メルヴィル『白鯨』 | ホーストダンスのブログ

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今年初めての読書記録はハーマン・メルヴィルの長編小説『白鯨』です。


『白鯨』というタイトルよりも小説中に登場する巨大な抹香鯨の綽名である『モビー・ディック』の方が通りが良いかもしれません。


作者メルヴィルの存命中にはほとんど注目されなかった作品ということですが、サマセット・モーム選定の世界の十大小説にも取り上げられ、現代では世界的な有名小説の一つとして必ず名前が挙げられるものです。




小説の構成としては、イシュメールという商船乗りが港町に現れ、そこで知り合った南太平洋の「野蛮人」クイークエグとともに捕鯨船に乗り込むまでの前半部分と、その捕鯨船ピーウォド号の船長で、抹香鯨「モビー・ディック」と格闘して片脚を失ったエイハブが、復讐のためモビー・ディックを探し回り、ついに最後の闘いへと向かう後半部分に分かれています。また、その途中には鯨に対する学術論文的な章や「鯨礼賛」ともいうべき鯨に対する作者の畏敬の念が表現された章が挿入されています。


小説の主人公は、前半は、小説全体の語り手でもあるイシュメールですが、後半は、復讐に狂気的な執念を持つ船長エイハブと、その仇敵である抹香鯨「モビー・ディック」が主人公にとって代わっています。




前半部分の港町特有の男臭いジメジメした街の雰囲気、捕鯨船乗組員の個性的な面々、謎めいていて中々姿を現さない船長エイハブに関する様々なエピソードなどは中々の読み応えがあり、小説の最終盤、いよいよ目的の「モビー・ディック」を発見し、3日3晩にわたる激闘を繰り広げ、最後は語り手イシュメールを除いて全員が海の藻屑と消える部分は息もつかせぬ展開となっています。


ただ、小説全体としては、作者の鯨への思いを延々と語る部分が長すぎること、また、比喩に聖書からの引用が多く使われていること、さらに訳者の使う日本語がやや古臭く、文語的なことなどが原因で、非常に読みにくかった、というのが印象です。




それでも、主要テーマ以外にも当時の捕鯨船の様子、鯨の生態などが詳細に描かれており、作者渾身の作品であることは十分に伝わってきました。解説によると、この作品は様々な象徴性に富んでおり、登場する人物名に聖書の登場人物の名前が付けられていることにも深い意味が隠されている、とも解釈できるそうです。


ちなみに、作品中登場する一等航海士「スターバック」は、あの「スターバックスコーヒー」の名前の由来なのだそうです。(作品中、スターバックは、早く陸上での平和な生活へ戻りたいと考え、何度も船長エイハブに「モビー・ディック」への復讐を思い止まるよう説得しますが、結局は「モビー・ディック」との格闘のさなか、エイハブとともに海へと沈んでいく悲劇的な運命を辿ります。)


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次の読書も「世界十大小説」シリーズに挑戦です。