消費税改正に対応せよ-電気通信利用役務の提供のリバースチャージって何だ? | 中小企業の経営参謀「税理士星川」の戦略、税制、法務、海外展開のお役立ちブログ

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平成27年10月というのは経理・総務に携わるビジネスパーソンには
「大忙しの日々になるだろう」、と我々中小企業のサポーターは
今から冷や冷やしています。
マイナンバーの通知開始
電気通信利用役務の提供に係る消費税の取り扱いの変更
悩みの種は、この2代の巨塔です
賛否はもちろん分かれますが、消費税率の引き上げが見送られたことは、
経理業務を担当する者に安堵をもたらし、歓迎されることだったのかもしれません。

今回は、新たな消費税法上の概念である
「電気通信利用役務の提供」についてメモをして、
10月に向けた準備のために情報を提供します。

1.電気通信利用役務の提供とは
2.専門的に何がどう変わったのか
3.つまり経理総務の担当としてどう理解したらいいのか
という順序で述べていこうと思います。

1.電気通信利用役務の提供とは
電気通信回線を介して行われる著作物の提供、その他の役務の提供をいい、
電子書籍、音楽、広告の配信やクラウドサービス等が例示されています。
5月の時点で、詳細な「電気通信利用役務」の範囲が明示されていないのが
悩みの一つですが、この点はクライアントの事業の日常の取引から
“これは、電気通信利用役務の提供”に該当しますかね?”
とディスカッションをして、来たる日に備えるようにしています。

(ポイント)
○インターネットを通じた役務の提供を受ける
○著作物の提供も「役務の提供」
○広告配信サービスやアプリケーションの利用
○単なる通信回線の利用ではない
これらの条件から個別の取引を検討する他ないでしょう。
国外での調査等を現地の企業に依頼し(国外の役務提供)、
その調査結果をインターネットを介して送付を受ける。
このケースは、電気通信利用役務の提供には該当しないです。

2.専門的に何がどう変わったのか
今回の改正は、古くからの問題にようやく国が着手したというものです。
すなわち、インターネットを通じた役務提供については、
日本国内の事業者と国外事業者との間で消費税の課税制度に起因する
不公平があり、国内事業者が価格設定上の不利益を被っているという課題が
指摘されていました。

欧州では、ずいぶん前からこの問題に取り組んで来ましたが、
日本もこれらの取引の重要性が増したこと、消費税率の引き上げの議論と
併せて、無視できなくなったという背景があるのでしょう。
(同旨、浅妻先生インタビュー「国境を越えた役務の提供に対する消費課税
のさらなる拡充を」税理58巻5号2頁以下(2015))

専門的な内容を含みますが、
消費税法の今回の改正のポイントは、
(1)国外からの電気通信利用役務の提供の
(2)役務の提供地が日本国内か否か、その「内外判定」について、
(3)役務提供を受ける者の「住所地」が日本国にある場合には
(4)国内取引として消費税等の課税対象にする
という点です。
つまり、電気通信を利用した役務の提供地が不明な場合のルールを
明確にしたという性質の改正です。
部分的に仕向地(消費地)主義を導入したと評価できるでしょう。

さらに、



上図のように、取引を2つに区分し、課税方法を分けています。
役務の提供を受けるのが、
事業者」(BtoB)ならば、「国内の事業者」が納税義務を負い、
「一般消費者」(BtoC)ならば、「国外の事業者」が納税という制度になっています。

日本独特(?)の仕組みとしては、
「明らかに」BtoBなのか or そうではないのか、という判断基準を
採用したところに見出せます。

3.つまり経理総務の担当としてどう理解したらいいのか
企業の経理・総務の担当としては、
(1)電気通信利用役務の提供への該当性を検討し、
(2)BtoBとしてサービスを受けるのか、
(3)それ以外なのかを判断することが求められます。
制度としては、国外の事業者が通知するような仕組みになっていますが、
取引時に判断できていないと、後日、“消費税を納付せよ”と言われ、
資金繰りに困ってしまうのは目に見えています。

BtoBの取引は、電気通信利用役務を受ける国内の事業者の仕入れ(経費)について、
消費税を課税する仕組みを取ります。
消費する者に消費税の納税義務を転換する、
「リバースチャージ」方式の採用です。
経理の担当は、このような仕入れ(経費)を他の国内の仕入れ(経費)と
「区分して」経理しておくと良いでしょう。(制度上は「特定課税仕入れ」
と定義されています。)
ちょっと、日常で口に出したくなる横文字で、
すぐに覚えられるのではないでしょうか。

区分経理した特定課税仕入れの合計に8%を乗じた額を消費税及び地方消費税
として納付するイメージです。

一方で、明らかにBtoB取引以外の取引については、「国外の事業者」が
日本の国税庁に登録をして、日本の納税義務を履行する
「登録事業者申告納税方式」を取ります。

経理担当者は、登録事業者からの仕入れ(経費)については、
負担消費税等の額を仕入れ税務控除できるのに対し、
それ以外の者からの仕入れ(経費)については、仕入れ税額控除が
取れないという設計がされています。

以上がこの10月からの取引に適用される制度です。
経過措置として、課税売上の割合が95%以上の事業者については、
リバースチャージの対象となる仕入れはなかったものと見做される
ルールが取られています。
よって、突然多数の事業者がリバースチャージの遂行を求められる
訳ではありません。

中小企業の多くが、気軽に国外のwebサービスを
利用する時代です。本格施行までにこの10月から特定仕入れの
区分経理を行うなど、準備を始めると良いでしょう。
大企業はともかく、中小企業までこのような制度を浸透させるためには
それなりの時間を要するでしょう。

マイナンバーの事業者負担も重いものがあり、
それに加えての対応になります。

経理、総務部門の多忙な秋を想像しつつ、
我々もできる限りのサポートをしたいと思う次第です。


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税理士、行政書士 星川 望
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