日本信販創業にみる経営-「理念」と「簡潔なメッセージ」 | 中小企業の経営参謀「税理士星川」の戦略、税制、法務、海外展開のお役立ちブログ

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先日、経営者の勉強会に参加させて頂き、
日本信用販売株式会社(現UFJニコス)の創業者山田光成氏の側近として
長年に渡り営業畑でご活躍された五十嵐昭平氏のお話を
伺うことができました。
「我が思い出の記」と題され、日本信販の創業期の苦労話や
カリスマ的経営者山田光成氏の強力なワンマン経営のご様子を
ユーモラスに語られました。

謙虚に、感謝と尊敬を忘れず、かつ愚直なまでに経営者に
師事し業務を遂行して来た五十嵐氏の献身ぶりに感嘆しました。
そのお話の中で、日本信販の創業期のお話が印象的だったので
紹介しようと思います。

信販会社の原点は、温泉旅館
日本初の信販会社の創業者の生家は、岐阜の下呂温泉とのこと。
そこには冬になると、多くの老夫婦が湯治のために訪れたといいます。
彼らの多くは、農家で、秋の収穫代金をコツコツためて、
旅費、宿代を工面していたそうです。

山田光成氏は、湯治客がもっと元気なうちに下呂温泉に来てほしい
と考え、「Play Now, Pay Later」(楽しんでください。支払いは後ほど)
という発想を持ったそうです。
これが日本信販の前身となる、「日本百貨サービス」(名古屋)の創業の原点の
一つということです。

加盟店契約は門前払い
名古屋から東京に進出する形で立ち上げられた日本信販は、
当初加盟店契約で苦戦したそうです。
契約の打診も門前払い。その理由は、
「月賦払いの客を入れることは、店の品格を落とすことになる」
というものだったようです。

日本の百貨店の起源を1905年の三越百貨店をスタートにすると、
初期の百貨店のターゲットは、富裕層にハイエンドな商品を売る
というもので、その後1930年に、鉄道駅に直結したターミナル百貨店が
登場し、段々とターゲットを一般大衆に向けていったという経緯が
あります。

日本信販の創業が1951年、百貨店の客層として一般大衆を
取り込み、その裾野を広げつつあった時だったと考えられます。

五十嵐氏はあるとき、高島屋に、TV、冷蔵庫、洗濯機などの高額商品の
6回払い特別展示会を提案した際にも、「品格が落ちるから」と
紅白幕を張り、その中でイベントを開催するという条件を付けられた
ことを語られました。

山田光成氏は、「我々は、信用がある人にクーポン券を発行していますので
ご安心ください。」と営業の話法を変えて、百貨店に新たな顧客層の獲得を
提案するように工夫したそうです。
(当時の仕組みは、信販会社が官公庁や一流企業のサラリーマン(消費者)
にクーポンを発行し、消費者がそのクーポンを利用して店舗に支払う。
信販会社が店舗に代金を立替支払し、後日消費者から利用クーポンの代金を
回収するというものだったようです。)

一般大衆の月賦払い購入のニーズの実現と、百貨店の経営方針転換期の
狭間での工夫と捉えると大変興味深いです。

「勤続3年、妻子有り」
これは、山田光成氏が考えたキャッチフレーズで、
一つの企業に3年以上勤務するサラリーマン、
妻子がある人は信用できるというもの。
このような人達は、住民票の提出、名刺交換、場合によって
収入証明を求めるくらいで信用調査を終了し、
調査費用の削減に努めたそうです。
戦後の貧しい時代に、消費者個人に信用を与えるという
大衆に求められる月賦払い購入ニーズを実現するために、
このメッセージに従って会員を拡大していったそうです。

昭和28年の暮れにNHKのテレビニュースは「暮れの風景」を
追い、「真新しいランドセルを質屋にいれる若い母親の姿を映していた。
『子供のランドセルまで!』目を覆いたくなる光景で、いまだにその母親
の姿は瞼に焼き付いている」
これは、昭和61年5月12日の日経新聞「私の履歴書」の山田氏の回顧です。

「衆生無辺請願度」…すべての人を分け隔てなく、彼岸の地へ渡せるように
精進します。この奉仕の想いが山田氏の根底にあり、これを社員にも説いて
来たそうです。

この後、順調に割賦販売は普及し、普及しすぎて政府からの
規制に遭遇しますが、この危機もイノベーションを起こし
経営の多角化をしていきます。
すなわち、生命保険付住宅ローン、JCBの分離など。
「窮すれば変ず、変ずれば通ず」の精神を
見ることができます。

崇高な理念と、これを実現するために必要な方針を
簡潔なメッセージで伝えて組織を統率する。
トップの明確な「筋」とこれを実践してきた五十嵐氏を
はじめとする社員さんの努力、献身。
日本で未開拓の分野を切り開いてきた日本信販の経営を
知るいい時間でした。

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税理士、行政書士 星川 望
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