「いい女のいいロック」@赤坂Graffiti
出演:Jiminy Cricket →斉藤麻里 →渋谷めぐみ
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今世紀で唯一「11」が3つ並ぶこの日、11=「いい」という語呂合わせと、ロックをかけてタイトル先行で決まったこの日の企画。主催の渋谷めぐみが声をかけたのは、小玉しのぶと斉藤麻里でした。
小玉しのぶのJiminyCricket とは、渋谷めぐみがパーソナリティを務めたFM世田谷の音楽番組「BIG-TIME plus-sum」の公開録音ライブに招いて以来の仲。斉藤麻里とは、実はこの日が意外なことに初対バン。シブメグのサポートを務める二人のギタリスト、高田慶二と三井真一通じて縁があった。
もう一組ぐらい、本格的な女性ロックバンドか女性ボーカルバンドが入ってれば、なお面白かった。LAZY guns BRISKYとか、ぐるぐるとか、Avaivartikaとかね。まあ、それでも、自分的には好きな3組が一同に集まったのでとても楽しかったですが。やはりロックイベントなので、半分以上はスタンディングで臨戦体制(笑)持ち味こそ違うけど、3組ともロックしていて体は終始うずうず。もっとみんなで踊れたらなお楽しかったな。
1番手は、若き才能溢れる女性ロッカー、小玉しのぶ擁するJiminy Cricketだ。
みな同級生でまだ二十歳そこそこ。同級生といっても音大とかのではなく、mixiでバンドメンバー募集して、たまたま集まった面子が同じ年だったというから面白い。それが、この短期間で結束力を高め、メキメキと腕を上げて、いいバンドに育ってきた。若いうちの成長スピードって、本当に早いとつくづく思わされる5人組だ。
若いだけあって、とても意欲的。今夜は、現時点のJiminyの代表曲といえる「キオク」と「存在価値」を敢えて封印した。別の曲で、どうロックなステージにできるか、彼らなりに課題を設け、チャレンジしていたのだ。新曲も次々と発表しているし、これからまさに上っていこうという勢いが輝いている。
そのステージはロックベントにふさわしく、ボーカルの小玉しのぶのパワーが炸裂。全身全霊で力を込めて歌っているからが、決して音痴でも絶叫でもなくメロディラインに心を揺さぶられるから、こっちも熱くなる。ステージを所狭しと動き回り、客席を煽る。まだまだ荒削りだが、音感も良いし、素晴らしい潜在能力を感じる。ロッカーとして、本当に華があるボーカリストだと思う。
1)パトラメロコリラー

2)脳内エクスタシー
3)恋愛革命
4)エスカルゴ(new)
5)LIVU
6)青い空と少年
7)tone
ステージは、彼らの曲の中では一番明るく楽しいパトラメロコリラーで、一気に会場をアッパーな雰囲気に変え、激しい脳内エクスタシーで圧倒。勢いそのままに「恋愛革命」で、さらに盛り上げた。
しかし、決してイケイケではない。むしろ個人的にはバラードの「LIVU」などで見せる小玉しのぶの切なさ、脆さにヒリヒリと惹かれるのだ。今夜はやらなかったが、彼女のアコースティックギターソロから入る「キオク」の冒頭とか、ガツーンとやられる。今後、本当に楽しみなバンドだ。
2番手は斉藤麻里。今夜の企画はロック。会場を沸かすことにかけては、最近の大活躍が記憶に新しい彼女のこと(しかも拝郷メイコ、伊藤サチコらを向こうに回し、ここGraffitiで!)。それがロックするというのだから、楽しみ極まりない。
しかも今夜は、気心知れたギタリスト三井真一率いるフルバンドが彼女を強力にサポート。とれだけ盛り上げてくれるか楽しみもひとしおだった。
ところが意外に、静かなスタート。斉藤麻里曰く「激しいばかりがロックじゃない。バラードにこそ、私はロックを感じている」。うん、バラードこそとは言わないが、ロックは心であり、魂だと思う。入魂のバラードは、つまらないバンドサウンドより、ずっとロックを感じることはよくある。
1曲目は「星くず」。元々、この曲を収めたアルバム「園」でギターを弾いてたのが三井さん。ギター弾き語りの斉藤麻里と、同じJ-45を駆使して、コードと音色を分担したり、競い合うようにジャカジャカ鳴らしたり、勝手知ったるアレンジは意気ぴったり。
「瞬きシャッター」のかわいさ、「サイクル」の切なさも良かったが、やはり今夜は弾みたいところ。最後はやはり、みんな盛り上がろう、とお客さんを立たせてからの「メロディ」と「ダイブ」こそ今夜のクライマックス。客もノリノリで、繰り返すコール&レスポンスに声をあげ、汗も飛び散る熱いステージになった。
1)星くず
2)瞬きシャッター
3)サイクル
4)明日映画を見に行こう
5)Melody
6)ダイブ
トリは今夜の企画ライブを主催した渋谷めぐみだ。
大人のロックで定評ある彼女。主催として当然、小玉しのぶや斉藤麻里を上回るパフォーマンスを見せて欲しいところ。期待が膨らむ。
それにしても、この1年で彼女もぐんと飛躍したとつくづく思う。こうした企画ライブをGraffitiで開き、今夜のような出演者を招けるようになったのだから。先日のHalloweenイベントでも、二人目のジャイナとLady the Bitchを向こうに回し引けを取らなかった。最近の彼女の企画イベントが徐徐にスケールアップしていて、なんか嬉しい。
で、今夜のステージ。渋谷めぐみは見事にロックに決めてくれた。
お馴染みのギタリスト高田さんがのエレキ、西川くんのドラム、堀野さんのベースサポートを受け、冒頭からジャズっぽい代表曲「ユメオチ」をややテンポアップして、ビートを利かせたロックなアレンジで。これがまた踊れるグルーヴたっぷりで、テンションあがる

そこからは「eternally」「magic」とアッパーな曲で弾みをつけていく。うーん、さすがや。Jiminyとも斉藤麻里とも違う、大人の色気漂う激しさに、見ている側も高揚してくる。今夜はよく声も出ていて、前の二組にまったく引けをとらず、完全に自分の空気でグラフィティを満たしていく。
一転して「trap」で鬱々としてダークな世界へ導いた後は、ロックナンバーでノンストップ。「隠し事」「Deep」「東京」とたたきつけて、会場をおおいに沸かせた。いいステージだった。ちょっと客が少なくて、会場全体が揺れるような感じにはならなかったのが残念。
彼女なら、満員の客で埋まったO-Westでも、おおいに沸かすことができると思うのだが。ただ会場を彼女だけで熱くするにはまだ力不足か。もっと挑発的なMCしたり、ステージをところ狭しと動き回り客席を煽ったりできるようになると、まだ一段と凄みが増すのだがなあ。
1)ユメオチ
2)eternally
3)magic
4)trap
5)隠し事
6)Deep
7)東京
最後のアンコールは3人の女性ボーカリストが勢揃い。今夜のテーマ「いい女」が、暗に「男」を意識した言葉であることは明白。女あっての男、男あっての女だ。そんな文脈からか、渋谷めぐみが選んだアンコール曲は久宝瑠理子の「男」。懐かしい。これが格好良かった!
渋谷めぐみは言うまでもないが、小玉しのぶの声がロックな曲にやはり合っていて、太くびしっと締まる。3人で入れ替わり立ち替わり、歌っていくにつれ、再び盛り上がり大拍手でフィニッシュ。楽しかった。
改めて思う。これだけ内容があるイベントなのに、惜しむらくは客があと20人入ればと(笑)3組がジャンル、または客層が違ったことで、集客面で相乗効果をだすに至らなかったのだろう。満員の客がガンガン盛り上がる中で、今夜のようなライブだったら、もっとずっと満足感高いイベントになったことだろう。
イベント主催の渋谷めぐみの課題だろうな。がんばれ