このやる気の波は、いったい何なんだろう。
できる日は、本当にちゃっちゃと家事もできる。
仕事もできる。
「あれもやろう」
「これもやっておこう」
と、どんどん動ける。
なのに、できない日は本当に何もできない。
ただ携帯を見ている。
ずっと携帯を触っている。
何もしたくない。
身体も動かない。
まさに、去年の12月頃の夫を見ているような感覚になる。
夫もあの頃、何もせずソファに横になって、ただ携帯を触っていた。
私は、
「なんで何もしないんだろう」
と思っていた。
でも今、自分が同じような状態になる。
もちろん、私にはやらなければいけないことがある。
家事は私がやらないと、夫や息子にはなかなかできない。
だから、
「私が動かなきゃ」
と思う。
重たい身体を起こして、とにかく動く。
すると、一度動き始めたら、そのまま動ける。
だから最近は、
「座ったら終わり」
と思っている。
座ってしまうと、そのまま動かなくなるから。
しばらくは、それでどうにか自分をコントロールできていた。
ちゃんと動けていた。
大丈夫だと思っていた。
でも、最近また、この波が大きくなってきた。
一体なんなんだろう。
一つ気になっていることがある。
私は10年間、同じピルを飲んでいた。
もともとホルモンバランスが不安定で、気分の波もあった。
でも、その10年間飲んでいたピルのおかげで、なんとかムードスイングをコントロールできていたように思う。
ところが、年齢的なこともあり、
「そろそろエストロゲンの入っていないものに変えましょう」
と言われ、ピルを変更した。
それからなのか。
それとも、たまたまなのか。
やる気が出ない。
気分が落ちる。
何もしたくない。
この波が、ピルを変えたことと関係しているのかな。
それとも、別のことなのかな。
最近、そんなことを考える。
そして、、、頭から離れないことがある。
友達の死。
日本に来てから、私が初めて通ったジム。
そこで出会った友達だった。
私はそのジムのグループエクササイズにハマって、毎日のように通っていた。
その中に、私より年上の女性がいた。
重たいウェイトを担いで、ものすごい重量を軽々と扱う。
とにかく、何をしてもかっこいい。
みんなの憧れだった。
私も、
「私も彼女みたいになりたい」
と思っていた。
強くて、かっこよくて、身体を動かして。
あんなふうになれたらいいなと思っていた。
夫がおかしくなり始めた頃。
私は彼女にも相談していた。
「なんか最近、夫と距離があるんだよね……」
「私に対して気持ちが冷めちゃったのかなぁ」
そんな話をした。
すると、夫のことを知っている彼女は、
「彼、ただ仕事で疲れちゃってるだけだよ。大丈夫だよ」
そう言ってくれた。
その言葉を、その時の私は信じたかった。
まさか、その裏で夫が不倫をしているなんて。
あの時の私は知らなかった。
夫の不倫が発覚する前から、私は少しずつそのジムに通えなくなっていった。
彼女は何度かメッセージをくれていた。
でも、私は彼女に夫の不倫のことを話さなかった。
話せなかったのかもしれない。
そのうち私は、彼女に夫の複雑性PTSDについて相談するようになった。
彼女の旦那さんも、戦場に行った経験があった。
結婚直後から、戦場PTSD。
そしてアルコール依存症やうつ病。
彼女は何年も、本当に大変な思いをしていた。
ジムのクラスに来ると、時々その話をしてくれた。
涙目になりながら、今抱えている問題を私に話す。
私の目の前で涙を流すことはなかった。
でも、
「きっと昨日、たくさん泣いたんだろうな」
そう思ってしまうような表情をしていることがあった。
そんな大変な状況でも、彼女はジムに来ていた。
そして、よくこう言っていた。
「きつい運動してるときは、嫌なことを忘れられるの」
「思い出しちゃうときは、まだきつくないってことだから、もっと動く!」
笑いながら、そんなことを言っていた。
私はその時、彼女の本当の苦しさをどこまで理解できていたんだろう。
正直、分かっていなかったと思う。
私自身が今、心の傷を抱えて生活している。
夫の不倫によるフラッシュバック。
毎日の気持ちの波。
何もしたくなくなる日。
それでも家事をしなければいけない。
子どもたちの前では明るくしていたい。
そんな毎日を過ごしている。
だから今になって、少しだけ彼女の苦しさが分かるような気がする。
私と彼女では、もちろん状況は全然違う。
でも、
PTSDを抱えた夫と暮らす妻がどれだけ大変なのか。
夫の状態に振り回されながら、家族を支え続けることがどれだけ苦しいのか。
今なら、少しだけ想像できる。
私はFacebookの、戦場でPTSDを抱えた夫を持つ妻たちのグループにも入っている。
そこでは毎日のように、いろんな話が流れてくる。
アルコールに逃げてしまう夫。
傷ついている奥さんたち。
家族を守ろうと必死になっている妻たち。
読んでいると、本当に胸が苦しくなる。
そして、彼女のことを思い出す。
ある日、私は彼女とスタバで話した。
その時、私は彼女に言った。
「当時の私は、あなたの苦しみが分かってあげられなかった」
「でも今なら、少しは分かるんだ」
「辛かったね……」
「よく頑張ったね……」
そんな話をした。
彼女とは、私がジムに通わなくなってからもよく会った。
お互いの近況を報告し合った。
私のことも聞いてくれた。
私も彼女のことを聞いた。
友達というのは不思議だ。
毎日会わなくても、久しぶりに会えば昨日まで話していたように話せる。
彼女も、私にとってそんな存在だった。
8月25日。
その日も、いつものように連絡をした。
「お土産たくさんあるから、仕事の帰りに寄りなよ!」
私の家の前で、数時間立ち話をした。
彼女は笑っていた。
近所の友人も出てきて、彼女に紹介した。
3人で笑いながら話した。
何でもない時間だった。
いつもと同じような時間。
でも、その日はいつもと違った。
気がつけば、外は真っ暗になっていた。
「じゃあ、また連絡してよ!」
私はそう言って、彼女に手を振った。
彼女も笑っていた。
私は、そのまま家に入った。
それが、
彼女との最後だった。
まさか、それが最後になるなんて思わなかった。
また会えると思っていた。
また話せると思っていた。
また、
「最近どう?」
って聞けると思っていた。
あの日、いつものように笑って手を振った。
それが最後になるなんて、私は知らなかった。
だから今でも思う。
最近、私の気分の波が大きくなったのは、
ピルを変えたからなのか。
去年から続く心の傷のせいなのか。
夫の不倫のフラッシュバックなのか。
それとも、
彼女の死を受け入れられないからなのか。
もしかしたら、その全部なのかもしれない。
あの日のあと、何が起きたのか。
そして、彼女がいなくなったことを知った時の私が、どうなったのか。
それは、また書こうと思う。
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