なのだが、今夜も粛々と渋谷めぐみを聞きに新横浜ベルズへ。出演時間がかぶり、ハシゴできなかった。新横浜は、遠すぎる。世間一般的には、音楽業界が争奪戦をしたという、現在avex ioだかSMCだかに所属する「いつか」と、goosehouse関係でソニーから出てくるのではないかと思われるtetra+という、業界注目アーティストが揃う渋谷PLUGに行くよねー、普通。いつかちゃんかわいいし、慶ちゃんのボーカルはすごく魅力的だし。
それでも個人的には「渋谷めぐみ」というシンガーソングライターの方が上。どこの事務所にも所属せず、スタッフも存在せず、全てセルフマネージメントしている、無名のインディーズアーティストだというのに。嗜好というのは本当に人それぞれだから面白い、と人ごとのように自分の行動をみて思う。でも、渋谷めぐみのバンドライブは、まあバンドの演奏次第という要素があるが、迫力があって格好よいのだ。MCのトークさえ無ければ(笑)歌っている時のクールさと、ぐだぐだなトークで自分自身に困ったような苦笑いのアンビバレントさは、確かに判断に困るところだと思うけど

まあ、そんな世間の目など全くお構いなく、今夜も彼女のボーカルは格好良かった。
サポートはいつものギタリスト高田さん、ドラムは西川さん、そしてベースにまた無理を言って三井さんという布陣。三井さんはギタリストで、彼のギター伴奏は本当に女性アーティストを引き立てる。斉藤麻里や松岡里果、伊藤さくら、鈴木あいなどなど彼をギターサポートにお願いして歌っている歌手は数多い。そんな彼にベースさせちゃうの、どうかなーとは思うんだけど。
ドラムの西川君も、サポートは4、5回目か。バックバンドの顔ぶれが毎回固定せず、1回くらいのリハだけで本番に臨むことが多いため、どうしても演奏が緩く、一体感に欠けがち。その弱点を補おうと高田さんとかが、技巧的なソロや毎回違うアレンジを入れるなど凝ってみるのだが、その都度違うメンバーとその都度違うアレンジでステージを作るというのは、やはり大変だろうなあと思わずにはいられない。
今夜も、サポートの3人とも技量はあるので、そんなに悪くないのだが、どうも3本の矢がまとまった時の勢いというか、ミュージシャンどうしのアイコンタクトから生まれる演奏の妙のような物が足りない感じ。ようやく、アンコールのユメオチで、それぞれがソロパートを演奏、最後に西川君が通常の倍ぐらいの独奏を熱演した後、初めて3人のミュージシャン+渋谷めぐみの意識がシンクロしたようで、すごく良い演奏に。一気に聞いている側のテンションも上がった夜だった。最後にあれが聞けただけでも良かった。
<セットリスト>
1)星
2)隠し事
3)東京
4)Deep
5)magic
en. ユメオチ
途中のMCは、案の定の展開だったが、東京~Deep~magic とたたみかけるようにロックな楽曲が並ぶ後半はやはり圧巻。渋谷めぐみのハスキーだが、力強く、グルーヴのある歌声が、びしびし響いてくる。「隠し事」のような大人の恋愛の機微を描いた曲を、すでに8年も前に書いているのだから早熟といえよう。精神面でも恋愛体験も、かなり大人なのだろう。だから、いつまでもスクール恋愛ものを歌っているような世界が狭く幼い歌手とは、まったく趣きが異なる。大人の曲を歌わせた時の説得力が
違うのだ。歌唱力もかなりのものだと思う。
アンコールで歌った「ユメオチ」では、新宿歌舞伎町や上海の魔界のキャバレーでウイスキーを傾けるような世界観を作りだすが、それは「いつか」や「tetra+」、ヒグチアイや見田村千晴にだって描けないと思う。神田莉緒香やRihwaとは対局で、どちらかというと、アサダマオや平絵里香、京田未歩などに通じるか。また、そのロックなテイストは、荒牧リョウや小玉しのぶにも似ているかもしれない。そのうえでやはり思うのは、渋谷めぐみは渋谷めぐみだということ。オリジナルで、世間の流行などに影響を受けてない独自の路線。そこが魅力を感じる所以なのかな。
多分、器用ではないから、歩みが遅いのだ。ステージングなど磨けば、いくらでも魅力が増すと思うのだが。ま、彼女の場合は長い目でその成長を見守りたいと思うのだ。もう8年は見守ってるけど(笑)
ちなみに今夜のベルズの出演者は、彼女を除くとみな男性ロックバンド。そのトリだった。客層がかぶらず、彼女の出番まで残らない客も多く、やりずらそう。どうせ遠い新横浜まで行くなら、僕個人的にも渋谷めぐみには、女性アーティストと対バンをして欲しいもの。ベルズのレギュラーでいえば、CapockやMiyuMiyu、Lady the Bitchならこんなに嬉しいことはないのだが。