以前に当ブログでも紹介した、弁護士会の役員を務める弁護士さんの
弁護士会会務に伴う懇親会費等の必要経費性を争う事件の控訴審判決が
9月にでました。
第一審は大きな注目を集めましたので、今回の高裁判決も大きな影響を持つものと思われます。
第1審の判決についてのブログはこちら
http://ameblo.jp/hop-milkyway/entry-11287095668.html
東京高判平成24年9月19日(行コ)第298号。
結論は、第一審が懇親会費等の必要経費性を全く認めなかったのに対し、
控訴審は、一部の経費性を認める納税者の逆転勝利判決です。
判決は、
「被控訴人(税務署側)は一般対応の必要経費の該当性は、当該事業の業務と
直接関係を持ち、かつ、専ら業務の遂行上必要といえるかによって判断すべきであると主張する。しかし、所得税法施行令96条1号が、
家事関連費のうち必要経費に算入することができるものについて、経費の
主たる部分が「事業所得を…生ずべき業務の遂行上必要」であることを要する
と規定している上、ある支出が業務の支出が業務の遂行上必要なものであれば、
その業務と関連するものでもあるというべきである。
それにもかかわらず、これに加えて、事業の業務と直接関係を持つことを
求めると解釈する根拠は見当たらず、「直接」という文言の意味も
必ずしも明らかではないことからすれば、被控訴人の上記主張は採用する
ことができない。」
そして、弁護士会の会務から、弁護士が事業所得を得ることはないから、
会務活動が、「事業所得を生ずべき業務」には該当しないと判断しつつも、
「控訴人(弁護士側)が弁護士会等の役員等として行った活動に要した費用で
あっても、これが、先に判示したように、控訴人が弁護士として行う
「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な支出であれば、その事業所得の一般対応の
必要経費に該当するということができる」
「弁護士会等の活動は、弁護士に対する社会的信頼を維持して弁護士業務の
改善に資するものであり、弁護士として行う事業所得を生ずべき業務に
密接に関係するとともに、会員である弁護士がいわば義務的に多くの経済的負担
を負うことにより成り立っているものであるということができる・・・
弁護士会等の役員等の業務の遂行上必要な支出であったということができるので
あれば、その弁護士としての事業所得の一般対応の必要経費に該当すると解するのが
相当である。
長文で引用しましたが、要は、
1、必要経費性は、法令に定める「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要」
か否かで判断する。
↓
2、弁護士会の会務は、事業所得を生ずべき業務ではないが、
その業務に密接に関係する。
(弁護士は、弁護士会に加入しないとそもそも業務ができないという
発想が根底にある)
↓
3、会務に係る支出のうち、その役員等としての業務の遂行上必要な支出で
あれば、必要経費に該当
とこういう論理のようです。
つまり、「事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な、「弁護士会の会務」の
遂行上必要な支出」であれば必要経費だと。
所令96条の「業務の遂行上必要」の解釈は、直接に収入を得る業務に係る
支出のみでなく、その業務の前提となる、またその収入を得る業務の遂行上必要な
業務等の支出を含むと読むようです。
控訴審は、第1審が、事業との「直接関係」を持たなければならないという判断基準を修正しました。
今回の判決は、弁護士にとって弁護士会の会務が、業務の遂行上必要という判断を示しました。税理士会その他の職業団体についても参考になる判決でしょう。
国(税務署側)が最高裁への上告をしているということで、最終決着に注目したいです。