宮城県石巻市の避難所に7月27日、トランペットの豊かな音色が響き渡った。
演奏が進むにつれ、下を向いていた人が顔を上げ、横になっていた人が体を起こしていく。
音楽が、震災被災者の心を優しく解きほぐすかのようだったという。
ジャズトランペッターの大野俊三さんが、アメリカから慰問演奏に訪れた時の光景である。
「ジャズ」という言葉には、「活気づける」との意味もあるが、音楽の力をあらためて感じる話である。
2度のグラミー賞に輝いた音色には、大野さんの祈りとエールが託されていた。
交通事故で前歯を折り、上唇の筋肉が裂けたことがある。
末期の扁桃がんに襲われたこともあった。
絶体絶命の危機を何度も乗り越えた大野さん。
その不屈の魂の源泉は、ある人との誓いであった。
誓いは同時に、生きる希望ともなった。
自身の体験から、「希望を失わない限り、必ず道は開ける!」と訴える。
ジャズピアニストのハービー・ハンコックさんは言う。
「音楽には、何が起ころうと、それを生かして、春のように花を咲かせていく力があります」
「音楽には、人生のあらゆる課題に挑戦し、勇敢に、前に踏み出すよう、人々を励ます力があります」
わが胸中に”希望の音律”を奏でながら、今いる場所から、今日も1日、前進への一歩を踏み出したい。