ギリシャ神話の叙事詩として今に伝わるものとしては『イリアス』に並ぶ有名な作品です。
『イリアス』の読書記録にも書いた通り、これらの作品は吟遊詩人により語られてきたものが文学作品としてまとめられたもので、『オデュッセイア』も講談師風の語り口が随所に現れます。
ただ、トロイア戦争の戦いの描写が延々と続く『イリアス』に比べると『オデュッセイア』はストーリーが明快で、かつ、表現もさほど大袈裟ではないので、読みやすくなっています。
主人公は、トロイア戦争で大活躍したオデュッセウスです。本来なら、戦いの後、故郷に凱旋帰国するはずのオデュッセウスですが、大地の神ポセイダオンの怒りを買ってしまい、故郷帰る途中の船旅で様々なトラブルに遭遇してしまいます。
長旅の途中で部下たちは悉く死んでしまい、やっとのことで故郷にたどり着いたのは、故郷を離れてから実に20年振りのことでした。
この間、すでにオデュッセウスは死んだものと考えられており、オデュッセウスの妻ペネロペイアのもとにはオデュッセウスの莫大な財産を狙った数多くの求婚者たちが訪れ、毎晩オデュッセウスの屋敷で飲み食いをしたり、女中たちに手を出したりとやりたい放題の行いを繰り返していました。
ペネロペイアは求婚者たちをうまくあしらいながら時間稼ぎをしていたものの、それももう限界に近づいていた頃、ようやくオデュッセウスが帰国し、オデュッセウスは息子のテレマコスとともに求婚者たちや裏切った女中たちを皆殺しにして再び故郷の地の王として君臨することになります。
以上が大まかなあらすじとなっています。
不運が続く英雄オデュッセウスの苦難の航行と、早く故郷に帰らないと求婚者たちに屋敷も妻も乗っ取られてしまう、という設定は非常に分かりやすく、最終的にはオデュッセウスが復讐を果たすという展開も、予想できることとは言え、その通りにストーリーが進んでいくので、読者が作品の世界に入って行きやすいのでしょう。
作品中には、オデュッセウスが、有名な『トロイの木馬』作戦を語る部分もあり、西洋の様々な文学作品に引用されている箇所も多く見られます。
昔の大衆が好んだ英雄譚の一つであり、特に人生訓が得られるような文学作品ではありませんが、人類最古の娯楽文学として、一度読んでおく価値はあると思います。