-----------------------------------------------------------
国境なき楽団プレゼンツ「あったまろう夜」第二夜@下北沢Com.Cafe 音倉
出演:玉城ちはる(Vo)菅大祐(gt)大石由梨香(pf&cho)いたしか大介(perc)
-----------------------------------------------------------
今夜の由梨香さまも美しかった。ってとこから書き始めたら、すかさず「違うだろ!」と玉城ちはる姐さんに突っ込まれるな(笑)
なんといったって、今夜はたっぷり2時間、玉城ちはるの事実上のワンマンショー。「私が主役よ」と、アピールしまくってたから(笑) また、今夜は主宰がNPO法人「国境なき楽団」。大震災の被災者も招待し、音楽を通じ、イベントを通じ、人々の心を少しでも暖かくする、そんな夜になればとの思いが籠ったイベント「あったまろう夜」だ。自身も平和活動をけん引する玉城ちはるが、意気に感じてないわけがない。
いつもの下ネタは抑えめで(笑)、どんな思いで被災者や国際交流活動に取り組んでいるか、その中で抱える葛藤や焦燥などを、トークや対談コーナーで赤裸々に語る姿は崇高だった。もともと彼女には敬意を抱きその行動を見ているので、そうした姿に驚きはないが、改めて彼女が灯す希望の火に、心の中まで暖めてもらった気分になった。
そして彼女のそうした部分を引き出したのが、国境なき楽団の庄野真代さん(飛んでイスタンブール♪)だ。国境や人種の壁を超え、音楽の力で心を癒すことをに邁進しているこのNPOは、被災地や老人ホーム、世界の貧困地域など様々な場所へ訪問コンサートで訪れている。日本の家庭で眠っている中古楽器を集め、自分たちで磨き修理し、それを楽器を求めている海外の孤児院や養護施設、障害者施設などに送る無私の活動に力を入れている。
前?代表の庄野さんの人柄が素晴らしく、穏やかな語りの中に強い信念が見える。多分、たくさん迷いや悩みもあったことだろうが、それを乗り越えるなかで紡いできた言葉には、とても重みがあった。だからこそ、ツイッターで誘われたという玉城ちはるも、二つ返事で引き受け、さらに今夜この場に来られることをとても楽しみにしていたのだ。
また、今夜の2時間をまるごと任されたにも関わらず、あえて彼女のたっての希望で庄野真代さんとの対談コーナーを設けた。対談では、自分の迷いを正直に吐露する玉城ちはるを、大きな心で受け止める庄野さんの姿が美しかった。僕が若いころ「飛んでイスタンブール」(1978年)で一世を風靡し、紅白にも出場したのが庄野真代だ。年齢はすでに50代だろうが、その人間性から染み出す美しさは、とても魅力的だった。
だから、単に音楽が楽しかっただけでなく、庄野さんの被災地支援の取り組みや思いを知ることができ、社会や人の心について考えさせられる、今夜はとても有意義な時になった。玉城さんにしろ、庄野さんにしろ、真剣に全力で人と向き合っているからこそ、本当の優しさや思いやりが溢れるのだと思う。
さんざん持ち上げた一方で書いちゃうがw、今夜の玉城ちはるはかみかみ(笑)美しい由梨香さまに、いつもの「この女のそういう気取ったところがいや、私より目立たないで」発言をしながら(もちろん冗談で、お約束なのですが)、玉城さんがEMILYの出だしの歌詞が浮かばず、代わって歌い始めた由梨香さまに「ほらほら早く歌い出さないと、私に主役奪われるわよ」とSっ気たっぷりに突っ込まれる始末。
別の曲では途中で歌い直したり、1部終盤では「あと1曲です」といって歌い始めそうになり、「あ、あと2曲だった。ちょっとやり直す」と言って爆笑を誘うなど、頻発するドジ?ネタ。香港ツアー翌日ということで疲れていた部分もあったのでしょう、という事にしてあげよう(笑)ただ、彼女のそういうところも含めた親しみやすさに、ファンは惹かれるのだよね。平和活動やホストマザーとしての真摯さを見せながら、常に笑いに包まれる、彼女の両面が人間味溢れているのだ。
そしてライブも魅力たっぷりだった。
今夜の衣装は白いワンピに黒のスパッツ。そして満面の笑み。まずはギターの菅さんの伴奏で「ここにいること」を感情たっぷりに歌うと、もうそこは彼女色の空間に。1曲歌って、お客さんに「今日は寒いけど、暖まろうよ。玉城ちはるのライブはお酒が入った方がいいよ。どんどん飲んで。お鍋もあるから、歌の最中でも左手を上げて、おかわり取りに行ってね」とくつろがす。
妹のことを思って作ったという「君にありがとう」をゆったりと、思いやりに満ちた目線で歌い共感を集めたところで、前日までの香港ツアーも共にしてきた大石由梨香さまを呼び込む。すると、マスタードカラーのおしゃれなヒール(香港でご購入したそう)と、黒地に黄や茶の柄が華やかなワンピースという出で立ちで、大石嬢が気取って登場する。もちろん玉城ちはる目当てだけど、実は由梨香さまも見たいというのが男の本音であることは、否定できない(笑)
香港ツアーは、玉城ちはるがホストマザーとして面倒見てきたアジアからの外国人留学生OBが、現地で行われるイベントに彼女を招き実現した。それは盛大なイベントだったそうで、由梨香さまと二人で着物姿で上がったステージには、2000人以上のお客さんが詰めかけたという。
当然、現地の新聞にも紹介されたのだが、その写真のフォーカスが由梨香さまに合っていたことや、すごい歓待を受けたことなどを、大爆笑のトークで紹介。ぐいぐいと音倉をアットホームな空間に変えていく見事なトークだ。
今夜の曲のなかで一番感動したのが、久しぶりに聞いた生の「風になれば」。これにはぞくぞくした。菅さんのアレンジもいい。音をそぎ落とし、シンプルに際立たせた沖縄の島歌のような音階が、どこか懐かしく暖かい風を想起させる。その演奏にのって、丁寧に、そして力強く、

かぜになり、かぜになれば~

とサビをリフレイン。今夜は特に高音がきれいに出ていて、その歌唱力の素晴らしさに感動が高まる。
リラックスした雰囲気のまま歌った「好きだよ」は、ひしひしと思いが伝わってくる。これには、やられた。これまで聞いた「好きだよ」の中で最高の出来だったかも。絶好調の彼女の歌には、心をわしづかみする力がある。
ここで「あと1曲です」といい間違い、やり直して歌ったのが香港でも歌ってきたというテレサ・テン「時の流れに身を任せ」。分かりやすく、日本人誰もが耳に馴染むメロディラインの曲だけに余計、歌唱力の差がてき面に現れるのだが、玉城ちはるの「時の~」もじわりきた。
~~~第1部~~~
1)ここにいること(gtのみ)
2)君にありがとう(同)
3)風になれば(gt&pf)
4)好きだよ(同)
5)時の流れに身をまかせ(pfのみ)
6)夕立ち(同)
~~~第2部~~~
〈トークセッション〉玉城ちはるvs庄野真代
7)LOVE(Nat King Coleカバー、gt&perc)
8)LIFE (gt&pf&perc)
9)EMILY (同)
10)花 (喜納正吉カバー、同)
11)前を向いて (同)
en. 翼を下さい by 玉城ちはる&庄野真代
第2部は、先日のバレンタインデーライブでも歌っていたジャズのスタンダード「LOVE」を華やかに。この日はほかにもカバーが多かった、なかでも印象深かったのが喜納昌吉の「花」だ。

泣きなさい 笑いなさい いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ

どうして沖縄の旋律はこう心に響くのだろうね。先日、KATA-KANAがライブで歌っていた「童歌」も素晴らしかったが。
最後は「前を向いて」。この曲を聴くと、いつも力をもらえる。それでも顔を上げて生きていこうと、誰かを愛していこうと、思えるんだよね。歌詞そのままなんだが(笑)、その歌詞に説得されるというか、洗脳されてしまうのだ。それもまた歌の力であり、玉城ちはるという巫女のことばが心に入ってくるからなのだ。
アンコールでは、庄野真代さんを招きいれる。もしや「飛んでイスタンブール」かと思ったが、それはさすがになく、誰もが知っている、そして庄野さんもライブでよく歌っている「翼をください」。会場のお客さんにも歌うよう促され、やがて声を揃えて大合唱に。この日、この場所に集った皆の心が一つになった瞬間だった。
玉城ちはると大石由梨香は、4月16日に「Full Moon Nude」略してフルヌード(by玉城ちはる)のコラボライブを、渋谷JZBratで開催予定だ。こちらも、今夜とはまた違う、お洒落でムーディーでジャズテイスト溢れる素敵なイベントになることだろう。今から楽しみで仕方ない。
「あったまろう夜」。素敵なイベントでした。