スペイン文学の戯曲で、文学作品としては珍しい分野に属しているものです。
作者ガルシーア・ロルカはスペイン文学では非常に著名で、スペイン内戦の最中、38歳にして銃殺されてしまいましたが、存命であればノーベル賞を取れたのではないか、と言われたほどの才能を持っていたそうです。
収められている3つの『悲劇』は、いずれも最後は主要登場人物の死で終わるという点が共通していますが、取り上げられているテーマがいずれも女性の「業」という点でも共通点があります。
『血の婚礼』は、結婚式を迎える花嫁が、結婚式の途中でかつての恋人に連れ去られてしまったあげく、激昂した花婿とかつての恋人がナイフで殺し合い、最後は共に死んでしまうという話、『イェルマ』は、愛情の薄い夫を持つ不妊に悩む若い女が、様々な葛藤の末、最終的には夫を絞め殺してしまうという話、『ベルナルダ・アルバの家』は、専制的な母親の下で暮らす五人姉妹の長女と末娘が一人の男を取り合い、最後は末娘が自殺してしまうという話で、このようなあらすじだけ書くと、どれも本当におぞましい作品ばかりに聞こえます。
実際、どの作品も、南欧特有の蒸し暑さを感じさせる雰囲気の中、それぞれの女性が激しい情念を持ちながら登場するため、読者は息苦しさのようなものを感じなからも、作品の中に引き込まれ、一気に読み通してしまうことでしょう。特に、南欧の女性のパワフルさに圧倒されてしまう日本の男性読者は多いのではないでしょうか。
また、中南米の作品に通じるものがあり、『百年の孤独』を想起させるところもありました。
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