師匠の思い出(其の九)「セミダブルに対する思い」 | たのしいホルン

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楽器のおたく話(Kruspe)や日常のことを綴っているブログです。
もっと楽しくホルンが吹きたい!プロオケってどんな世界なのだろう?
初心者だけどホルンが吹いてみたい!・・・このブログを通してそういったこともお伝え出来ればと思っています。

(↑セミダブルを吹く???我が家の「たろう」)

 

現在、世界(もちろん日本を含めて)のプロオーストラの

ホルン吹きの方で、セミダブルを使っている人は

いったい何人いるでしょうか?

マイノリティー(^^;であることは間違いありません(^^;

ただ戦前のヨーロッパでは、かなり多くの奏者が

セミダブルを使用していました。

 

師匠がよくおっしゃっていたのは、

 

「オーケストラのホルンセクションは、

1・3番吹きはBシングル、2・4番吹きはセミダブル、

これで十分だし、そのほうが良い響きがする。」

 

ということです。

もちろん、師匠のお考えでありますし、

少数意見であることは間違いありませんが、

私もこの意見には大賛成(^^;している一人です。

 

現在の世の中のホルン吹きの方は、ホルンを始めた時から

フルダブルしか使用してこなかった方が圧倒的多数です。

つまり、シングルホルンもセミダブルも使ったことはない、

見たこともないという人が多数いらっしゃるということです。

実は私も最初はメロホンで、その後がFシングルでしたので、

セミダブルという楽器の存在自体を全く知りませんでした。

初めて見たのは、高校生の時、師匠のご自宅でしたが、

なんと!触りもしませんでした(^^;

それだけホルンはフルダブル!という観念があった訳です。

現在普通にセミダブルを仕事で使用している私でさえ、

そうだったことを思うと、多くのホルン吹きの方が、

セミダブルに対して持つイメージがどんなものであるかは、

手に取るように理解できます(^^;

 

それでも師匠は、セミダブルの可能性を高く評価されていて、

1980年の中頃「国産のセミダブルがないのはおかしい!

ヨーロッパのホルンメーカーで、セミダブルを作ってない

工房はどこにもない。全ての工房がセミダブルを作っている。

世界のヤマハにセミダブルがないのはおかしい。」

とおっしゃってヤマハでセミダブルを作ることになりました。

クルスペをモデルとしたYHR-841がこうして誕生しました。

このモデルは現在でも(特注ではありますが)

作られているロングランモデルです。

もちろん師匠は上吹きで、ほぼ生涯Bシングルでしたので、

セミダブルを吹かれることはありませんでしたが、

この楽器の普及を日本で一番望んでいた方だと思います。

 

師匠は、

「まずは吹いてみる!吹かなきゃ、分からない!

有名人が使っているとか、プロが使っているとか、

そういうことはどうでもいい。

自分が吹いてどう思うか!これが一番大事なんだ。

自分の好きな音が出る楽器を使えば良い。

オレはクルスペが好きだから使っている訳ではない。

オレが出したい音が一番出しやすい楽器が、

たまたまクルスペだっただけだ!」

そう、何度も何度もおっしゃっていました。

自分もそう思って来ましたが、

ただ、そういう思いは、師匠の影響だけでなく、

確かに自分で感じていることではあるのです。

実際、私は結構いろいろなメーカーの

楽器を実際に仕事で使用してきた経緯があり、

(ちなみに・・・私が過去使用した楽器は

 ヤマハ・メーニッヒ・アレキ・コーン・ホルトン

 オットー・ホイヤー・ハイネル・レオンハルト・

ウイルソン etc 

もちろん、全て自分で購入し、使っていたものです)

その結果、やはり今使っている楽器が

一番自分の出したい音が出しやすいと思っているので

クルスペを使っている訳です。

 

「セミダブルがフルダブルに比べて

重厚な音が出ないって?

  低い音が出ないって? そんな訳ないだろ!

  フルダブルは重量が重いってだけだ!

音色が重くなる訳じゃない。」

 

「よくセミダブルはどうのこうのと

言っているヤツがいるだろ?

実際吹いて、使って、そう言ってるか?

そうじゃないだろ?

使いもしないで、ごちゃごちゃ言うナ!」

 

毒舌で有名な師匠の、

悪童が悪戯する時のようなニヤニヤ笑いの

いつもの話し方が、とてもとても懐かしいです!(^^;