宇都宮 彫耀

宇都宮 彫耀

日々の出来事や想いをブログに綴ります。

15年くらい前の話

当時16歳の息子が仲間達と一緒にある事件で逮捕された。

留置と鑑別で数ヶ月を過ごし、審判後は少年院へ2年ちょっと収監された。

その頃息子の元カノが家に出入りするようになる。

名前はしおり、学校へは行ってなくてフラフラ遊んでいた女の子だった。

息子が出てくるまで待っていたいとの事で、くみは自分の娘の様にしおりの面倒をみて可愛がっていた。

彫師になりたいからと毎日絵を描きに通ってきて、くみのお客さんが来た時は仕事の手伝いもしていた。

人懐こい性格でどこへ行くにも付いてくる。

コンビニへ買い物へ行くと俺の持つカゴにいつの間にか自分用のお菓子を入れてみたり、ちょくちょくドッキリや悪戯なんかもされていた。

家に息子がいなかった時期、しおりのおかげで俺もくみも寂しさを癒されていたのは間違いない。

あの可愛らしい笑顔と声は今もはっきりと覚えている。


ある日3人で出掛けた帰りに八王子の心霊スポットへ寄った。

くみは怖くて行けないと言うから車で待機、俺としおりで暗闇の中の八王子城址へ歩いて行った。

全然怖くないと言うしおり、連れてきた甲斐がないと思いドッキリを仕掛けた。

八王子霊園の入り口で写真を撮って来れるかと聞くと、全然平気だとスタスタと1人で行ってしまう。

俺とくみは車で待ってると言いつつ、俺はこっそり外へ出て植込みの陰に隠れた。

写真を撮って小走りに戻ってきたしおり、俺は四つん這いで植込みからうお~っと声を出しながら這い出しすと、さすがに驚いてギャーと叫んで飛び上がってた。

3人で爆笑しながら帰ったのを覚えている。

その数日後、仕事部屋にいた俺の背後から貞子メイクのしおりが襲いかかってきた。

あの時は心臓が飛び出してしまうくらい驚かされたな。

くみも悪戯好きだったたけど、しおりも負けず劣らず俺に仕掛けきては楽しそうによく笑っていた。

出張彫りで大阪や栃木へも一緒に行ったり、管理釣り場や温泉へも遊びに行ったりしていた。


そんな生活が1年も過ぎた頃、突然しおりとの連絡が取れなくなり家にもパタリと来なくなった。

くみは心配してしおりの母親と連絡をとったが家にも帰ってきてなくて、どうやら好きな人が出来てそちらへ行っているかもとの事だった。

また俺達は寂しくなった。

くみはどれ程しおりを可愛がっていたか、そのショックは相当なものだったと思う。

息子が少年院から出てきた時も何て話せばよいものか…

俺の中でも心に大きな穴がポッカリと空いてしまっていた。

その後2匹の仔犬を迎えて寂しさは紛れた。

くみには新たな妹弟子が出来て、また賑やかな日常的がしばらくは続いたんだ。


俺達の前から突然消えたあの時から、くみにはしおりの事をずっと禁句にしてきた。

少年院を出てきた息子には何となく事情は俺から話をして納得してもらった。

それから数年後に偶然しおりを見つける事になる。

あるYouTubeチャンネルを見ていたら、女子少年院出の女性インタビューが流れてきて、その女性の肩のタトゥーに俺は少し見覚えがあった。

そして背中の刺青の画面になった時に確信した。

その刺青はくみが彫った観音様で間違いない。

しおりの背中だった。

顔はモザイク処理されいるからわからない、でも昔の彼氏のお母さんに彫ってもらったと語っていたから間違いないだろう。

そのインタビューの内容から、しおりがあれからどんな人生を歩んできたのかを知った。

悩んだあげく後日俺はこの動画をくみに見てもらった。

…しおりだね

無事に生きていたんだね…

それだけで嬉しいよ

どんなに変わってしまっても…

しおりはしおりだよ

そう言いながらくみは泣いていた。

元気でやってくれているならそれでいいと泣いていたんだ。


3回目のお盆のせいか俺はここ数日くみの事をいつも以上に意識しているし、くみの携帯のアルバム写真を何度も見返していた。

そこには15年前のしおりがいた。

3人で過ごしたあの頃の写真がたくさん残されている。

懐かしいね、今はどうしてるのかな?

思いが募る。

もしいつか何処かで、このブログにしおりの目に止まる時が来るかもしれない。

だから今の思いと言葉を残しておこうと思った。




しおりへ

元気ですか?

あれからだいぶ経つけど、今でもしおりの事はよく覚えているよ。

今俺は力也と2人で暮らしています。

彫師もまだ宇都宮で続けてる。

ママ師匠は天国へ行ってしまったけど、いつも俺達を空から見守ってくれているよ。

八王子でのあの頃は楽しかった記憶ばかりが心に残ってるから、ママもしおりが来なくなって何年も寂しい思いはしてたと思うんだ。

でも別に誰もしおりが悪いとも思ってないからね。

力也がいなかったあの時期に、俺達と深く関わってくれた事に今でも感謝してるから。

ママもきっと同じ気持だと思う。

もしいつか何処かでこのメッセージを目にしてくれたら、今のしおりにとって俺達の存在が迷惑じゃなければ、遠慮なく連絡してきてね。

そしてママに会いに来て下さい。

きっと喜んでくれるから。

パパ師匠より


さて、今月もなかなか忙しい。

かろうじて月1で海釣りには行けてるけど、昨年のように誰かと出かけたりする余裕は全くない感じ。

この調子だとあっという間に月日が経ってしまいそうだ。


先日お久しぶりのお客から連絡が入る。

6年程前に和彫りで五分袖の龍と唐獅子を完成させているHさん、今回は背中に彫耀の銘入りで大日如来の依頼を受けた。

これはなかなかの大作になると思うし俺のやる気も満ちてる。

そう言えば…しおりの背中も大日如来だったと思う。

このタイミングは偶然じゃないかもしれない。

思いが重なって、きっと良い作品になる事は間違いないだろうね。


何だか楽しみだなぁ。