2011/10/1 吉村かおり ワンマン@恵比寿天窓switch | 音楽偏遊

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吉村かおり3ヶ月ごとワンマンシリーズ第2弾「吉村かめ★ワンマン~夜よ明けるな」@恵比寿天窓switch
dr.&perc.まあびぃ、ba.村岡俊介、gt.江原秀俊(ひでちゃん)
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吉村かおりのステップアップ第2弾のワンマンは、第1弾の北参道strobe cafeから箱のサイズをちょっと拡大。天窓スイッチが会場だ。着席スタイルでほぼ満席。見に来ている仲良しアーティストの数の多さも彼女ならでは。音楽仲間に愛される人柄なのだ。

さらに、東京では今夜限定発売の音源「さすらいクイーン」を用意。2日徹夜して、一枚一枚にナンバリングを入れる手間のかけよう。100枚限定、手に取るお客さんにとって貴重な記念の1枚にしたいという思いからだ。

この日のために時間と手間をかけたのは、それだけではない。今夜のセットリストにも、頭を絞って夜を明かす彼女の姿が浮かぶ。

演奏の編成は、ボーカル&ピアノ吉村かおりに、レギュラーのまあびぃがドラム、むらっち村岡俊介がベース。さらに途中から新レギュラーとして若いイケメンギタリスト、ひでちゃんが加入。かおりぃバンドも一段と充実した。

セットリストは、かおりちゃんのブログからコピペ。彼女自身が綴るライブレポはブログで読もう。このリスト見てるだけで、彼女がこの日に向けて色々考えた事が分かるというもの。

<vo/pf,ba,ds>
1.oz
2.ネオ白昼夢
3.海月

<ソロピアノ>
4.ひなげし(未発表曲)
5.闇とユートピア
6.風

<vo/pf,ds>
7.Stay(Lisa Loebカバー)
8.野うさぎ駆ける

<vo,a.gt>
9.JUTE
10.ハナウタ

<vo/pf,a.gt,perc.>
11.あなたの中で目が覚める
12.さよなら愛しき

<フルバンド>
13.きみのあした
14.フロート
15.夜よ明けるな(新曲)
16.テールランプ

enc.
あざやか世界(フルバンド)

ライブはかおりぃらしく、最初から笑顔。たくさん笑ったなあ。まあびぃ、むらっちらとのチームがまとまっていて、さらに加入したギタリストがまあびぃの後輩ということもあり、リラックスした空気。そんな空気の暖かさが、何とも魅力だ。

今夜はoz~ネオ白昼夢と軽快に始まったが、3曲目にバラード「海月」をゆっくり目に歌い、テンポにメリハリが利いている。特に海月を、丁寧に一つ一つの音や単語を大事に歌い、彼女ならではの世界観を丹念に構築していく。

音譜甘い こわい 海月に刺され 薄い酸素にもがく あなたの影殺せないのよ あれは18の夏音譜

こんな歌詞を書ける、そして魅力ある楽曲に仕立てられる人間はそうはいない(笑)シンガーソングライターとして、吉村かおりって、ある意味で天才的だよね~。天才とは言い切りませんが(笑) しかし、今夜の海月は、これまで聞いたなかで1、2を争う素晴らしさだった。(映像は別の日のですが)


その余韻のMCで、音楽を始めた頃の私はネクラだったと告白。その頃のダークな私の曲を歌います、と話して「ひなげし」。しっとりした曲だ。

この3ヶ月ごとワンマンシリーズでは、毎回、昔の未発表曲を歌うことに、いつの間にかなったそうで、初回が「ライラック」で今回は「ひなげし」。曲名に花が続く。最近の野うさぎやクラゲやチョコレートが跳び跳ねる「おもちゃ箱ポップス」路線の前は、意外とおとなしいロマンチストだったよう。楽曲の変遷は、彼女の成長の足跡なのだ。

3ヶ月ごとワンマンで、恒例化したもう一つのイベントが、リクエストコーナー。リクエスト曲に応えるなんて単純なものではない。なんでもありのリクエストを募って、初回は彼女自身が決め、今回はお客さんの多数決で決めた。

前回決まった、英語の曲を歌うというお題で彼女が選んだのがLisa Loeb。英語は苦手というだけあって、発音は確かに危うかった。だが、歌心に言語関係ないね。本人も楽しそうで、吉村かおりの洋楽はあり、という結論になったとか、ならなかったとか(笑)

そして「あなたの中で目が覚める」以降の終盤、彼女の軽快かつ意味深 (時に凡人には意味不明w)な次元を超えたポップスを、これでもかと畳み掛けてくれた。アコギにドラム、そしてエレキ+ベース+ドラムと音圧を増しながら、彼女の声も一段と弾み、盛り上がっていった。

「さよなら愛しき」の後に、次回の3カ月ごとワンマンで何をやるか、リクエストから8択で、お客さんが拍手で決めることに。結果は「ギター弾き語り」に。ピアノ弾き語りの彼女がどんな演奏を聞かせてくれるか、来年1月に開かれる第3回3カ月ごとワンマンの行方が楽しみだ。

そして「きみのあした」から最終盤はフルバンドで。アッパーなテンポで音譜あの橋のたもとで仲直り~さよなら、君の明日を見届けてあげられなさそうだ おやすみ涙を拭いて すばらしい朝が待っているよ音譜

ありふれた恋愛や青春ではない、独特の世界観に満ちたポップス。なまら楽しく、色々な色彩と感覚を想起する不思議な空気感。ジャックの不思議な種を何粒もいっせいに蒔いてしまったように、四方へグイグイ伸びていく想像力の枝葉。吉村かおりの音楽は脳内遊園地だ。

盛大な手拍子に迎えられ、指を折りながら「もう、やり残しはないね。みんなありがとう。みんな大好き」と感極まったように挨拶してアンコール。曲は「あざやか世界」。ちょいと古い映像だが、この曲だ。


彼女の3カ月ごとワンマン、次回の開催は来年1月9日(月祝)@代官山・晴れたら空に豆まいてだ。楽しみだね。そして、第4弾のシリーズファイナルの開催もすでに予告されているよ。少しずつ大き目のライブハウスにステップアップするこのシリーズ、ファイナルまでにどこまで彼女が成長していくか。きっと、彼女自身それが楽しみで、いま全身全霊で音楽に没頭しているのだろう。そして我々も、愛嬌たっぷりな彼女がどう成長していくか見守る楽しみを感じているという訳だ(笑)