「偉大なる芸術家とは」。
フランスの作家アンドレ・ジッドは言った。
「難渋することによって鼓舞され、あらゆる障害を踏切台に用いる人間」のことである、と。
ミケランジェロの代表作の一つ「モーセ像」の窮屈に座る姿は、「大理石が足りなかった」おかげで考え出されたという言い伝えである。
像は教皇の墓碑を飾るものとして依頼されたが、完成までの道は、墓碑計画の縮小、次の教皇による無理難題な別の仕事の押しつけなど、苦闘の連続だった。
障害こそが、芸術家の創造力を引き出すバネとなった――。
ジッドの芸術論には、人生万般に通じる真理が含まれている。
ジャズ音楽家のウェイン・ショーター氏の話に思いが及んだ。
即興が命のジャズでは、演奏中に予期せぬこと、未知のことが次々と起こる。
そこから逃げずに〝真正面から立ち向かうのだ〟と氏は語る。
むしろそれは〝新たな冒険の喜び〟なのです、と。
大いなる目標への途上には必ず困難がある。
それにどう対処するかで、人間の真価が問われる。
「賢者はよろこび愚者は退く」の精神で、勇んで立ち向かいたい。