NHK大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺』第1話「夜明け前」(6) | 頑張れ!法政野球部 ~法政大学野球部と東京六大学野球について語るブログ~

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法政大学野球部を中心として、東京六大学野球についての様々な事柄について、思いつくままに書いて行くブログです。
少々マニアックな事なども書くと思いますが、お暇な方は読んでやって下さい。

日本のオリンピック参加に向けて、嘉納治五郎天狗倶楽部の面々の心は一つになり、

彼らは、羽田にオリンピックの予選会のための競技場を建設するため、邁進していたが、

無理が祟って、病に倒れた嘉納治五郎(役所広司)は、ふと弱気の虫に襲われ、

「韋駄天など、居ない」

と、遂に弱音を吐いた。

 

果たして、そんな嘉納治五郎の前に、韋駄天は現れるのであろうか!?

 

 

<遂に、羽田に競技場が完成!オリンピック予選会が開かれる>

 

 

 

嘉納治五郎と、天狗倶楽部の面々の熱意の結晶である、日本で初めての本格的な競技場が、

遂に、東京・羽田の地に完成した。

そして、1911(明治44)年11月19日、日本のオリンピック参加に向けて、その代表選手を決めるための予選会が開催される日が、とうとうやって来た。

 

 

 

当日は、あいにくの雨模様となったが、

天狗倶楽部の一同は勿論、東大、早稲田、慶応などの学生達や、

運命の予選会の模様を一目見ようと、大勢の観客達が集まっていた。

 

 

 

そして、嘉納治五郎は主催者席に座り、

祈るような気持ちで、運命の予選会のスタートを待っていた。

一方、三島弥彦(生田斗真)は、若い女性陣に囲まれ、呑気そうな様子であった。

 

 

嘉納が、ふとスタート地点を見ると、

何と、人力車夫の清さん(峯田和伸)が、その中に紛れ込んでいた。

清さんは、胸に「早せ田」と書かれたゼッケンを付けていた。

どうやら、「早稲田」のつもりらしいが、清さんをよく知っている嘉納は、

「清さん!あんた、早稲田じゃないだろ!!」

と叫んだ。

 

 

 

そうこうしている内に、スタートの号砲が鳴り、選手達は一斉にスタートした。

応援する学生や観客達から、大声援が送られたが、嘉納は落ち着かない様子であった。

 

<一人、また一人…次々に落伍者が…>

 

 

 

予選会がスタートして暫く経ったが、雨はますます激しく降っていた。

主催者席に座る嘉納は、気が気ではない様子だったが、そこへ、レースの様子を伝える伝令が、次々に飛び込んで来た。

「現在、落伍者は5名!」「落伍者は、更に3名!」

本格的なマラソンを走った事の有る選手が、まだまだ少なかった時代だった事もあり、

過酷なマラソンに耐え切れず、落伍者が次々に出ているようであった。

 

 

 

参加者から、一人、また一人と選手が脱落して行き、

各中継所は、医者の数も足りず、まるで戦場のような様子だという。

永井道明教授(杉本哲太)は、それ見た事かと言わんばかりの様子で、

「嘉納先生、これは責任問題ですよ!死人が出たら、どうするおつもりですか!?これは、羽田の悲劇ですよ!」

と、激しく詰め寄った。

永井に詰め寄られ、嘉納は、ただ黙って前を見つめるより他は無かった。

 

<遂に…遂に、韋駄天現る!!>

 

 

 

するとそこへ、競技場の入口に、一人の人影が姿を現した。

「んっ!?」

嘉納は、双眼鏡を見た。

「あれは…?」

食い入るように、双眼鏡で人影を見る嘉納に対し、永井は、

「どうせ、伝令でしょう」と言ったが、そうではなかった。

「いや、違う!伝令じゃない!!選手だ、選手が来たんだ!!」

嘉納は、思わず叫んだ。

 

 

 

そう、それは伝令ではなく、先頭で競技場に帰って来た、参加選手の一人だったのである。

その選手は、物凄い速さで、競技場へと帰って来たのであった。

 

 

「あれを見ろ!韋駄天だ!居たぞ、韋駄天が居たぞ!!」

嘉納は、興奮して、狂ったように叫んでいた。

永井も驚いて、双眼鏡でその選手を見たが、その選手は、頭から血を流して、顔中が血まみれのように見えた。

「あれは何だ!?怪我をしているのか!?」

永井はそう言ったが、主催者席に居た学生の一人が、

「違います!あれは血じゃありません!この雨で、帽子の赤い染料が落ちて、顔に流れているんですよ!!」

と言った。

 

 

いかにもその通り、それは血ではなかったが、

その選手は、帽子から垂れた染料をダラダラと顔に流しながら、物凄い形相で走っていた。

それは、あたかも、歌舞伎の隈取のようであった。

 

 

「誰だ!?あの選手は誰だ!?」

嘉納は、引ったくるように、参加者名簿を見たが、

その選手とは即ち、東京高等師範学校の学生・金栗四三(中村勘九郎)その人であった。

 

 

 

嘉納は、興奮して、主催者席からゴール地点へと飛び出した。

そして、激しく雨が降っているのにも構わず、ゴールへと疾走して来る金栗四三へと向かって、

「おーい!おーい!!」

と、叫び続けた。

 

<金栗四三、世界新記録を達成!世界に通用する韋駄天の登場!!>

 

 

 

 

金栗四三は、履いていた足袋を脱ぎ捨て、ゴールへとひた走った。

そんな金栗を、興奮した学生や観客達が、大歓声を上げながら追い掛けた。

三島弥彦も、「頑張れ、頑張れ!!」と言いながら、金栗と共にゴールへと並走した。

 

 

 

 

そして、金栗四三は、ゴール地点で待ち受ける、嘉納治五郎の元へと飛び込んだ。

タイムを見ると、何と2時間32分45秒であり、それまでの世界記録を27分も縮めるという、

凄まじい驚異的な世界新記録だったのである。

 

 

 

それはまさに、嘉納治五郎が待ち焦がれていた、待望の韋駄天の登場であった。

ゴールへと飛び込んで来た金栗四三を抱き止めた嘉納治五郎は、

金栗四三に向かって、何事かを伝えたように見えた。

 

 

 

 

激しい雨と雷鳴によって、その声はよく聞き取れなかったが、

嘉納治五郎は、金栗四三に、こう伝えていたようである。

「金栗君、君こそ、世界に通用する韋駄天だ。いや、不可能を可能(嘉納)にする男だ」

古今亭志ん生(ビートたけし)による、そのようなオチがついて、『いだてん』第1話は幕を閉じたのである。

 

…以上が、『いだてん』第1話の内容であるが、

主人公である金栗四三(中村勘九郎)が、なかなか登場せず、

最後の最後になって、満を持して登場するという演出であり、

しかも、まるで歌舞伎の隈取のような形相で現れるわけだが、

勿論、それは歌舞伎役者中村勘九郎だからこそ、わざと、そのような演出にしているというのは、言うまでもない。

 

 

この劇的な主役の登場場面は、全く見事の一語であり、

思わず「待ってました!!」「中村屋!!」という掛け声を掛けたくなってしまうような、素晴らしい場面だったと言えよう。

 

また、『いだてん』第1話は、総じて、非常にテンポも良く、登場人物達も、皆、個性的で魅力が有り、

笑い有り、感動の名場面有りという、非常に盛り沢山な内容だったが、

クドカン(宮藤官九郎)の脚本の素晴らしさが光った、見事なものであった。

次回以降も、非常に楽しみである。