2011/11/18 村松崇継、山下由起子、蘭華@白寿ホール | 音楽偏遊

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「村松崇継CONCERT 2011 ~Women's Happy Life~」@代々木八幡・白寿ホール
出演:村松崇継(pf.)、山下由紀子(perc.) ゲストボーカル 蘭華
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ピアニスト村松崇継のコンサートを聞きに、とことこと、渋谷駅からセンター街を突き抜け、ソングラインを通り過ぎ、代々木公園方面へ歩いていくと、白寿ホールに。クラシックコンサートでは、音響やホールの美しさで人気があるホールだ。

高校在学中のデビューから、今年が15周年。彼自身が作曲するその楽曲は、端正で華やかな。これまでに何十という映画やCM、ドラマのために楽曲を書き下ろし、多くのアーティストやミュージカルなどのアレンジメントやプロデューサーとしても活躍している。直近では、映画「アントキノイノチ」の音楽や、NHK土曜ドラマ「蝶々さん」の音楽を担当。ロビーには、その両作品の製作からも含め多数の花が贈られていた。




そして今夜は、小川淳子プロデュースの神戸発ファッションブランド「Chesty」と村松氏のコラボで、女の子が聴くだけでハッピーになれる曲を詰め込んだという11月9日発売の新アルバム「Lovely Notes of Life」の曲を中心に、村松崇継1年3ヶ月ぶりのコンサートになった。

ステージには、スタインウェイのコンサートピアノと、夥しい数の打楽器が揃ったパーカッションのセット。今夜、僕が特に楽しんだのは、実は村松氏ではなく、このパーカッションを駆使して素晴らしい変化を曲につけていた山下由紀子さんだった。



とにかく、すごい。カホンに腰掛け、目の前にはコンガ、ジャンベ、ボンゴにバスドラとスネアまでセットし、その周りにシンバルが3種類、鈴やチャイムやジャラジャラ鳴らすやつやら、鉄琴やら。スティックを置く台にはマラカスや鳥の鳴き声などなど小道具がたんまり。それら全てを、今夜のコンサート中に存分に使いきって、無数の音色を描き出す。見ているだけで楽しい。

彼女の活躍もすごい。野村万野丞の狂言、蜷川幸雄の舞台、三谷幸喜の芝居などでパーカッションを担当するほか、米米クラブをサポートするなど活動の幅はとても広く、高い評価を得ている。女性パーカッショニスト3人組のバンド、ミニマムズでも活躍する。

そんな二人の演奏は、端正で美しい音色を響かせる。村松氏(といってもまだ33歳らしい)の鍵盤を叩く指は、とても軽やかだ。

中盤で即興コーナーがあり、会場のお客さんから弾いてもらいたいテーマを募る。1つは明日誕生日の女性へのバースデーソングに、もう一つはそろそろ母への感謝を形にしたい40代の心を、それは見事にその場で曲に仕立て上げ、美しくピアノ即興で奏であげた。すごい才能に、お客さんも嘆息がもれる。

そして終盤への折り返し地点で、女性シンガーの蘭華が登場。いつものように、美しいチャイナドレス姿に、「美しくてドキドキしてしまいます」と村松氏も惑う(笑)蘭華のドレス姿は本当にきれいだ。

実は村松氏&Chestyのコラボアルバムに蘭華も参加、彼が作曲・彼女が作詞し歌っている曲が収録された。その曲「希望という花を」を、今夜はここで歌うのだ。

大きなホールにも関わらず、彼女はその美しい所作とチャイナドレスで存在感たっぷり。まったく見劣りしないステージを見せてくれた。ただホールを意識したのか、ゲストで遠慮したか、大切に丁寧に歌いすぎている感じ。堂々と100%の蘭華を出して歌っていれば、白寿ホールを埋めた200人以上のお客さんをもっと感銘させれたのに、とちょっと残念。

それでも、彼女ならではのオリエンタルな雰囲気と素敵な歌声で歌われた「希望という花を」は、強い印象を残せたのではないか。

そしてもう1曲、彼女が10月19日に発売した新アルバム「昭和を詠う~大切なものへ~」の表題曲でもある「大切なものへ」を、村松&山下の演奏で暖かく、思い入れたっぷりに歌った。この曲は今年の大震災の被災者を思い、その少し後に亡くなった父親や郷里に残された母親を思い、すべての人を勇気付けたいと書いた曲。白寿ホールに響いた、彼女の歌声とその歌詞には、心を揺り動かす何かがあった。

「大切なものへ」
音譜夢から醒め逃げる前に 嘆く前に 今できること
辛い時も病めるときも あなたの側にいるからね
だから未来を捨てないで
あなたを愛する人がいる 人とがいる音譜

サビはこんな歌詞。いい曲だよ。これからの蘭華を代表する曲になると改めて確信した。

ゲストの蘭華はこの2曲だけ。ちょっと残念だったが、村松氏のコンサートを最後まで聞いて堪能しました。舞台セットはすでにクリスマス。急に肌寒くなってきた今日この頃。そろそろ、こんなハートウオーミングで、冬めいたコンサートも良いね。

蘭華は現時点で、年内はあと3回歌うことが決まっているようだが、どれも行けないかも。大阪と浦安のインストア、川崎地下街のフリーライブ。このうち、川崎は物理的には手ごろなのだが、別のライブとバッティング。うーん、別の日にLOOPや天窓で歌わないかなあ。期待してます!