今夜のライブ、かなり楽しみにしていた。渋谷めぐみファンとして彼女のステージはいつでも期待しているが、それだけではなく、ツーマンのお相手が「せきぐちゆき」だからだ。
せきぐちゆきのライブは見たことが無かったが、その名前はずっと前から聞いていた。昨年末のレコード大賞では、なんと優秀アルバム賞を授賞。いま話題のアーティストだ。数曲、どこかでかかっているのを聞いたことがあったが、どんなステージを見せてくれるのかワクワクしていた。
出番は先に渋谷めぐみで、後からせきぐちゆきだったが、せきぐちゆきの事を先に書く。
この日はキーボードの弾き語り。一人だけのステージだ。真紅のドレスと、長い黒髪、強い目力が印象的な整ったルックス、落ち着いた大人の女性風で、存在感たっぷり。いいねー、大人の女は大好きだw
そして、歌いだした彼女の第一印象は「五輪真弓みたいだな」だった。昭和の歌謡曲のテイストがたっぷり。しかも、この「隠れ家」の歌い方も五輪真弓のよう。なるほど、こういう歌手だったのかーと納得。
さらに聞き進めていくと、五輪真弓だけでなく、高田瑞恵や岡村孝子、日吉ミミ、テレサテンなどなど、曲ごとに昭和を彩った大歌手たちの影が見える。それを、せきぐちゆきという一つの個性が我が物として歌いこなしていく。面白いねー。しかも、曲ごとの完成度は高いし、歌唱力もあるし。
彼女のようなSSWが、レコ大のアルバム賞をなぜ取れたのだろうと疑問だったが、納得するものがあった。きっと審査委員たちに、彼女のマルチな昭和歌謡曲ぶり、そのテイストが受けたのだろう。数多くリリースされるアルバムの中で、現代においてこれは異色であり異能だ。裏にどんな駆け引きがあったか、それは与り知らないが、面白いところを突いていると思う。
1)隠れ家
2)地獄花
3)めぐり逢い交差点
4)メンズの味はお好みで
5)ひなめぐり
6)未来物語
7)桜通り十文字
8)歩み
en. 卒業
アラフォーおじさん世代としては、結構ツボにくる音楽だ。せきぐちゆきさんも明るく、ノリのよいトークはラジオ風。昔のオールナイトニッポンのような雰囲気。栃木なまり交じりの言葉も庶民的で良いのでは。ほんとうに、個性的なアーティストだ。
さて、順番が逆になってしまったが、今夜の渋谷めぐみのライブもなかなか良かった!
今夜の客席はほとんどがせきぐちゆきさんのお客さん。渋谷めぐみファンは5人ほどしか見かけず。彼女も相当不安だった様子。特に昨年末からユメオチをお客さんに一緒に踊ってもらうことを定番にしているのだが、自分のファンが少ない中で、浮いてしまわないか、心配だったようだ。
ところがそれは杞憂に。彼女のステージが始まると、あまりにもせきぐちゆきとは違う音楽に最初は戸惑っていたお客さんも、徐々に彼女の世界に入っていく。3曲目の「秘密」からアップテンポな曲を並べて、ユメオチへノリを作っていこう、という作戦(?)は狙い通り。秘密ではまばらだった手拍子が、東京ではかなり増え、ユメオチの時にはみな大きく手を打ち鳴らし、さらに振り付けまでやってくれた。
【セットリスト】
1)dejavu
2)trap
3)秘密
4)東京
5)ユメオチ
6)会いたい
この時点までには、最初、興味なさげにしていた何人かのせきぐちゆきファンも、ステージに注目している様子がありあり。横から彼らの表情を見ていて、ちょっと嬉しくなった。渋谷めぐみも、こうして見ず知らずのお客さんをステージングでここまで乗せられうようになったのだ。感動。
お客さんの意識のベクトルがステージの自分に集まってくるのって、きっと感じるのだろう。彼女も最初こそ緊張感が見えたが、じょじょにリラックスしていくのが手にとるように分かる。最後の「会いたい」では、バラードを情感たっぷりに歌い、お客さんを酔わせていた。
別の日の映像だけど、「会いたい」はこんな曲
最初に歌ったのが新曲「dejavu」で、この曲は渋谷めぐみのイントロとして打ってつけの内容。面白いのだが、今夜聞いて思ったのは、1曲目に歌うときはもう少し前奏に工夫がいるかなという点。前奏からポンポンと歌に入ってしまうと、知らない人は戸惑う。もっと厚みがあって、この後の展開を予感させてワクワクするような、イントロのインストがあっても良いように思う。例えば、少しスタンダードなジャズのフレーズを入れて、そこから変化していって曲につなげるとか。初めてのお客さんの「つかみ」には工夫の余地ありかな。
でも間違いなく、この1年で渋谷めぐみは進化しつつあると思う。