Memorandum4 | 宇都宮 彫耀

宇都宮 彫耀

日々の出来事や想いをブログに綴ります。

11/4(土)
朝から秋晴れだった。
くみの部屋へ入って、大阪で入院中にくみが最後に描いた絵を飾った。
俺がふざけてキン肉マンを落書きした絵だけど、その落書きを、くみが面白いからと消さずに仕上げた人魚の絵。
大阪の看護師さん達がなんでキン肉マン?って微笑っていたのを思い出す。
昼頃に母ちゃんが来た。
礼服に着替えて葬儀場へ向かった。
12時半に到着すると、駐車場にお義母さんと旦那さんがいる。
お義母さんは再婚していて、旦那さん共に脳梗塞を経験している。
俺はお義母さんの車椅子を押して葬儀場の中に入った。
広くてきれいな場所だった。
式場に入ると思っていたよりも立派な祭壇だった。
式場も広い。
たくさんの花に囲まれて笑顔のくみの写真が迎えてくれた。
3年前、再生不良性貧血で入院していた時の自撮り写真。
自分でハロウィンの加工をして、LINEでおくってくれたやつだ。
微笑むような笑顔でくみらしい。
遺影に使ってもらった。
くみは棺に入っている。
今日も綺麗だった。
今にも目を開きそうな、優しい穏やかな顔。
福島から伯父さん叔母さん従兄弟が来てくれて、会うのも久し振りだったから嬉しかった。
家族葬だけど、連絡していたくみを慕う人が遠くからも来てくれた。
つい最近まで、くみとランチしたり仲良くしてくれていた近くの友達も駆けつけてくれた。
来てくれた人と会う度にホッとした。
絶対来ると言っていた八王子の義妹は来てなかった。
告別式が始まり、少し遅れてくみの姉ちゃん達が席についた。
喪主の俺は前列1番左に1人で座っていた。
司会者の女性と事前打ち合わせをしていて、1番目にやる事ばかりだったから、これは単にセレモニーなんだと無意識に認識していた。
涙も出ないし気を張っていたのかもしれない。
焼香がおわった姉ちゃんと娘ちゃんが、すぐ俺の隣に座ってくれた時、我慢していた物がプツンと切れたようだった。
急に涙が堪えられなくなった。
棺の花入れが感情のピークだった。
白い花を1輪取って、くみの顔の横に添えてそっと頬を撫でた。
感謝の気持ちでいっぱいだった。
その後は悲しみが津波のように襲ってきた。
来てくれた俺の友人達が、自分達も泣きながら俺の肩を強く寄せてくれた。
嬉しかった。
お義母さんは声を出して号泣していた。
全員が泣いていた。
セレモニーなんかじゃなかった。
本当に悲しみの別れだった。
出棺になり位牌を持った。
義父が御膳、義姉が遺影、骨壺を義兄、花束を義姪、母ちゃんにはお義母さんの車椅子を頼んだ。
隣の火葬場へ異動して最後のお別れをした。
その時俺は落ち着いていた気がする。
しばらくして
くみは骨と灰になった。
意外と骨がしっかりしていて大きく、若いから量も多いのだろうと誰かが言った。
なぜか俺は少しホッとした。
姉ちゃんは諦めがついたと言っていた。
ワンチャンまだ死んでねーよと生き返るかもと願っていたようだ。
確かに…くみならあり得ると思った。
骨を骨壺に納める前に歯が残ってないか見ていたら、被せ物をした歯が一本骨から綺麗に外れて残っていた。
義兄が言った。
とし君、持って帰れよと。
母ちゃんが差し出してくれたハンカチに、くみの歯を包んでポケットにそっと入れた。
昔愛猫を亡くした時に、爪と歯は生え変わるから持っていても大丈夫と聞いて、火葬後に残っていた歯をペンダントに入れて今でも持っている。
だからくみの歯も持って帰った。
後でペンダントに入れて持ち歩ける。
葬儀と火葬が全て終わり、残っていてくれた方々に、予定にはなかった挨拶をさせてもらった。
自分で何を挨拶で言ったかは覚えてない。
自宅に戻り、くみの部屋に祭壇が置かれた。
白い部屋にくみが戻ってきた。
家にきた方々と語り合い笑い合ったりして、ここに引越してきて1番賑やかな夜になった。
気が付けば夜になっていた。
ふと庭にあるくみの花壇を見たくなった。
そこにくみが居るような気もした。
9月頃暑い中、くみが汗を流しながらせっせと植えていた花壇の花達が
咲きほこっていた。
ぼーっと見ていたら、いつの間にか姉ちゃんが隣にいた。
思うところがあり自分を責めてしまっていて辛そうだった。
心配して娘ちゃんも来た。
いつも俺に寄り添ってくれる2人に、俺も俺なりに寄り添っていきたいと思った。
1つお願いをした。
くみをディズニーシーに連れて行く約束を果したいけど、1人ではきっと無理だから一緒にと。
2人は笑顔で応えてくれた。
一緒に行こうねと。
良かった、くみも喜ぶと思った。
くみの兄貴とも色々話した。
やっぱりいい人だった。
夜10時頃にそれぞれ帰って行った。
従兄弟が1人残って泊まってくれた。
久し振りに会うけど、ガキの頃から変わらず、いつもの優しい従兄弟がそばにいてくれた。
そして長い長い1日がおわった。

くみは見ていてくれたかな?
自分の為に人が泣くのは、もう嫌だと言っていたから辛かったかな。
それでも見ていてくれたのなら、俺の考えや行動は間違ってなかったかな?
これでよかったのかな?
これからどうすればいいのかな?
わからない事ばかりだ。
でももう結論が出ない事を考えるのはよそう。
これからもずっと毎日くみにLINEする。
だからくみの携帯は、出来るだけそのままにしておく。
また空が明るくなってきた。
少し寝るか、くみが作ったクッション達に囲まれて。