音楽偏遊 -4ページ目

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

6月は不安定。

いきなりザーザーのどしゃ降り、時に雹ひょうがバラバラ降り注ぐ。見た?三鷹で何十センチも降り積もった雹を!

かと思えば急に夏日でギラギラ暑くなる。クールビズとはいえ、汗がダラダラ。

そういえば、6月の音楽界って何かニュースあったかな。思いつかん。話題がないって悲しいこと。シクシク(ToT)

政治ではしょうもない話題があったな。都議会の自民党議員はセクハラ野次を飛ばしながら、しらを切る。数日後に名乗り出る卑怯千万な姿勢にイライラ。議会に野次があっていいと思うが、議員は例え野次1つにも責任を持ち、自らの考えとして堂々と主張すべし。野次るためだけの野次など無責任な傍観者でしかない。襟を正せ!

おっと、イライラすると喋りすぎる。いかん遺憾(笑)


そんな卑怯とまるで正反対。身一つとアコギだけ、潔いまでの裸一貫でロック勝負する彼らに僕はワクワク、ドキドキが止まらない。激熱にロックな兄弟アコースティックユニット、TarO&JirOだ。

特に6月の最終日に渋谷chelsea hotelで見たライブは圧巻!数年前、彼らに初めて会った時に聞いて惚れた初期代表曲「Cube」も久々に生で聞けたしねおんぷ。

「じゃ、次は昔ストリートでよく歌ってたあの曲やるよ」とCubeの前奏を弾きはじめた瞬間、ゾワゾワと鳥肌がたった。その前の週、22日のClub Quattroの企画ライブでは彼らの出番が時間が余りに短くて、ちょー物足りなかっただけにね。

彼ら兄弟のステージは、通常は二人きり。楽器はそれぞれが持つアコースティックギターと、弟が足元で打ち鳴らすキックドラムだけというシンプルな編成。それなのに、その演奏を聴けば立ち上がり体を揺らさずにいられないハードでロックでタイトな、これぞ男のロックなのだ。

ただエフェクターと打ち込み使いまくり無理矢理踊らすナンパバンドや、歌唱力も演奏もたいして実力ないのをデスボイスでごまかすパンク系や、化粧と長髪だけで女の子をキャアキャアいわして喜んでいるビジュアル系とか本当にくだらない。そんな連中にこそ、TarO&JirOを見習ってもらいたい。勿論、そんな連中のなかにも格好いい実力派バンドはいて、そういうのは僕も無条件に好きなのだが。

TarO&JirOは2009年に日本を飛び出して徒手空拳、イギリスやフランスで音楽勝負に出た。二人きりでライブハウスや野外にオープンマイクで飛び込み、アコギ2本だけで客席を沸かせ、地道に知名度を高めてきた。3年前の時点で、彼らは欧州ですでに名前を売っていたのだ。その勇気、覚悟、行動力、惚れるね。

フルドラムのセットなんて彼らには無用。2人の声とアコギとキックドラムだけでとてつもないグルーヴを作り出し、言語も人種も国境も超えて海外の客たちを、その独創的な音楽と演奏で血わき肉躍らせてきたのだ。2011年にフランスのバンドコンペティションで優勝。欧州の様々なフェスで活躍してきた。

アマチュアバンドの世界一を決めるEmargenza日本大会に2013年優勝、同年のEmergenza世界大会で活躍、13年12月にようやく国内でもその実力が認められメジャーデビューした。いくつもの夏フェスにも出演する模様だし、2014年はいよいよ日本で彼らがブレークする年となるだろう。

アコギといえど、エフェクターで音を歪ませ、猛烈なテクと勢いでかきならす音はそこらのバンドなど簡単にけちらすハードでタイトな演奏。弟も変則チューニングのアコギをベースのようにスラップ奏法でぶつける。そして無茶苦茶に格好良い楽曲とボーカル&コーラス。あの演奏を思い出すだけでワクワクしてくる。

2014年の超オススメバンドだよ!



さて6月は他にどんなライブを見たか一覧見てみるぞよ。


    音譜    音譜    音譜

3日(火)『ジージでラララ♩ vol.46@渋谷gee-ge
郁彩、菅野恵、さとう麻衣、今井里歩、MILLEA、管野友里

4日(水)『Grateful☆Girls vol.148』 ~スリーマンスペシャル~@渋谷gee-ge
hinaco、玲里、光上せあら

6日(金)イーガルvs4人の女たち@渋谷 SARAVAH東京
信太美奈(vo)、江川真理子(vo)、まどかまるこ(vo、violin)、池上直子(dance)

8日(日)拝郷メイコvs坂本麗衣 in「拝郷メイコ2014ツキイチライブシリーズ『引力』Vol.3」@三軒茶屋Grapefruit Moon

10日(火)LOVE LIFE vol.4(火)@渋谷Milkyway
野佐怜奈とブルーヴァレンタインズ、エアインチョコ、ナショヲナル、ソライロシマウマ

11日(水)MIDWEEK BURLESQUE vol.11 –Bumpin’ in the rain-@渋谷7th floor
花蓮、Miwa Rock、Principessa Elegante、FUTON CONFUSING、Coppelia Circus (紫ベビードール)、Violet Eva (紫ベビードール)

13日(金)関東三大TOUR「つなぐと星座になる者たち」 @西川口Hearts
Avaivartika、Musiqua、TOYSPEAKER、sWan、リプルペイン

19日(木)セクシー大サーカス in 東京 vol.28@渋谷SARAVAH東京
イーガル、セクシーDAVINCI、山本プロデュースJAPAN、みま(みぎわ改め)、トスパフォーマーヒチオ(長岡岳大)

22日(日)歌の日@渋谷CLUB QUATTRO
TaRo&Jiro、BEGIN、BLACK BOTTOM BRASS BAND、山本隆太
   ダウン   ダウン   ダウン
 @新宿Motion
Peggies, Chirol / ポニーテールスクライム / ぽわん / 浮遊スル猫 / ARKS

23日(月) @渋谷gee-ge
カヨコ(大阪) ・平岡恵子 ・松崎ナオ ・healah

25日(水)@渋谷O-Crest
Avaivartika、ロメロ、赤坂シュウジ、RITZ knocking the door、H"palty

26日(木)Sound Affects@渋谷Milkyway
野佐玲奈とブルーヴァレンタインズ、矢沢洋子&THE PLASMARS、hystelic lolita、BARBARS

27日(金)関東三大TOUR「つなぐと星座になる者たち」FINAL @渋谷TAKE OFF7
Avaivartika、MUSIQUA、ToySpeaker、sWan

28日(土)女をなめんなよスペシャル Vol.5 ~ジューンブライドは私のもの!~@新宿LOFT
チャラン・ポ・ランタン、大森靖子、南波志帆、たをやめオルケスタ、水中それは苦しい、山田広野

29日(日)ミュージカル「Count Down My Life」@中野HOPE

30日(月)Jump Out Vol.9@渋谷chelsea hotel
TarO&JirO/bomi/Mississippi Duck Festival


    音譜    音譜    音譜

こうして見ると、初旬こそ個人的に大好きな郁彩、hinaco、坂本麗衣などの好演を穏やかに楽しんでいた6月だったが、中旬以降は激しくライブを攻めてたねー。

TarO&JirOと並んで、僕が飛びぬけて好きなバンド「Avaivartika」のライブを3度も見れたのが何より嬉しい。前にもさんざん書いたけど、このAvaivartikaはタロジロの前、2012年大会でEmergenza日本大会で優勝して世界大会に進出したバンド。あの予選を我らがAvaivartikaが勝ち上がっていくときの興奮は忘れられない。その翌年に、またしても前から応援していたタロジロが優勝した時は嬉しかったねー。メジャーデビューでは先を越されてしまったなあ。


しかも、今月はお目当てアーティストの対バンがすごく好きなバンドで、本当に美味しいライブが多かった。

その第一は、クアトロでタロジロの対バンだった「BEGIN」だねー。いやこの書き方は失礼だよね。もはや沖縄から日本を代表する超ビックネームのBEGINの方が、はるかに大物なのだから。彼らのことはイカ天で最初に登場して「恋しくて」を歌うのを見た瞬間からファンになり、以来、数十年も応援しているで。

自分のカラオケの十八番もBEGINばかり。生で彼らが歌う「島人の宝」や「オジィ自慢のオリオンビール」を聞けて興奮したなあ。客席も大盛り上がりで、自分も一緒になって歌ってしまった。

この数年は、メジャーを敬遠しているところがあるのだけど、やはり実力あるアーティストのライブはいいよねー。


さすがにBEGINほどのビッグネームの対バンは他になかったが、坂本麗衣のツーマンのお相手の拝郷メイコもいまや女性シンガーソングライター界では伝説的な存在。そのライブは充実きわまり、最初から最後まで惹きつけられた。


Avaivartikaが参加した「つなぐと星座になるものたち」ツアーに帯同した、TOY SpeakerやMusiquaも素敵なバンドで、思わずCDを購入したもんだ。


そして26日には、わが野佐怜奈とブルーヴァレンタインズが、これまた応援している矢沢洋子&THE PLASMARSと対バンしてくれたものだから、この日は嬉しくてしょうがなかったなあ。そうそう、矢沢洋子は本当にもっともっと売れてもいい実力派。父親の七光りなど関係なく、格好良くて、アゲアゲで、ロックンロールなアーティストなんだよ。


そんな6月、一番面白かったライブは間違いなく28日に行った「女をなめんなよSpecial」だ。チャラン・ポ・ランタン主催のこの企画もすでに5回目。いつも必ず楽しめるのだが、この日はまた出演者の取り合わせが最高!!!すご過ぎるよ。

特に大森靖子!!ぶちかまされたわー。女ばかり18人のビッグバンド「たをやめオルケスタ」のホーンセクションの音圧や、女子の潔いばかりの力強さも、本当に楽しかった。

イロトリドリ

音楽って、本当にいろいろあって楽しいよねー。


それでは6月はこのくらいで。さて、夏真っ盛りの7月はどんなライブで楽しませてくれるかなあ。

楽しみ、楽しみ

そうそう、先月、チャラン・ポ・ランタン、Avaivartika、蘭華のことを書いて満足してしまってたけど、一つ書き忘れてたことがありました。

長崎から、ギター弾き語りのシンガーソングライター、愛実(まなみ)が上京してきたんよ。彼女、すごく荒削りなんやけど、がつーんとロックかましてんねんビックリマーク あっこまでロックしてるシンガー、なかなかいないぜよっ。個人的には超注目株なシンガーだぜぃ(って方言 無茶苦茶w)

さらにいいのが、その変態っぷり!(笑)

いや、ごめん、性癖とか性格とか、そういうんじゃないよ。誰でも人知れず心に秘めて表に出さない変態性を、ぶっちゃけてるその歌詞に素晴らしい才能を感じるのだ!!とはいえ、これが大森靖子やアカシック理姫ちゃんとかのように振切っている最近多いタイプとは違う。ちょうど良いバランス、長崎で培った素朴さと逸脱しようとする心の葛藤の具合がいい。大森靖子もアカシックも好きだけどね(笑)

愛実はアコギながら、エレキのような激しい音を素晴らしいテクで鳴らし、聞いているとロックなグルーヴに体がノリノリになる。突っ込みどころだらけの歌詞に思い入れが強くなり、我を忘れて楽しんじゃうんだよねー。面白いアーティストですぜ。

昨年から数回、東京には遠征しており、その都度、彼女のライブを楽しみにしてたんだが、ついに覚悟を決めてこの4月、巨大音楽市場=東京に音楽で殴りこみをかけてきたという次第。上京当初は鍋も食費もなく、こいつどう生きてくんだよと周囲を心配にさせながらも、「何とかなるでしょ」と楽観的で前向きなノリが彼女らしいんだよな。

その上京第一弾となったライブが、4月11日に四谷のライブハウスで開かれた某音楽事務所の所属アーティスト中心のイベント。さらに大好きなきたはらいくさんと対バンで21日に四谷天窓。そして上京したてというのに、23日には青山・ひまわり広場で手をつなごうで、いきなりのワンマン!勝負かけてるね。いずれも中身のしっかりした、いいステージだった。

これから期待のひとりだ。


そして風さわやかな5月。今月も沢山、ライブみたなあ。数えてみたら17本だよ(笑)


その中でもやはり、ヒグチアイ「三十万人」リリースツアーファイナルとチャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカンの“五月病の特効薬ツアー2014”ファイナル@高田馬場・東京グローブ座が双璧の面白さだったね。これらについては別項で詳しく書いてるよ。


さあ、5月は他にどんなライブを見たのかチェック!

    音譜    音譜    音譜

1日(木)そんそんそんそん、踊らにゃそんそん~星降る夜の黄金の宴!~ @吉祥寺 Star Pine's Cafe
たをやめオルケスタ ・Gypsy vagabonz ・ハッチハッチェルオーケストラ ・コロリダス

2日(金)Tricolore Carnival@渋谷eggman
LADY, THE BITCH, filly shully, the walkin' blue, hal, つむとな,

3日(土)春風音楽会'14@赤坂グラフィティ
斉藤麻里 / 荒牧リョウ / 木下直子 / やもとなおこ/

4日(日)蘭華、バニラビーンズ、川嶋あい@横浜港北ノースポートモール

6日(火)斉藤麻里デビュー 11th Anniversary party 『11回目のプロポーズ』 @渋谷gee-ge
guest: 坂本麗衣

7日(水)MIDWEEK BURLESQUE vol.10 –Spring Fever-@渋谷7th floor
Dolly Tartan (from Glasgow, Scotland)、Miwa Rock、Marie Horn、Naspy、Stella VaroBalloon (紫ベビードール)、Violet Eva (紫ベビードール) 、

10日(土)7th HEAVEN'S JUNKIE vol.1@渋谷7th floor
ズクナシ/ The Doopers/to R mansion / Coppelia Circus / Gilbert de moccos

11日(日)ヒグチアイ「三十万人」リリースツアーファイナルワンマン@青山・月見る君想フ

12日(月)Celebration Of Love@中野ZEROホール
サルーキ= / Samuelle / 神山みさ / レーナ・マリア /Migiwa / 国分友里恵with岩本正樹 / 他

14日(水)SHINJUKU LOFT 15TH ANNIVERSARY「乙女の恍惚」@新宿LOFT
野佐怜奈とブルーヴァレンタインズ,アカシック,BELLRING少女ハート,水曜日のカンパネラ

16日(金)TINY SUNワンマン@赤坂カントリーハウス
w/Mowmow Girls

18日(日)May Song Book'14@赤坂 graffiti
坂本麗衣、谷口深雪、シミズリエ、成田圭

22日(木)Alternative Infinity Vol.10@渋谷 saravah東京
文角-BUNKAKU-、good afrernoon trio

24日(土)チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン“五月病の特効薬ツアー2014”ファイナル@高田馬場・東京グローブ座

28日(水)ハッチハッチェルオーケストラ ワンマンショー@渋谷O-WEST

29日(木)ズクナシ vs 千尋@六本木・新世界

30日(金)swordwomen@幡ヶ谷35.5℃
荒牧リョウ、小玉しのぶ、橋爪もも、楠橋かおり

    音譜    音譜    音譜

ふう、今月見たライブやステージを一つひとつ回想していたら、疲れてしまった。あまりにジャンルがばらばらで幅広いものだから(笑)

特に中旬以降が面白い。

ヒグチアイの、渾身の素晴らしいワンマンについては別に書いたから、そちらを読んで欲しいが、それ以外がなんとも楽しいのだ。

例えば14日の新宿LOFTといったらビックリマーク

水曜日のカンパネラのぶっとび具合はすごい。3人組ユニットなのにステージ立つ唯一の存在、ボーカルのコムアイは、なぜか鹿の解体ショウなどを企画。師匠のもとで鹿の解体を学んでいるという。はぅ叫びジビエ界のアイドルを目指す!?

その彼女が、打ち込みのエレクトロな楽曲にステージ上で、なんだか意味不明なラップを軽快にのせて客席にアピールする。大量の単語をばらまきながら特定のイメージを屹立させていく。なんか中毒性がある音楽なんだよね。それに、けっこう美形。

そこにアカシック!!女性ボーカルの理姫ちゃんの壊れっぷりがすごい!天然なんだけど、計算されていて、でもそこまでするかっというガチステージ。代表曲の「終電」とか、体が一緒に動いて踊りたくなる。

BELLRING少女ハートは、いわゆる地下アイドルグループでそこから頭角を現そうとしているグループ。こちらもはっちゃけている!かわいい女子中高生が、もはや大人たちがかなわないほど振切っている。いや、昔も今もそれこそ若者の特権なのだろう。ただ昔は男子が不良やって族をやってけんかし目立っていたが、今は女子がステージで体張って戦っているのだなあと痛感。

そして、野佐怜奈とブルーヴァレンタインズの現代のテイストをちりばめたGS、昭和歌謡、渋谷系のRemixテイストは楽しい!自分の世代のツボなのかもしれないが、そのステージには心がうずくのだ。


22日の文角は、女性パーカッショニスト2人組のユニット。芸大出身、大劇場でのミュージカル出演など目醒しい飛躍を見せる実力派の二人。確かな演奏力、ドラム、マリンバ、空き缶、コーラス、コイン、ウクレレ、そのほか様々なツールがすべて独創的な音楽を紡ぎだしていく様はエンターテイメント!!無条件に楽しい。

28日のハッチハッチェルバンド、29日のズクナシなど個性的な実力派バンドの好演には、音楽の可能性をつくづく感じる。世の中は広い。まだまだ面白いバンドはいくらでもいるのだから。

ライブは音楽の宝探し。踏み込めば踏み込むほど、奥深いものが次々と現れてきて、どこまでも探求したくなる。東京は、やはり深いよねー。

さあ、来月はどんなライブが待っているのか、楽しみ、楽しみ。

---------------------------------------------------------
ヒグチアイ『三十万人』リリースツアーファイナルワンマン
@南青山・月見る君思フ
---------------------------------------------------------

半袖で十分暖かい好天晴れの夕刻、開演30分前に「月見ル君想フ」に入ると、2階席まですでに満員ビックリマークみんななんという出足の早さ。それだけ、今日のこのライブを期待していたに違いない。

ワクワクして、近くの顔見知りと思わず声高に話しているファン、ファン、ファン…。100人は超しているだろうか。開演前の賑やかさに身を浸すだけで、会場の空気が期待感に満ちてくるのがわかる。キングクリムゾンのインストのようなBGMが、気分を一段と高揚させる。

スモークが一斉に吹き出し照明が落とされる頃までに、更にお客さんが増えて1階席はギュウギュウ。今夜は新アルバム『三十万人』リリースツアーの東京ファイナルだが、3ヶ月前に同じ「月見る」で開いたツアー初日のいってきますライブより客が多い気がする。この新アルバムを通じて彼女を知った新しいファンも、多数詰め掛けたのではないだろうか。


鍵盤 鍵盤弾き語りのヒグチアイだが、今夜は幕開けからスリーピース。オープニングで、畑利樹さんのドラムが激しく楽しげに打ち鳴らされ、山崎英明さんのベースがリズムを刻み出すのを、心から嬉しそうに見ている彼女の表情に、今夜のワンマンの成功を早々と確信した。だってアーティスト本人が楽しんでるライブは、聴く側もやはり楽しいもんだ笑顔

余談だが、昨今のヒグチアイはライブ前にくつろいだ表情を浮かべている事が多い。昔の張り詰めて攻撃的だったころに比べはるかに余裕を持っており、音楽をできる幸せを感じているようだ。ただ風邪や体調不良で声帯の調子が悪い時のライブ前は、開き直ったような笑顔を浮かべてる。不安の裏返しであり、お客さんへの責任感もあるのだろう。2月の三軒茶屋ワンマンとか、そうだったね。ところが今夜のオープニングで浮かべたのは、そんな不安をみじんも感じさせない笑顔だった。

 ♪   ♪   ♪

「朝に夢を託した」で歌いだした瞬間に、彼女の世界観が会場を覆い尽くしたのがわかった。その一声が、お客さんに着火した。強くて深くて艶があり、引きこまれる声がいい!

一瞬にして空気を作り出す彼女の歌力は、弾き語りシンガーたちの中では“最強”クラス。その実力を存分に発揮している。喉の調子は万全のようだ。

そして2曲目に「メグルキオク」。ヒグチアイの代表曲のひとつが早くも登場。イントロ聞いた瞬間に沸く会場。皆分かってる。ただ彼女の曲の中で間違いなく歌い手泣かせの難曲だろう。高速乱高下のメロディラインに、少しでも緩むと声がひっくり返ってしまう。しかし、今夜の彼女は激しいのに冷静。声を統制しつつ、バンドの音とシンクロしながら力感たっぷりに歌い上げていくから感動もひとしお。見事!


ヒグチアイはかつて、バンドライブを「挑戦」と位置づけ折々にMilkywayやO-WESTなどで演奏してきたが、音源の制作ではこれまでピアノ弾き語りにこだわっていた。それだけに、『三十万人』を初めてバンドサウンドで制作したことを「気軽に聞けてしまい、表面だけで受け取れれてしまう恐怖もある」とも語っていた。

しかし、そんなことを杞憂にしてしまうほど新譜の出来映えが素晴らしい。そして、そのアルバムの帯に大柴広巳が書いたように、「この人はCDよりライブの方が良いのです」!!事実、ご機嫌なアルバムの音より、今夜の生のバンドライブの方が楽しいといっても過言でなないパフォーマンス。3人の演奏の息がぴったりで、特に激しくもノリノリでドラムを叩いている畑さんの姿は興奮もの!それに引けを取らず、楽曲をドラマチックに仕立て上げる彼女の鍵盤も心を打ちぬく。最後まで、3人が創りだすグルーヴと熱気に会場は盛り上がり続けた。

 音符   音符   音符

<セットリスト>
1)朝に夢を託した
2)メグルキオク*
3)スニーカー
4)きらいになっていく*
5)新曲 ♪青春を忘れない~♪みたいな
6)ともだちのうた
7)かぞえうた*
8)書きかけのラブソング*
9)ホームタウン*
10)東京*
11)まぼろしのひと
12)ペーパームーン
13)黒い影*
14)ココロジェリーフィッシュ*
15)わたくしごと*
en1)永遠のウォーカー
en2)新曲 ♪Don't Trust Anyone, Over Thirty~誰も信じられないのは、自分を信じてないから♪

(*は、新アルバム『三十万人』の収録曲。全部歌ったね!)

  musiclove   musiclove   musiclove


Dr.とBa.が途中で退場し、ひとりで「ともだちのうた」をしっとりと聞かせてくれたところで、ゲストの大柴広巳くんが登場。

彼は『三十万人』のプロデューサーであり、ZOOLOGICALの首謀者であり、たいへん魅力的なシンガーソングライターだ。彼の代表曲「さよならミッドナイト」は、僕のフェイバリッドソングのひとつ。♪テーブルの上に缶ビールと~♪という歌詞のとおり、ステージに缶ビールが用意されたから、もしやこの曲を歌うのかと想ったが違った。

大柴氏がミニギター(ウクレレ?)で参戦して二人で「かぞえうた」を歌い始めると、会場が一体となって「イチ~イチ!」「ニ~ニ!」と大合唱。途中から畑さん、山崎さんもミニタンバリンンやギロを鳴らしながらステージに。「ロク!」で久しぶりに空けた缶ビール、で大柴さんがプシュッ!このためのビールだったんだね(笑)ステージ上の4人も楽しんでるし、客席のみんなもスタンディングで足がお疲れかもしれないが、みんな笑顔。あったかい時間があるライブ、いいよね。

続いてアルバムではセカイイチの岩崎慧さんとのデュエット曲「書きかけのラブソング」を、大柴くんと。本日の見せ場。大柴くんの声は岩崎さんほど甘くはないが、けだるさがいい!

   ♪♪♪   ♪♪♪   ♪♪♪


終盤、「黒い影」「ココロジェリーフィッシュ」とたたみかけるところで、会場のテンションは最高潮に。終盤なのにヒグチアイの声が力強く、安定していることといったら嬉しい驚き。歌い手としての彼女の成長がはっきりと分かる。シンガーとして成熟し、ますます花開いてきたのだろう。最後まで喉をためられないライブをかつては散見したものだ。

と書きつつも、今夜のライブが彼女の完成形なのかというと、それは大いに疑問。表現や発声の粗さが、時おり顔を出す。でもその粗さは荒さであり、アップテンポの楽曲のダイナミズムを生み出し、聞く者の心を鷲づかみするのだ。激しい曲では鍵盤を立ち弾きして、全身で歌に没入する。その勢いに、お客さんは終始ゾクゾク、ワクワクしてしまう。

つまり、彼女はまだまだ未完であり、潜在力を大いにかんじさせてくれる大器なのだ。なんて魅力的!


本編のラストは「わたくしごと」。個人的には今夜いちばん感動したのがこの曲。おんぷそれでも僕は夢を見たいから~、それでも僕は夢を見たいから~、それでも僕は夢を見たいから~おんぷ とエンドレスにたたみかけるラストは圧巻。様々な思考が頭をよぎる。ヒグチアイの未来を、自らの生き様を、夢に生きる多くの人たちの姿を。

ヒグチアイは24歳ですでに、インディーズの弾き語りアーティストのなかでは知らぬものはいないくらいのビッグネームになりつつある。そのライブを一度でも見たミュージシャンは皆、彼女の歌に打ちのめされ、ファンになる。少なくとも偉大なる「才能」の未来に期待を抱かずにはいられなくなると聞く。同じアーティストでもそうなのだ。

この1、2年で一般のお客さんにもぐいぐいと浸透しており、節目のワンマン会場としてキャパ150人程度の「月見る」ではもはや手狭だ。今夜もSOLDOUTだった。ここまで自分の力で伸し上がったアーティストの「次」は、当然メジャーデビューで然るべし。本人が「それでも僕は夢を見たいから~」と歌う姿に、僕らは大いに期待してしまうのだ。



アンコールは「永遠のウォーカー」。「さすがに昔のままでは恥ずかしいから」とオリジナルからがらっとアレンジを変えて熱唱。最近は20歳前後に出したアルバム『ストリートライフ』と『ナリカケ』の楽曲はほとんど演奏しない。まあ、確かに歌詞が若い。「大人になりたい~」とか(笑)でも「永遠の~」は今でも通じるいい曲だから、もっと演奏して欲しいのになあ。今日聞けて良かったが。

そして、本当に本当のラストに新曲。何十年も前に流行った「Don't Trust Over Thirty」なんてフレーズを持ち出してきたのには苦笑。人を信じられないのは、自分を信じてないからだよ、って歌に仕立てていたが、Over40にしてみると違和感(笑)浜田省吾を思い出したw


  音譜   音譜   音譜

『三十万人』リリースツアーファイナルワンマン、いいライブだった!ますますヒグチアイが好きになった。本心から、いつまでも歌い続けて欲しいと願う。頼むからやめないでね。

君がいつでも背負っていたもの、僕に少しだけ分けて欲しいよ。