世界的な金融危機が迫る中、日本でもインフレの懸念が浮上
2021年10月13日(水) by: アルセニオ・トレド

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インフレ懸念は、デフレ傾向にある日本にも及んでおり、既に緊張状態にある世界のサプライチェーンを揺るがしかねない世界金融危機への懸念につながっている。

 


バークレイズ証券(東京)の金融ストラテジストである海老原慎司氏は、「どこまで上昇するかは、通貨や商品価格次第だが、依然として高い水準にあり、急激な下落は考えにくい」と述べています。

日本の10年ブレークイーブンレート(投資家や金融アナリストが今後10年間の潜在的なインフレ率を予測するために使用する指標)は、2018年以来の最高値を記録しました。

 

この上昇は、対ドルでの円の低迷と、国内の商品価格の高騰によってもたらされたものです。

 

金融アナリストは、この上昇がすぐに反転するとは考えていません。

 


三菱UFJフィナンシャル・グループ(東京)の金融ストラテジストである稲留克俊氏は、「日本のブレーク・イーブンは、同じく上昇傾向にある米国のブレーク・イーブン・インフレ率に通常は追随しているため、すぐに下落することはないでしょう」「米国のインフレ懸念は、コモディティ価格の上昇と供給の制約により長引いています」と説明しています。

日本のインフレ率、13年ぶりの高水準に

 

また、同国の卸売物価上昇率は13年ぶりの高水準となりました。

 

消費者物価は8月に13ヵ月ぶりに下げ止まり、2011年以来、同国で最も長く続いたデフレに終止符を打ちました。

インフレ率の上昇により、商品やサービスの価格が上昇し、9月の企業物価指数では6.3%のコスト上昇が見られました。これにより、国内の企業の利益率は大きく低下し、消費財の不要な値上げのリスクも高まっています。

これらのことは、日本の製造業に負担をかけています。日本の製造業は、グローバルなサプライチェーンに多大な圧力をかけられているため、すでに供給面での制約を受けています。

 

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投資銀行・大和証券の末廣徹シニアエコノミストは、「原材料費の上昇が加速すれば、最終製品の価格を販売する企業は利益を圧迫されるだろう」と話す。

このインフレは、隣国の中国を含む世界の他の地域に影響を与え始めたエネルギー危機にも影響を与えている。原油価格が高騰し、石油や石炭の価格は32.4%、木製品は48%もの高騰を余儀なくされている。

 

日本は燃料の純輸入国である為、この様なコストプッシュ型のインフレは経済に悪影響を及ぼす可能性があります」と末廣氏は言う。

日本の卸売り輸入価格を示す指標によると、9月の価格は前年同月比で31.3%という記録的な高騰を見せています。

 

これは、円安を裏付ける証拠です。これは、主に円を使ってビジネスをしている企業の収益に影響を与え、消費者物価の上昇につながる可能性があります。

大和証券の岩下真理チーフ・マーケット・エコノミストは、「円の価値が下がり、エネルギーコストが上昇するという二重苦は、日本経済に大きな打撃を与える可能性がある」と語る。

経済研究シンクタンクのチーフエコノミストである武田篤氏は、インフレについてもう少し楽観的な見方をしています。

 

同氏は、消費者はそれほど影響を受けないと考えている。

 

「卸売価格の上昇の殆どは企業が吸収し、消費者への影響はガソリン価格の上昇など僅かなものになるだろう」と武田氏は言う。

武田氏の楽観的な見方とは裏腹に、多くの金融専門家は金融危機の到来を懸念している。

 

かつて多くの人は、武漢コロナウイルス・パンデミックの余波によるインフレ、サプライチェーンの混乱、物価上昇は一時的なものだと考えていました。

 

日本のような危機回避能力の高い国が影響を受けるとすれば、彼らの予測は的外れになるかもしれません。