とりあえず,できる限りの検査が終わった後、夜も遅くなってから父に会うことが許された。
しかし,その後入院中は父に会うことはできない。
家族であっても,病院からの要請がなければ会うことはできないのだ。
父に会うことができるのは,父が元気になって退院するときか、危篤状態になって病院から呼ばれるときだけ。
つまり、
父と話せる最後の時かもしれない。
父は,眠っていたが、頬を触ったり,軽く肩をトントンしたら,目を開けた。
父に「ありがとう」を言ってから、
父が一番気になっていることを伝えた。
「お母さんのことは心配しないでいいよ。
弟とわたしがついているから大丈夫。
だから、お父さんは自分で決めてね」
父は耳が遠く,どんなに大きい声で言っても聞き取れない。
しかし,わたしの小さな声にそのときだけ,小さく顔を動かした。
多分,父はわたしが言っていることは分かったのだと思う。
その後,最後に別れるとき,また「ありがとう」を言い、
全て、大丈夫
と、伝えた。
その大丈夫には色んな意味が込められていた。
きっと,わたしが言いたいことは父に伝わっている。
そう、思った。
たくさんの同意書のほとんどに「同意しません」に⭕️をしてきた。
輸血も,心臓マッサージも、胃ろうも‥みんないらない。
父が父のままで,
父の意思で、
決めることができるように、
これがわたしたち家族にできること。