第1.AB間の関係
1.錯誤(95条)
(1)AB間の売買は錯誤に基づく意思表示として無効となり、AはBに不当利得返還請求をできないか。
(2)錯誤というためには法律行為の要素に錯誤が必要。
(3)本件では表示と内心的効果意思が一致(動機の錯誤)
→法律行為の要素に錯誤なし。
(4)もっとも、動機が明示又は黙示に表示されていれば、錯誤無効主張可能。
∵取引の安全と表意者保護の調和
(5)本件では、真正であることを根拠に2000万円という価格設定になっている。
→真正でなければ2000万円という価格はつけないはずで、相手方もAが真正であると信じて取引していることがわかる。よって少なくとも、黙示の表示があるといえる。
専門家も信じてるので重過失ありとは言えない。
⇒錯誤肯定
2.瑕疵担保責任(570条)
(1)取り消して不当利得返還請求
①隠れた②瑕疵であることが必要。
(2)隠れた⇒善意・無過失
問題なく肯定
(3)瑕疵⇒その物が通常有する性質を欠いていること
問題なく肯定
(4)瑕疵担保肯定
(5)なお、錯誤も瑕疵担保も両方主張できる。
∵制度趣旨も設計も異なるので、片方を否定する理由はない。
3.
(1)もっとも本件では絵画が滅失している。
⇒原状回復請求できないが、不当利得返還請求できるのか。191条との関係で問題に。
(2)本件ではAの帰責事由なく滅失している。
⇒191条の適用はなく、原則通り不当利得返還請求できる。
第2.AD間の関係
1.有償寄託で目的物が滅失している。
2.有償寄託の継続的性質から、目的物が滅失した以上契約は終了すると解すべき。
3.本件では、A・D双方に帰責性がないから、いずれも損害賠償を請求できない。
4.もっとも、滅失後の30万については、「法律上の原因」をなくしたとして、不当利得返還請求を認めるべき。
[反省]
危険負担かかず。
気づかなかったわけじゃないが、危険負担は契約の解除前の問題なので無理、と思って切ってしまった。
貞友先生によれば、危険負担を類推してくるらしい。
解除前の契約には牽連性があるのに、解除後はないのはおかしい。
↓
本件では、両債務が履行済みなのであるから、牽連性を認めるべきである。
↓
特定物に関する危険負担制度の趣旨は、買主が騰貴等の利益を得る地位にあることに鑑み、滅失した場合の負担を買主に負わせることで両当事者の公平を図ることにある。
↓
本件では、騰貴はもはや見込めない。
⇒原則通り536条類推で処理する。趣旨は牽連性によって当事者の公平を図ること。
↓
100万円の時価を有していたから、その返還義務を負う。
一方、2000万円の返還請求権を有する。
相殺して、1900万円請求できる。
という流れかと。
牽連性を認めることで当事者双方の公平を図ることが危険負担の趣旨なので、いきなりそこから536条にいってもいいのかも(模範答案はそうしている)。
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