「PEACE AROUND THE STREET」@表参道GROUND
出演:ariel、Yurina、加賀其龍太、吉田拓矢、cotomo、渋谷めぐみ
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今夜は久し振りのフルバンド、しかも彼女にとり節目となるライブを過去に何度か開いたこの箱。始まる前から期待値は高かった。
この箱とは表参道GROUNDのこと。かつてはライブハウス「表参道FAB」として、連夜、楽しい音楽ライブが開かれていた。それが2010年7月、運営母体のワタナベエンターテイメントの方針転換で、同社所属のお笑い芸人のための常設小屋になり、GROUNDに改名したのだった。
FAB時代、ここでは数々の思い出深いイベントが開かれていた。その中でも特に個人的に思い入れがあったのは「flower voices」という企画。女性シンガーのための企画で、一定期間ホストを務めるシンガーが、実力を認めた親しいアーティストを招いて、ほぼ隔月でライブをやるというもの。
ホストの人選が秀逸で、結果としてメジャーか準メジャークラスの女性アーティストが集うクオリティの高いイベントだった。着席で約150席の会場は毎回ほぼ満員。はせがわみやこ、拝郷メイコ、辻香織、池田綾子、SHUUBI、玉城ちはる、清家千晶、松本英子らがホストのバトンを受け渡しながら、このイベントを盛り上げてきた。
FAB閉鎖からほぼ9カ月後、この企画を復活させようと渋谷gee-geでSHUUBIと辻香織が2011年4月にスタートさせたのが「flowers」というイベント。が、隔月開催で第6回目となった先日の土曜日が最終回となってしまった。残念。FAB時代はハイネッケンがスポンサーにつき、ライブハウス側が事務局となって動くプロジェクトだったが、gee-geではあくまで個人レベルの企画ライブであり、負担は重く、継続は難しかったのだろう。SHUUBIちゃん、辻ちゃん、ご苦労さまでした。
おっと脱線。話を戻すと、渋谷めぐみにとってもFABは思い出深い箱なのだ。例えば彼女が代表曲として歌っている「ユメオチ」という曲は、2008年3月11日に、ここFABで開いた彼女主催の企画ライブがレコ発だった。また、実は渋谷めぐみも、今夜のライブに出演した学生と同様、かつてワタナベエンターテインメントの音楽学校の生徒であり、卒業ライブやオーディションなどをこのFABで体験している。そういう意味では、凱旋ライブともいえるのだ。
(終演後の1枚)
と、いう訳で今夜のライブの主旨はよく判らないが、出演した6組のうち、前半の3組はワタナベの生徒たちとのこと。まだまだ未熟で、今後、どこまで音楽で立身できるかは完全に未知数。大いに精進せよ。
後半3組はそれぞれキャリアのあるミュージシャン。
だがそのトップで出てきた吉田拓矢は、風邪を引いて「きれいな声が出ない」(本人談)ためか、わずか2曲のみ。それでも、男らしい声と風貌、ギター弾き語りで魅せた。特筆すべきはサポートのカホンで、体を弾ませるタイトでジャンピングなリズムを刻み、大いに盛り上がりを作り出していた。カホンもプレーヤー次第であんなに素晴らしい楽器になるのだなあと再認識。
続いて登場したのは「cotomo」。空、大地、海のエネルギーを味方に、生ギターで弾き語る「アースカラーポップ」という触れ書き。基本は女性のギター弾き語りで、それをアコギとパーカッション(ボンゴやジャンベ)がサポートする3人編成。
まあ、狙いは分からなくもないが、アースカラーなポップとしてはもっとボーカルに個性が欲しかった。声に誰にも負けない透明感があるとか、どんな苦しい時でも母に抱かれるような優しさに包まれるとか、その歌を聞いていると胸が苦しくなるようなノスタルジーが溢れてくるとか。そういうアーティストを知っているだけに、そのどれでもない彼女が「空、大地、海のエネルギー」を味方にしている感じは無かったな。
しかも、MCは一切しない方針だとかで、最後の1曲を終えてそでに引っ込むまで、彼女は一言も話さず。「昨年の忘年会のゲームで負けてそういう罰を受けた」とか、彼女のギターの師匠で今夜も彼女をサポートしていたおっさんが話していたが、意味不明。一番重要なのはお客さんと彼女の間に、コミュニケーションを作ること。何かをステージの上から客席に伝えようと少しでも思っているなら、例えたどたどしくても、本人が自分をさらし、自分の言葉で語りかけるべき。せっかく期待してたのに、反感しか残らず。
ついに本日のオオトリ、渋谷めぐみだ。
吉田拓矢が2曲で引き上げてしまったせいか約10分まきだったが、転換の時間をゆっくり取り、5分まきでスタート。それでも当初告知していた彼女の出演時間より早くなり、ファンの何人かは1曲目を聞きそびれてた。
大箱に合わせ、今夜はフルバンドを率いて登場だ。バンドのリーダーはギターの三井真一。そしてキーボードの古賀さん、ドラムの西川君、ベースの柴田君という顔ぶれ。実力のあるミュージシャンばかりなだけに、今夜の演奏はいつもと比べ、ひと味もふた味も違っていた。
特にアレンジを古賀さんが色々と手を入れてくれたおかげで、いつも歌っている曲と趣ががらっと変わり、彼女をよく聞いているファンにとっても新鮮な音に。バンドらしく、激しく、強弱のメリハリがあり、スケール感大きい演奏になった。
その演奏にのり、渋谷めぐみも、初のアレンジに数カ所で戸惑いを見せつつも、パワフルにメロディアスに、格好良いシンガーっぷりを見せつけた。良かった。
特に大きく変わったのがバラードの「会いたい」。キーボードだけの静かな伴奏のAメロを抑えたボーカルで入り、Bメロ~サビへと徐々にギターやドラムの音が加わりスケールアップ、ラストには壮大なスペクタルで「会いたい」という切ない気持ちを歌い上げた。このアレンジで是非レコーディングして欲しいくらい。
また、いつもはアコギの三井さんのエレキが、1曲目の「dejavu」の前奏から突っ込む、突っ込む。ギンギンに疾走するギターリフに、華やかな音色をたっぷり散りばめる古賀さんのキーボードが絡み合い、冒頭は渋谷めぐみが取り残されている感さえ(笑)こういう演奏で攻めるなら、ボーカルも冒頭からトップテンションでがつん、といかなきゃね。それでも、Aメロの途中からは完全にリーダーシップを奪い返し(三井さんらがサポートに徹した?)、アルコールで頭も体も溶けてしまう女の情念を爆発させていた。
さらに今日は新曲も。題名は「Tiffany」。昨年12月29日にリリースした「dejavu」のテーマが酒なら、「Tiffany」は宝石だ。男性目線で、


サビの入り「ずっと~」から始まる数小節のメロディラインがおしゃれで、これを彼女が歌いこなしたら、かなり格好良い曲になりそう。とても楽しみ。
そして、ラストにここでレコ発を演った「ユメオチ」。これもジャジーで夜の社交場に似合う彩りを放つ曲だが、最近ではサビにフリをつけ、ノリノリでお客さんにも参加してもらう楽曲に。客席後方にいた他の出演者さん達も巻き込み、おおいに盛り上げて、旧FABにその成長ぶりを見せることができたのではないか。
中でもバンドに一番合っていたのが、アンコールで歌った「magic」か。ものすごいドライブ感でぐいぐいと持って行く。渋谷めぐみは、こういう大箱でがんがんとロックしているのが一番似合うな。渋谷O-WESTとかRUIDOやLOFTとか、そういうライブハウスでの活動をもっと増やして欲しいと思う。勿論、バンドで。それは、ソロシンガーにとっては大変なんだろうけどね。
【セットリスト】
1)dejavu
2)愛ことば
3)Tiffany
4)会いたい
5)ユメオチ
en. magic