ケントは講演の質疑応答のときに、かなり考えさせられることを言った。
「発達障害があるってことで、差別されているって感じたことがありますか?」
「オレは、今まで生きてきて差別されてるって感じたことはないんだけど、最近分かったんだ。
こうやって講演に呼ばれて、質問をされてるときに差別を感じるよ」
当然、ケントは発達障害の当事者として呼ばれているわけで、しかも質疑応答しかしないから、質問は「どんなふうに発達障害の人に接したら良いですか?」とか「されて、嫌なことってありますか?」などの質問がよく出る。
ケントは「普通の人はどんなふうに接したら良いですか?とか言われないじゃん。
接している中でこの人にはこんなふうに接しようって思いながらやって行くわけでしょ。
だから、オレもどんなふうに接したら良いか聞かれても答えようがない。
しいて言えば、優しくしてもらいたいかな‥
それと、かっこいいって言ってもらったら嬉しい。
そんな感じかな」
これをニコニコしながら言った。
ケントは、ときどき言う。
「発達障害って言われるけど、オレはむしろ進化系だと思ってる。まだ、少ないから障害とか言われてるけど、こっちが増えたら、逆転するわけでしょ」
ケントは頭の回転が早く、発想も豊か。
でも、苦手なことや難しいこともある。
「正直言って、オレは人の気持ちがあまり分からないから、表情心理学についてけっこう学んだ。
だから、目の動きとかちょっとした顔の筋肉の動きでだいたい分かるようになった。
マスクされてると表情を読み取るときにちょっと困るけどね‥」
強みを活かしながら、苦手なことは工夫したり、学びながらやって来た。
失敗も多いけど、失敗からたくさんのことを学んでいるようだ。
後悔はあんまりしないけど、
反省はすごくするらしいから‥
ところで、
ケントは料理をすることが好きなのだが、先日珍しく電話がかかってきた。
「お節料理作りたいから、重箱借りても良い?」
「最近、お節、作らなくなったから、どうぞ」
「ありがとう。
作ったら、写真くらい見せてやるよ」
わたしは、40年以上、毎年お節料理を作ってきたが、この2年くらい作るのをやめていた。
義理の母から教えてもらったお節料理だったから、ここで途絶えてしまうことは少々残念だった。
ケントのことだから、自分流のお節だと思うが、それでもあの大きなお重にお節料理がいっぱい詰められることを想像したら嬉しかった。
きっと、おいしいお節ができあがるだろう٩(^‿^)۶
そして、今年、天にいったおばあちゃんもさぞかし喜ぶだろうなƪ(˘⌣˘)ʃ