってもみない事だった。

人生は、本当に何が起こるか、わからない。

だが、この後、更なる奇跡の「出逢い」が有った。

 

<第3章・『猫』>

 

 

俺と「あいつ」が出逢い、そして、バンド活動を始めた後、

俺は「あいつ」に対し、

「いつか、ライブハウスで演奏しよう」

という事を提案した。

「あいつ」は、とにかく、仲間達と一緒に楽しく演奏出来れば良いというタイプだったようだが、俺は、

「どうせ音楽をやるなら、何か目標を持った方が良い」

と思っていたから、

「お客さんの前で演奏する」

という事を目標にすれば、俺達のバンドのレベルも向上するのではないか…と思っていた。

勿論、俺も仲間達と楽しく演奏する事は大好きだったが、

「こんなに最高のメンバーが揃ったんだから、もっと高みを目指した方が良いんじゃないか」

と、思うようになっていた。

そして、「あいつ」も、カズユキもヒロシも、俺の提案には賛成だった。

こうして、俺達はライブハウスでの演奏を目標に、より一層、練習に励んでいたが、ちょうどその頃、俺の家に、一匹の三毛猫が迷い込んで来ていた。

「ウチは、猫は飼わないんだよ…」

そう言って、俺は、この猫を追い出そうとしたが、何度追い出しても、この猫はすぐにまた戻って来てしまう。

「しょうがない奴だな…」

とうとう、俺は根負けして、この猫を飼う事にした。

だが、この猫を飼い始めて間もなく、またまた、俺は物凄い幸運に恵まれた。

それは恰も、この猫が幸運を運んで来てくれたかのようだった。

 

 

その頃、「あいつ」は、物凄く悩んでいた。

「あいつ」は、とにかく音楽の天才で、その頃、オリジナルの曲も作るようになっていたが、

俺達のバンドで、ボーカルも務めていた「あいつ」は、

「このバンドは、俺のボーカルがネックだ。このままじゃ、俺達は頭打ちだ…」

と、俺に対し、呻くように言っていた。

どうやら、物凄い作曲能力に比べ、「あいつ」は、歌にはあまり自信が無いようだった。

俺は、悩んでいる「あいつ」のためにも、何とかしてやりたいと思っていたが、その解決策は、思わぬ所から見つかった。

その頃、俺は大学の近くのカラオケ屋で、アルバイトをしていた。

そのカラオケ屋のバイトの同僚で、俺は、素性の怪しい謎の男(?)ヒデユキさんと、そしてもう1人…ユウコという女の子と出逢っていた。

美容師の専門学校に通っているというユウコは、まるで「猫」のような女の子で…いや、「猫」扱いしてしまうと、ユウコに怒られてしまいそうだが(?)、

人見知りっぽいユウコは、最初はあまり打ち解けない様子だったものの、一度、仲良くなってしまうと、何処までも心を開いてくれるような子だった。

ユウコの、そういう所が、俺にとっては「猫」を連想させた。

そして、ある日の事。

「私、歌が好きなんだー」

と、ユウコが、他のバイト仲間に対して言っていた事を、俺は聞き逃さなかった。

「ユウコ、バイトが終わったら、一緒にカラオケやろうぜ!!」

俺は、ユウコとヒデユキさんを誘い、バイトが終わった後、3人でカラオケをやる事になった。

「ユウコ、何か歌ってみてよ」

俺がそう言うと、最初、ユウコは、

「しょうがないなあ…」

と、本当に渋々というような調子だった。

 

 

そして、ユウコが歌った時…俺とヒデユキさんは、本当に度肝を抜かれた。

その時、ユウコ山口百恵の曲を歌っていたが、

「これが、あの普段は大人しいユウコなのか!?」

と思ってしまうぐらい、ガラッと「変身」し、実に堂々とした歌いっぷりだった。

そして、本当にユウコは抜群に歌が上手く、俺達は圧倒されてしまった。

「…ユウコ、凄いな…」

俺は、そう言うのがやっとだった。

ユウコの歌は、聴く者を圧倒してしまう迫力が有り、そして、人を惹き付ける魅力が有った。

ユウコの歌の才能は明らかだった。

そして、俺はユウコに、

「なあ、ユウコ。折り入って頼みが有るんだけどな…」

と、言っていた。

その時、俺には、ある「考え」が浮かんでいた…。

 

<第4章・『9月の風』>

 

 

青山学院のキャンパスの銀杏並木が色付き始め、季節は秋になっていた。

そして、ある秋の日、俺はユウコを青山学院のキャンパスに連れて来ていた。

「ユウコ、ウチのバンドのボーカルをやってくれないか?」

俺に浮かんでいた「考え」というのは、その事だった。

俺達は最高のバンドだと思っていたが、足りないピースが有るとすれば、それは「ボーカル」だった。

そして、その「ボーカル」として、ユウコはピッタリだと、俺は確信していた。

「私、バンドのボーカルなんて、やった事ないよ?それでも良いの?」

ユウコは不安そうな様子だったが、俺は、

「大丈夫だって!!」

と、確信を持って、言っていた。

俺は、ユウコをバンド仲間達に紹介し、

「この子、俺のバイト先で知り合った子なんだけどさ。スゲー歌が上手いんだよね!!ちょっと聴いてみてくれない?」

と、バンド仲間達に言った。

その時、ユウコがチョイスした曲は、ユウコが尊敬してやまない、あの山口百恵の楽曲、

『ロックンロール・ウィドウ』

だった。

こうして、俺達のバンドが演奏し、ユウコが歌う事になった。

演奏が始まる前、ユウコは目を閉じ、気持ちを集中させていた。

そして、演奏が始まった途端、ユウコは、まるで何かが憑依したかのように、「別人」になりきっていた。

この時、ユウコは『ロックンロール・ウィドウ』を歌ったが、俺の思った通り…いや、思っていた以上に、ユウコのボーカルは、物凄く素晴らしかった。

やがて演奏が終わり、バンドリーダーの「あいつ」、ベースのカズユキ、ドラムのヒロシは、皆、呆気に取られていた。

俺は、ただ一人、

「な?言った通りだろ!?」

というような調子で、ニンマリしていた。

「ねえ、君さえ良かったら、ウチのバンドでボーカルをやってくれない!?」

バンドリーダーの「あいつ」は、勢い込んで、ユウコにそう言っていた。

「本当ですか!?有り難うございます!!」

ユウコも、頬を紅潮させて、答えていた。

こうして、俺達のバンドに、ボーカルのユウコが加わった。

 

<第5章・『ハイ・スピード』>

 

 

さて、そこからの展開は、本当に目まぐるしかった。

ユウコが加わり、俺達のバンドは、

「ベターデイズ」

というバンド名を名乗るようになっていたが、ユウコが加わった事により、俺達のバンドは、全てのピースが揃い、「完璧」になっていた。

「あいつ」も、ユウコのために…と、次々に新曲を作るようになり、「ベターデイズ」は日夜、猛練習に励み、演奏技術も見る見る内に向上して行った。

そして、「ベターデイズ」は、学内の定期演奏会などのステージに、ちょくちょくと立つようになっていたが、段々と「ベターデイズ」の評判は上がって行った。

「元々、最高のメンバーだったバンドに、最高のボーカルが加わったんだから、それはそうなるさ!!」

俺は、そう思っていた。

とにかく、「ベターデイズ」にユウコが加わり、このバンドに化学反応が起きた。

そして、ユウコはステージに立つと人格(?)が変わるというか、普段の大人しい性格も何処へやら、お客さんをノリノリで煽ったりしていた。

「みんな、乗ってるかい!?」

ギターの俺も、ユウコと一緒になって、お客さんを煽りに煽った。

そうすると、お客さんは物凄く盛り上がった。

「ベターデイズ」では、フロントに立つユウコとが、お客さんを煽る役割(?)であり、「あいつ」カズユキヒロシの確かな演奏が、しっかりと、それを支えてくれていた。

「いつまでも、このステージから降りたくないな…」

俺は、ノリノリでギターを演奏しながらも、そんな事を思っていた。

そして、その年の年末、俺達の大目標だった、都内の大手ライブハウスでのライブの日がやって来た。

 

 

年末のライブを迎えた頃、俺達「ベターデイズ」は、アマチュアバンド界隈では、既に名の知れた存在になっていた。

そして、アマチュアバンドとしては本当に異例だが、その大手ライブハウスは、超満員のお客さんが来ていた。

ちなみに、「ベターデイズ」のメンバー達には言っていなかったが、実は、そのライブハウスには、俺の姉も来ていた。

その時、姉は既に大学を卒業し、出版社に勤めていたが、学生時代から既にライター稼業をしていた姉は、音楽雑誌の編集をやっていた。

このライブの前、ユウコは緊張で顔が真っ青だったが、ライブが始まってみると、やはり、

「スーパーボーカル・ユウコ」

に変身し、最高の歌を歌っていた。

勿論、俺もいつもの通り、ギターをかき鳴らしながら、ユウコと一緒になって、お客さんを煽りに煽りまくっていた。

こうして、無我夢中の内にライブが終わると、ライブハウスは興奮と熱狂の坩堝と化していた。

そう、ライブはまさに大成功だった。

「姉ちゃん、どうだった、俺達の演奏は?」

後で、俺は姉に聞いてみたが、

「貴方達、凄かった。プロにも引けを取らないぐらい…。いえ、プロも目指せると思う!!」

と、姉は断言していた。

またまた、身内の贔屓目か…とは思ったが、この時、俺の中で、

「プロを目指す」

という考えが芽生えていた。

 

<第6章・『LOVE SICK CHIKEN』>

 

 

あの最高のライブが終わった後…鉄の結束を誇っていた、俺達のバンドに亀裂が走った。

俺は、姉の意見が有った事もあり、「あいつ」に対し、

「俺達、プロを目指そう!!」

という事を主張するようになっていた。

だが、「あいつ」は、その事に難色を示していた。

「お前、プロなんて、そんな甘いものじゃないんだぞ」

などと、「あいつ」は、知った風な口を利いていた。

「あいつ」にしてみれば、たかだが学生バンドが、ライブハウスで演奏したぐらいで、いきなりプロなんて、何を考えてるのか…と、いかにも俺の事を無謀なお調子者(?)とでも思っていたかもしれない。

だが、一応、音楽雑誌で仕事をしている姉の意見も有ったし、それに、俺の目から見て、「あいつ」の作曲能力も、ユウコのボーカルも、まさに天賦の才だと確信していた。

「こんな天賦の才を、埋もれさせるのは、日本の音楽界の損失だ」

俺は、本気でそう思っていた。

だが、「あいつ」は、慎重な姿勢を崩さなかった。

俺から見れば、「あいつ」は臆病風に吹かれている…としか思えなかった。

こうして、俺と「あいつ」の関係は悪化してしまったが、ユウコは、俺と「あいつ」の板挟みになってしまい、心底、困り果てているようだった。

ユウコは、

「私は、バンドの仲間達が大切だから…」

と言っていたが、その気持ちは俺も全く同じだった。

だから、「あいつ」がユウコに対し、

「そんなにプロになりたきゃ、勝手にしろ。ユウコも、タカシと一緒にプロを目指せば良いじゃないか!?」

などと言い放っていたと知った時は、本当に憤った。

その言葉を聞いて、ユウコは泣いていたそうだ。

「何もわかってねえよ、あいつは…」

その頃、「あいつ」ユウコが恋人同士だという事は、とっくに俺も知っていた。

「あいつ」が、俺とユウコの関係をどうこう言うのは、「お門違い」も良いところだ。

勿論、俺にとって、ユウコは大切な仲間だが、

「あいつとユウコは、最高のパートナーだ」

と、俺は思っていたのに…。

むしろ、この2人が出逢ってくれて良かったと、俺は思っていた。

「それなのに、何てバカヤローなんだ、あいつは…」

俺はそう思ってしまった。

こうして、最高のバンドだった「ベターデイズ」は崩壊してしまった…。

それからの日々、俺は行くあてもない、暗闇の世界で過ごしているような気持ちだった。

 

<第7章・『Still I Love You』>

 

 

しかし、やっぱり俺達の「絆」は、そう簡単には切れていなかった。

一旦、「ベターデイズ」は崩壊してしまったかに思われたが、やっぱり俺達は、このバンドを愛していたし、心の中では、

「また一緒にバンドをやりたい」

と、思っていた。

そして、1年が経った頃、俺とユウコが出逢った、あのカラオケ屋のバイト仲間…ヒデユキさんの仲介もあって、俺達は「仲直り」した。

その時、「あいつ」が、俺達「ベターデイズ」の事を思って作った曲が、

『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)』

という曲だったが、この曲を聴けば、「あいつ」がどれぐらい、「ベターデイズ」の事を思っていたのかが、真っ直ぐに伝わって来た。

「やっぱり、お前は凄いよ…」

俺は、改めて、「あいつ」の才能に敬意を表していた。

そして、それまでは、ただの「謎の男」(?)に過ぎなかったヒデユキさんも、実はパーカッションの「セミプロ」である事がわかった。

そして、ヒデユキさんも加えた6人で、俺達「ベターデイズ」は、活動を再開した。

その後、俺は改めて「ベターデイズ」のメンバー達に、話をした。

「実は、俺の姉が音楽雑誌の編集をやっていて…」

俺は、姉が如何に音楽に詳しいか、そして、音楽の仕事に携わる姉が、

「ベターデイズは、プロを目指してもおかしくない」

と言っていたのを根拠にして、俺は「ベターデイズ」はプロを目指そうという考えが芽生えた事などを、皆に丁寧に話した。

「だから…。やるだけやってみないか?」

俺がそう言うと、バンドのメンバーは皆、顔を見合わせていた。だが、

「よし!!それならオーディションを受けてみよう!!」

と、「あいつ」が、とうとう決断を下した。

バンドリーダーの「あいつ」が言うなら、皆に異存は無かった。

「よし、やってやろうぜ!!」

そう言って、気合いを入れた「ベターデイズ」のメンバー達は円陣を組み、気勢を上げた。

こうして、遂に俺達の気持ちは一つになった。

 

<終章・『なんば君の事務所』>

 

 

そして、俺達「ベターデイズ」はプロのレコード会社のオーディションに臨んだ。

俺の姉は、音楽雑誌に、

「今、アマチュアバンド界隈で、ベターデイズという凄いバンドが現れ、乗りに乗っている」

という記事を書き、側面で支援してくれていたが、

「私の知り合いで、音楽事務所をやっている人が居るから」

と言って、「なんば君」なる人(※本名は、よく知らない)を紹介してくれたが、その伝手で、オーディションを受ける事が出来た。

「ベターデイズです!!宜しくお願いします」

その頃には、すっかり、舞台度胸の付いていたユウコが、審査員達に向かってニッコリと微笑み、頭を下げた。

そして、ユウコは「ベターデイズ」のメンバー達を見回し、

「さあ、行くわよ!!」

と、瞳で訴えかけていた。

俺達は、もう以心伝心の関係だったから、何も言葉は要らなかった。

そして、「ベターデイズ」の演奏が始まった。

「響け、大好きなナンバー…」

俺達の思いは、一つだった。

最高のバンド「ベターデイズ」は、俺達が大好きな音楽を響かせていた…。

 

 

『恋するレスポール』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

愛倫メンバーと Rock all night!!

艶やかなShow

胸騒ぐ Tokyo night

柔肌はGold

 

誰も知らない二人の世界

あなたへの愛…

壊したくない 離れたくない…

 

誰かれも Kids alright

鳴らせよ Les Paul

止めるにはもったいない

奏でよ Hey, Joe

 

行くあてもない虚ろな社会

闇のように暗い…

探しものが見つけられない…

 

You gotta dance to the rhythm.

最高のギターなのさ

Let's take a chance for the freedom.

希望を胸に抱いて

 

天使がこの地上に降り立つ前に

Gently weeps

 

愛倫メンバーと Rock all night!!

艶やかなShow

胸騒ぐ Tokyo night

夢は "Standard '59 Model"

 

誰も知らない二人の世界

あなたへの愛…

壊したくない 離れたくない…

 

響け大好きなナンバー

今夜はステージを降りない!!

チェリーサンバーストのカラー

無情に時間(とき)は流れ

 

きらめくその瞳を濡らすのは誰だ?

 

You gotta dance to the rhythm.

最後のギターなのさ

Let's take a chance for the freedom.

希望を胸に抱いて

 

響け大好きなナンバー

今夜はステージを降りない!!

P.A.F.のイカしてるパワー

慕情に変わる想い

 

天使がこの舞台で微笑むために

Gently weeps

All night long