(↑セミダブルを吹く???我が家の「たろう」)
現在、世界(もちろん日本を含めて)のプロオーストラの
ホルン吹きの方で、セミダブルを使っている人は
いったい何人いるでしょうか?
マイノリティー(^^;であることは間違いありません(^^;
ただ戦前のヨーロッパでは、かなり多くの奏者が
セミダブルを使用していました。
師匠がよくおっしゃっていたのは、
「オーケストラのホルンセクションは、
1・3番吹きはBシングル、2・4番吹きはセミダブル、
これで十分だし、そのほうが良い響きがする。」
ということです。
もちろん、師匠のお考えでありますし、
少数意見であることは間違いありませんが、
私もこの意見には大賛成(^^;している一人です。
現在の世の中のホルン吹きの方は、ホルンを始めた時から
フルダブルしか使用してこなかった方が圧倒的多数です。
つまり、シングルホルンもセミダブルも使ったことはない、
見たこともないという人が多数いらっしゃるということです。
実は私も最初はメロホンで、その後がFシングルでしたので、
セミダブルという楽器の存在自体を全く知りませんでした。
初めて見たのは、高校生の時、師匠のご自宅でしたが、
なんと!触りもしませんでした(^^;。
それだけホルンはフルダブル!という観念があった訳です。
現在普通にセミダブルを仕事で使用している私でさえ、
そうだったことを思うと、多くのホルン吹きの方が、
セミダブルに対して持つイメージがどんなものであるかは、
手に取るように理解できます(^^;。
それでも師匠は、セミダブルの可能性を高く評価されていて、
1980年の中頃「国産のセミダブルがないのはおかしい!
ヨーロッパのホルンメーカーで、セミダブルを作ってない
工房はどこにもない。全ての工房がセミダブルを作っている。
世界のヤマハにセミダブルがないのはおかしい。」
とおっしゃってヤマハでセミダブルを作ることになりました。
クルスペをモデルとしたYHR-841がこうして誕生しました。
このモデルは現在でも(特注ではありますが)
作られているロングランモデルです。
もちろん師匠は上吹きで、ほぼ生涯Bシングルでしたので、
セミダブルを吹かれることはありませんでしたが、
この楽器の普及を日本で一番望んでいた方だと思います。
師匠は、
「まずは吹いてみる!吹かなきゃ、分からない!
有名人が使っているとか、プロが使っているとか、
そういうことはどうでもいい。
自分が吹いてどう思うか!これが一番大事なんだ。
自分の好きな音が出る楽器を使えば良い。
オレはクルスペが好きだから使っている訳ではない。
オレが出したい音が一番出しやすい楽器が、
たまたまクルスペだっただけだ!」
そう、何度も何度もおっしゃっていました。
自分もそう思って来ましたが、
ただ、そういう思いは、師匠の影響だけでなく、
確かに自分で感じていることではあるのです。
実際、私は結構いろいろなメーカーの
楽器を実際に仕事で使用してきた経緯があり、
(ちなみに・・・私が過去使用した楽器は
ヤマハ・メーニッヒ・アレキ・コーン・ホルトン
オットー・ホイヤー・ハイネル・レオンハルト・
ウイルソン etc
もちろん、全て自分で購入し、使っていたものです)
その結果、やはり今使っている楽器が
一番自分の出したい音が出しやすいと思っているので
クルスペを使っている訳です。
「セミダブルがフルダブルに比べて
重厚な音が出ないって?
低い音が出ないって? そんな訳ないだろ!
フルダブルは重量が重いってだけだ!
音色が重くなる訳じゃない。」
「よくセミダブルはどうのこうのと
言っているヤツがいるだろ?
実際吹いて、使って、そう言ってるか?
そうじゃないだろ?
使いもしないで、ごちゃごちゃ言うナ!」
毒舌で有名な師匠の、
悪童が悪戯する時のようなニヤニヤ笑いの
いつもの話し方が、とてもとても懐かしいです!(^^;