純白の祈りの結晶のダニーボーイ ~ FaOI愛知感想4 | ほりきりのブログ

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 FAOI愛知の現地の感想に戻ります。


 西川貴教ガンダムオンアイスで興奮して発散しきった私は、ランビエールのときには力尽きていた。まともにヌキッパが見れてないよ、ごめんねステファン。
 そしてへたり込んだところに、暗闇の中から白い影が現れる。



 羽生結弦、ダニーボーイ。


 最終日の私の席はロングのSS席(という名のアリーナ)の7列め。ど真ん中からほんのわずかにステージ寄り。まあまあセンターといってもいい。
 うちら家族3人は通路側から3つ並びの席だったが、太っているのと膝と股関節が悪いので立ち上がるのが大変だからと若者たちが気を遣って、私を通路寄りの席にしてくれた。おかげで体の5分の一くらいは誰もいない空間にはみだしてもよくて気持ちがすごく楽だった。
 楽なだけじゃなくて、右側は遮るものが何もないきわめて視界良好。(左側には背の高い人が座っていて少しだけ見づらい。これはしかたがない)
 その視界良好なリンクを白い羽生さんが自在に舞う。


 スタートポジションはむこう向きだった。暗闇からスポットを浴びて白い背中が浮かび上がる。

 ピアノの旋律に合わせて軽やかに、身体からピアノの音色がはじけ出るように、ピアノと共に羽生さんが舞う。
 羽生さんはピアノ曲は得意だ。いやピアノ曲の申し子といえるだろう。でもこのダニーボーイは、バラ1やロンカプとかとはどこか違う。ピアノと遊ぶような、軽やかな自由がある。これがジャズってもんなのか?
 氷から浮き上がっているような滑り。羽生さん独特の浮遊感のある不思議な滑りの、これは極みのようだ。

 細やかに足を動かしてときに交差させて、空気にたゆたうように腕や体を動かして、首を振ったり目を閉じたりするように音の世界と同化してゆく。
 氷に遊ぶように。天を舞うように。
 ふわり。ひらり。ひとさし舞うごとに見ているものまでその中に引き入れてゆく。


 ノッテステラータのときの羽生さんには妙な宝塚味を感じた。それは真央さまといっしょに演じていたり、襟がたった、袖や裾はヒラヒラした衣装もあるだろう。あと髪型がオールバックだったのも大きいからかも。
 今回それはまったく感じなかった。やっぱ髪型のせいだったのかな。はらりと前髪を少しだけ額にたらしていたのは、目の上の傷をかくそうとしたのか。でもこっちの方がここでの羽生さんには似合う気がするなあ。
 なにものにも染まらない純白の羽生結弦そのものが、世界に純真な祈りを捧げているよ。


 私にとって視界が大きく開けた右半分を、大きなレイバックイナバウアーで円を描いていく。
 羽生さんはいろんなバージョンのイナバウアーがあって、それのどれも好きだったけど、このダニーボーイのレイバックイナは格別だな。
 手を上にあげて、広げて、世界の全てを包み込むような丸い大きなイナバウアー。いつもいつも、ここで胸がいっぱいになってしまうのだ。
 
 
 この間も指摘したけれど、今回のダニーボーイでは演技そのものと関係ない変な歓声があがらなかった。技ごとに拍手はあったけど、それすらもだんだん少なくなってきて。みんな息を詰めてというよりは、呼吸をそろえて同じ世界に入り込んでいたみたいだ。

 試合じゃない。応援じゃないんだ。 
 羽生さんと、見ている観客の、気持ちをひとつに。
 
 私は拍手しながら見ていたはずなのに、その手がいつのまにか顔の前で合わさっている。
 拝み手?拝んでるの?羽生さんを?
 羽生さんの演技は美しすぎて、いつか拝んでしまうような尊い存在になっていたのかもしれない。

 はー、すばらしかった。終わってしまった。

 

 今回リンク上の色合いが緑色の迷彩色だとか。(緑の草原や深い森に見えないこともないのだが)
 宇宙戦争を扱うガンダムの物語の間に挟まれたことだとか。
 今の世界情勢をかんがみて。
 この戦地に息子を送った母の歌と重ねて、そっちの面を強調する解釈もあるようだけど。それはそれでいいのだけど。
 私にはそういうのとは関係なく、もっとピュアな祈りの結晶のように見えた。

 
 羽生さんのスケートってすごいな。
 もう表現力とか越えてる気がするな。


 いつ見ても、何度見ても、ダニーボーイは心が洗われるようです。
 ダニーボーイが、とてもとても好きです。